舞ちゃんはIWAKURAの営業担当として活動を始めました。しかしなかなか相手にされません。分かりやすい商品ならともかく、ネジは様々な用途に合わせて作るモノなので、そういうモノを売り込むには、相手のニーズに合わせて細かい仕様や技術について説明できないと商売にならない。そう言われてみればそうです。だから必死にネジの勉強を始めた。舞ちゃんがそれに気づいたのは良かった。
私は若い頃、駆け出しの銀行員として東京の板橋あたりの中小企業の工場に新規開拓に行きました。
当時は既に銀行が頭を下げてお金を借りて頂くという力関係でしたから、財務の担当者には容易に会えません。だから予め、その会社のことはもちろん、作っているモノについて勉強して、話を合わせられるようにしていました。私がちょっと詳しい話をすると、相手は驚いて、次々ともっと深い話をし始めます。そうして、いろんなことを教えてもらいました。
おかげで私はいろんな知識を身に着けることが出来ました。アセチレンガス、棒鋼、ヒートパイプ、シャッター、イースト菌、ポリエステル、スーパーマーケット、アパート経営など、いまでもそれらのことを勉強した時のことを覚えています。例えば、アセチレンガスというのは、よく工場の中で溶接作業で使用する高温の燃焼ガスですが、私はアセチレンガス協会に行って、どうやって製造するのかなど教えてもらいました。協会の人は、まさかそんな人が訪ねてくることはほとんどないので、飛び込んで来た私を大歓迎してくださいました。
そんな経験があるので、舞ちゃんの行動にはとても親近感を覚えます。地道な努力の積み重ねほど、成果を生むものだと思います。
