19日ぶりに戻つたわが家で、まず目を引いたのがミモザアカシアの絢爛たる黄色でした。

 僕はペットを飼つてゐないのですが、その金平糖のやうな黄色い粒々が枝の先まで房状に垂れ下がつた花の表情は、いはば愛犬が主人を見つけて嬉々と駆け寄つてくる風情、と言つたらお分かり頂けるでせうか。

 先月下旬に庭師が入つたとき、ふだんはあまり希望を言はない僕が、ミモザアカシアの花芽の付いた枝はあまり下さないでほしいと頭領に伝へました。
 
 その声が届いたのか、いま満開の花の、枝先でぱちぱちと飛び跳ねるやうな黄の躍動は例年になく光り輝いてゐます。

「何してるの?はい、これ」
と家人が車から荷を差し出すまで、しばし見惚れてゐました。

 ジンチョウゲの花も開き始めました。顔を寄せる。あの独特な、鼻の通りが良くなるやうな清冽な香が鼻腔の奥へ浸透していきます。

 家を空ける前に植樹したマンサクは、もうすつかり根を付けたやうですが、その先端にはまだ二つ三つの縮れた花が残つてゐます。同時に芝生の隅に植ゑたミカンも、この半月で確実に定着したやうです。

 主人がゐなくても、木々は育ちます。まさに、あるじなしとて春な忘れそ、です。
 今月下旬には、庭の西側にあるベニシダレザクラも開花するでせう。

 僕の居なかつた三週間のあひだに、季節は冬から春へ変換したやうです。

 かうして慣れ親しんだ庭木たちに囲まれると、妙に心が安まります。花木の艶やかさに比べると、大木の松、モチ、モッコク、楓などは愛想もなく、いふなれば大人の歓迎ぶりですが、これはこれで大らかな受容を感じます。

 つまり、大勢の家族に迎へられた気分になつたのです。