2025 HECP国際博覧会
2025HECP international exposition

 

 

 

 

 

2025年は2055年の予兆であった。

そして、2055年は重要な点において2025年の続編であった

 

 

 

Genmaidtoxin

プロローグ

 

 

近未来食ラボラトリー

ゲンマイドトキシンと料理のゲノム

 

 

 

 

 

 

「レストランは音楽を演奏する場所だが、タジェールは“曲”を書く場所」。

 

 

 

2025年ーわたしたちは、オルタナティブな医食同源を立ち上げる構想を明らかにする。医食の位相を再考し、クリエイティヴな努力を続ける人々にイノヴェイションへのロードマップを提示したい。

科学は一定の概念群を所与としたうえで、概念同士をつなぐ関数を創造する営みであるのに対して、わたしたちは、決してそうした理路は取らない。アートはその根拠を説明するのは難しい。サイエンスでは解決できない課題が多くある。単純な世界であればサイエンスによる論理的思考で正解を出すことが可能だが、今日のように複雑で曖昧な、非ユークリッド幾何学の世界では、考えるべき要素が多すぎる。徹底的なイノヴェイションと、常に変化し続けることがわたしたちの表現の基盤だ。

 

 

 

 

 

タジェールとは、スペイン語の仕事場という意味。わたしたちのバウヒュッテは、客として何かをもらいにくる、レクチャーを受けにくる場所という意味ではなく、タジェールを形成するお互いの得意分野や能力、立場を生かした意見交換の場、情報交換の場と位置づけ、新たなる事業の生産や、生産性を高める為の手法などを生み出す場所という意味で用いている。必要に応じて、活動家、研究者、クリエイターや専門別分野などを交え課題の発掘や解決に取り組んでいく。
目的やテーマを複数設定して、時代の流れを読み取る。ゲンマイドトキシンの隠れていたオルタナティブな味やテクスチャー、抽象概念、匂い、ヴィジュアルなどを引き出す。タジェールは厨房というよりは、食をひとつのアイデアとしてとらえるための研究プロジェクトに近い。オルタナティブな近未来食を言語に、さまざまな分野との対話を生み出し、そこでわかったことをインタ―ネットを通じて伝えていく。

それがわたしたちのアートのコモディティなのである。

 

 

 

 

現代アートのインスタレーションも、それが多元的で矛盾を含んだ諸価値のなかにみるものを投げ込むことによって、鑑賞者を取り巻く社会環境の矛盾への問題提起を意図するが、こうしたインスタレーション自体がアーチストの作品として、これらの諸価値に対するメタ・レベルの価値を付与されてしまうと、インスタレーション自体がはらむ矛盾のダイナミクスは、アーチストと呼ばれる社会から浮遊した人間の自己表現や自己満足という単一の価値に解消されてしまう。

 

 

 

 

わたしたちのタジェールでは、さまざまな分野の学際を扱う予定だ。科学、アート、哲学、テクノロジーをすべて混ぜ込んだ「創造性を生み出すための領域」として、「現在最も価値のある原材料─創造性と才能」を世に送り出したい。そのバウヒュッテでは、映写室も兼ねた、ブレインストーミングを行うための地下ホールや、真上に位置するワークステーションを擁する“アイデアリウム”、環境に配慮したカーボンニュートラルな小さな家/施設がある。

わたしたちのタジェールは、プロセスや効率や創造性とは何かを探る、一冊のノートであり、アーカイビングである。今後この一冊のノートには、2055年にその数千ページにおよぶ“曲”を載せている。これはゲンマイドの全レパートリーとコンセプトを網羅した目録で、「料理のゲノム」なのである。

 

この“コ・アーカイブ”が、わたしたちの未来遠点であり、次世代へと引き継がていくブロックチェーンなのである。わたしたちのアートの形象において、「薬というの概念から抜け出す必要があった」ーつまり、真のイノヴェイションを目指すなら、手順や考え方、連携のとり方といったものをトポロジカルに様式化しなければならないと、わたしたちは考えている。