粟津則雄コレクション展"思考する眼″の向こうに@練馬区立美術館 | T. Watanabe Web 

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アーカイブズ学,経営学|和而不同,Love & Peace|1969

芸術評論家の粟津則雄氏が、2014年に練馬区立美術館に一括寄贈したコレクションからの展覧会。



広報チラシなどでも取り上げられ、展覧会の作品番号1番を付されたオディロン・ルドンの「キリスト」の目玉が強烈だが、本展覧会には「キリスト」とは全く異なるイメージの作品も多く展示されている。





興味深く観た作家がまず2人。田渕安一の「Augures」は抽象画の連作。どちらかと言うと「黒」を基調としたモノクロの作品が主流を占める中で、極彩色が一際目を引いた。解説によれば田渕も1960年前後はモノクロームの作品が多く、極彩色に転じたのは1962年頃とのこと。「Augures」は1971年の作品だ。
その田渕が1950年代に交友した実験的美術集団「コブラ」の創設者であるベルギーのピエール・アレシンスキーの「Direct Line(Ligne Directe)」は、太陽のような赤い丸記号が強いインパクトを持つ。1955年の来日以降、文字や特異な記号を用いた抽象表現を示しているらしい。「Direct Line」は1976年の作品(12月8日までBunkamuraでアレシンスキー展をやっていったとは!残念)。


粟津氏の著作表紙も担当した駒井哲郎、加藤清美、中林忠良(加藤、中林は駒井に師事)はモノクロームが特徴的。粟津氏の好きなタッチが窺い知れる。

モダンな麻田浩の作品群では、宗教的な雰囲気を醸し出す少女をモチーフにした「Fenetre」や水滴を描いた連作が作家の心の闇を映し出しているようだ。麻田は1997年に自死している。

テレビではよく見かけたけれど、その作品をほとんど目にしたことがなかった池田満寿夫の「黄金の真珠」の力強さ、カルピス食品で広告・宣伝に携わったという宇野亜喜良の「Illustration now」の現代性など、これだけイメージの異なる作品を同時に楽しめるのは個人コレクション展の醍醐味である。




2017年2月12日まで。

(2016年12月18日)