こんな講座でおカネを取つていいのだらうか、といふのが正直な感想です。

 カルチャーセンターの「600字で思つたことを全部書く」講座の第1回が、昨19日(土)午後ありました。

 受講者は予定通り3名で、結局この1か月で増えも減りもしなかつたのですが、3名のうち、最初から受講申し込みをしてゐた方は1名で、あとの2名は当日の申し込み。

 つまり、1か月前の時点で申し込みをされてゐた2名の方は来られなかつたのです。
 受講者といふのは結構不安定なものなんですね。受講の申し込みをしてからも、ころころ気が変はるものらしい。海のものとも山のものとも分からない新設講座はそんなものなのかもしれません。

 冒頭、センターの支配人が来て講師紹介をしてくれ、次に僕が自分の略歴を書いた紙をお配りして簡単に自己紹介しました。

 さて、講座の始まりです。
 初日のテーマは、「結局、何を書きたいのか」。

 手紙、メール、小論文、日記…何にしろ、文章といふものを書くときは、これを書きたいといふ主題がある。それを自分の頭の中で文字化して、明確に把握しないと始まらない、といふ当たり前の話です。

 教材に用いたのは、今年の元旦の読売、朝日、毎日新聞の1面下のコラムです。ご存じのやうに、読売は編集手帳、朝日は天声人語、毎日は余録。

 お読みになられた方もいらつしやるでせうが、編集手帳は、近頃遅れがちな目覚まし時計、天声人語はベートーベンの「運命」のダダダ・ダーン、余録は正岡子規の一句、から書き始めてゐます。

「天声人語と余録の言ひたいことは、末尾の数行にはつきり書かれてゐます。その意味で、何を書きたいのか分かり易いコラムです。それに対し、編集手帳はやや文学的でーー」

 などと真面目なことを語りながら講座はスタートしたのですが、30分もすると行き詰つた。しやべつてゐる自分がつまらなくなつてきたのです。
 
 講師がつまらなけりや、聴くはうはもつとつまらないでせう。ここで僕の悪い癖が出る。夜、飲み屋でもさうなのですが、あんがいサーヴィス精神が旺盛なのです。たとへ3人でも、受講者を退屈させてはいかんよな。

 「コラムの話からはちよつと脱線しますが、このコラムの読売、朝日、毎日の旧大手3社、それに日経、産経、さらに雑誌ジャーナリズム、要するに日本のマスコミ界がいまどういふ関係、環境にあるか、これからどうなつていくのか、のお話をここで挟みませう」

 定年間近かの公務員風男性、50代前半?の都会風女性、40前後のインテリ風女性ーー受講者3人の視線が、初めてこちらに上がりました。

 この辺から話は文章講座をどんどん乖離して行きます。各新聞社と福田政権との関係、ポスト福田をめぐる自民党、民主党の思惑、小沢民主党の命運…。

 時計を見ると、まう90分をオーヴァーしてゐる。
 ドアがノックされた。「あのー、そろそろお終ひの時間ですが。次もありますので」
 女子職員が僕にささやく。「ああ、さうですね」

 受講者のはうに向き直つて、「それぢやあ、今日はこんなところでーー、なんだかまとまりのない講座になつてしまひましたがーー」。あの人たち、次来てくれるかなあ。