流行語といふのはテレビや新聞、雑誌などによつて広がつていくもので、いはばマスコミが作り上げるものです。

 最近の「アラフォー」にしても「私はあなたとは違ふんです」にしても、マスコミに乗つてメジャーな流行語になりました。

 マスコミによつて広がるといふことは、活字にして流行るといふことです。

 といふと、「テレビは活字ではない」といふ人もいらつしやるでせうが、テレビが一つの発言や単語を私たちに強烈に印象づけるのは、画像とダブらして流れるテロップの文字です。その大きさや色彩です。

 もしテレビがテロップを使用せずに、人物の発言だけを流したとすると、その発言は一瞬の間に忘れ去られ、私たちの頭にはその発言、単語はほとんど痕跡をとどめないでせう。

 従つて、流行語といふのはふつう、活字で読んで意味が正確に分かることばです。
 「アラフォー」とあればアラウンドフォーティー、えうするに40歳がらみの(主として女性の)群像を表することばであり、「私はあなたとは違ふんです」とあれば、相手を少々蔑んで、または派生的にユーモアをこめて、KYな発言をする人を評することばと分かります。

 このごろの流行語の「いふよねえ」はその意味で、やや特殊な流行語です。

 はるな愛がジェスチャーを交へて、「ゆうよネー」と意味深な笑ひを作れば、前後の発言からおほよその意味は釈れますが、もし雑誌の対談記事で、

 対談相手「はるなさん、このところ紅白に出たり、素晴らしいご活躍でーー」 
 はるな愛「いふよねえ」

 と書かれたら、をかしくもない。

 活字の「いふよねえ」を僕が勝手に解釈すると、その意味は次の5つです。

 1 ある人の意見に対し、その人の容貌、能力、人柄を暗示して、「身の程もわきまへずに、よく言ふよねえ」と批判する場合

 2 自分自身の意見、要望、能力、人柄に対し、他人から褒められて「そんなお上手なこと、よく言ふわよ」と照れ隠しする場合(上記対談がこれですね)

 3 相手の上手なジョーク、ダジャレなどに対し、「ウマイ!いいこと言ふ」と評価する場合

 4 相手の下手なジョーク、ダジャレなどに対し、「そんなくだらんことをよく言ふよ」と突つ込む場合

 5 誰かの意見に対し、「その通りだ!なあ、みんな、彼はいいこと言ふよねえ」と一座の者に同調を求める場合

 活字で読むと、ざつと考へてもこれだけ解釈の分かれることばだといふことは、この流行語はテレビを見ながら聞かないと真の意味、ニュアンス、味が伝はらないといふことでせう。

 活字でニュアンスが伝はらないことばが、とまれ、一時的にしろ流行つたといふところに、文化が「活字」から「画像プラス活字」の時代に移行してゐる。マスコミ勢力図の変動を感じます。
 
 たかが流行語の話からこんな小難しいことを言ふと、はるな愛さんはつぶやくでせう。

 「いふよねえ」