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 永田町には女癖の悪いのもゐれば金癖の悪いのもゐます。もちろん、酒癖の悪いのもいつぱいゐます。

 中川財務相がイタリアでの記者会見でしどろもどろになり、たうとう素性をあらはしてしまひましたが、あの人の酒癖が問題視されたのは今回が初めてではありません。

 党役員時代からいろいろあつたのですが、閣僚在任中はまさか外には見せないだらうと思つてゐたら、やはり露顕してしまひました。

 風邪薬や鎮痛剤との複合作用などと言ふものの、酒を飲まなければ何ともなかつたわけですから、結局、酒癖の悪さが命取りになつたことに違ひはありません。

 実は、政治家には意外に酒乱が多いのです。僕の印象では一般社会の比率より高い。毎晩の宴会や選挙区回りで飲む機会が多いから、酒乱になる危険も大きいのです。

 政界で誰でも知つてゐるのは、東大卒、知性派の政策通と言はれた元首相(故人)です。酔ふと何でもしやべつてしまふ。

 大蔵大臣、外務大臣などを歴任しましたが、記者たちは酒の入つたときが狙ひ目とばかり、毎夜、大臣の宴会帰りに取材攻勢をかけました。

 翌日の新聞各紙に、まだ極秘事項だつた話が一面トップで載ります。びつくりするのは各省の幹部たちです。自分と大臣しか知らない事柄が書いてある。

 さういふことが何度かあり、この人は夜の取材を拒否し始めました。役人たちが進言したのです。大物政治家なのに「夜回り」と称する自宅懇談は中止になりました。

 記者は困りましたが、大臣は大喜びです。これで晴れて毎晩大酒が飲めるといふわけですから。

 それでもどうにか総理大臣まで務められたのは、側近に恵まれたからです。酒乱をガードしてくれる秘書なり秘書官なりがゐたからです。

 今回、中川財務相の秘書官は何をしてゐたのでせうか。わが大臣がメロメロの状態で記者会見に臨まうとするのを見たら、何か理由を作つて三十分か一時間会見を遅らせ、少しでも酔ひを覚まさせるのが秘書官の役目です。

 悪く勘ぐれば、秘書官は大臣を見殺しにしたのです。この状態で記者会見すればとんでもない醜態をさらし、その結果、大臣ポストを追はれることになるであらうと予見しながら、敢へて放置した。

 今の麻生内閣はそれくらゐ霞が関の高級官僚との間に溝が生じてゐる、はつきりいへば見放されてゐるといふことでせう。

 むろん、愚かなのは中川本人ですが、永田町にはさういふ愚昧、性癖が選挙民にバレないで済んでゐる政治家がうようよゐるのです。

 (写真は、2階のわが書斎から眺めた五分咲きのミモザアカシアです)