「公文書等の管理に関する法律」施行後5年見直しに関する共同提言書 | T. Watanabe Web 

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アーカイブズ学,経営学|和而不同,Love & Peace|1969

7月19日(日)、学習院大学で行われた合同研究集会において、ARMA International 東京支部記録管理学会日本アーカイブズ学会 、学習院大学人文科学研究所共同研究プロジェクト「情報基盤としてのアーカイブズ制度を構築する戦略的研究」が「「公文書等の管理に関する法律 」(以下、公文書管理法)施行後5年見直しに関する共同提言書」を発表しました。



公文書管理法は我が国公文書管理の基本法です。2009年に制定、東日本大震災が起きた2011年に施行されました。附則第13条に、施行後5年見直しの条文があり、2016年の春に議論されることを想定して、国内のアーカイブズ関連団体が合同で提言をまとめたものです。その中心となったのは、公文書管理委員でもある学習院大学の保坂裕興教授です。
私は、ARMA International 東京支部の理事、そして同団体の5年見直しプロジェクトチームの一員として今回の共同提言策定作業に関与しました。また、一部、日本アーカイブズ学会の委員としても意見を述べました。全3回の合同研究集会については、第2回と第3回に参加し、意見を述べました。

過去記事:「第2回公文書管理法5年見直しについての合同研究集会」

http://ameblo.jp/tsuyoshiwatanabe/entry-12001647414.html

共同提言書が発表された第3回の合同研究集会では、「共同提言が各団体の代表者の署名をもって提出されたことは重い。提言策定のプロセスに関わった者であるからこそ敢えて指摘するが、同プロセスがアカウンタブルな形で進められたのかどうか。提言書の前提となっている考え方や項目選定の理由など、順番は逆になってしまうが(各団体の総意であるという形を取るのであれば)自己批判の意味も込めて、今後、本提言書の内容について各団体の会員等が理解を深められるような取り組みを継続していく必要があるのではないか」と各団体の代表者、特に学習院大学の保坂先生に投げかけをしました。残念ながら「回答はまたの機会に」ということになってしまいましたが、アーカイブズ関係者の当事者意識が試されます。

今後、何回かに分けて、私自身の見解を踏まえて本提言書についてご紹介していきたいと思います。
今回は「はじめに」の全文を掲載しておきます。

はじめに

平成23年4月に施行した「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号、以下「公文書管理法」とする。)は、公文書等が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源であり、国民が主体的に利用できるものと位置づけた上、行政機関等にレコードスケジュールを導入する共通の文書管理ルールを定め、保存期間が満了した公文書等について廃棄又は移管の措置をとるとともに、移管を受けた「国立公文書館等」ではそれを「特定歴史公文書」として永久に保存し、国民の利用に供することとした。また、外部有識者からなる内閣府公文書管理委員会 がそれらの調査・審議を行い、国立公文書館 は専門機関として助言や調査等を行うこととした。これらは日本において初めての本格的措置であり、大きな一歩を踏み出したと評価できる。

しかし、公文書管理法の制定に際して衆議院では15項目参議院では21項目 の附帯決議がなされたほか、平成23年3月の東日本大震災による公文書等の喪失・損傷及びその後の復旧に関する経緯、平成24年の閣議等をも含む議事録未作成問題、並びに近年における秘密法制整備に関する対応課題等があり、この法律の目的を達成するにあたって数多くの課題があることが知られてきた。また、法施行後4年余の状況をみると、当初は想定していなかったような実際的な課題や問題が生じていることが知られた。

ここに、私たちは、公文書管理法附則第13条に記された施行後5年見直しの機会をとらえて、同法及びその施行後の改善に資するため、「『公文書等の管理に関する法律』施行後5年見直しに関する共同提言書」(以下「共同提言書」とする。)を提出するものである。

私たちは、学会。専門団体連合の形をとり、平成26年12月より三度にわたり「公文書管理法5年見直しについての合同研究集会」を開催してきた。その参加団体は、ARMA International 東京支部(1989年設立)、記録管理学会(1989年設立)、日本アーカイブズ学会設立(2004年設立)、学習院大学人文科学研究所共同研究プロジェクト「情報基盤としてのアーカイブズ制度を構築する戦略的研究」(2013年度~2015年度)である。また、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会 (1976年設立)が第一回目と第三回目について協力団体として参加した。これらの団体はいずれも、公文書管理又は公文書館等に関する専門的・実務的な研究と実践を行ってきた学会・専門団体である。なお、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会 より参加協力の申し出を受けたが、既に最終段階であったため、ここに付記するのみとさせていただいた。

合同研究集会は、同法及び施行状況に関し専門家の立場から調査・研究を行い、昨年12月20日、本年3月14日及び7月19日の三回開催し、研究討議を行った。また、各団体においても研究テーマに取り上げるなどして、独自に調査・研究を進め、その成果の一部は合同研究集会にもたらされた。このような活動の結果、一同は、公文書管理法はについては、冒頭に記したような画期的意義があるものの、必ずしも適切に施行されていない状況にあると判断し、合同研究集会の成果のうち共通見解として確認した12項目について、関係各位に提案し、必要な措置を講じてもらうことを願うことにした次第である。

あらまし述べるならば、公文書管理法は、行政機関等における行政管理の規制に主眼が置かれているが、国民等の利用に関する配慮措置、質の高い知的資源の構築・保存に関する措置、国全体における公文書管理及び公文書館活動のバランスある発展施策、公文書等管理を牽引する中核機関の本格的整備、並びにそれを担い支える専門的人材の育成及び配置に関する措置等において、大きな課題があるとするものである。

この「共同提言書」の12項目にご留意いただき、是非とも改善する措置を講じていただきたく、一同、お願いを申し上げる次第である、なお、以下には、12項目の要点をまとめた「概要」をおき、次に、要点に解説を付した「共同提言」をおいた。よろしくお取り計らいくださるようお願い申し上げます。

平成27年7月19日
ARMA International 東京支部会長 西川康男
記録管理学会会長 小川千代子
日本アーカイブズ学会会長 石原一則
学習院大学人文科学研究所共同研究プロジェクト「情報基盤としてのアーカイブズ制度を構築する戦略的研究」代表 保坂裕興

内閣総理大臣 安倍晋三
内閣府特命担当大臣 有村治子
内閣府公文書管理委員会委員長 宇賀克也
衆議院議長 大島理森
参議院議長 山﨑正昭
最高裁判所長官 寺田逸郎
「世界に誇る国民本位の新たな国立公文書館の建設を実現する議員連盟」代表 谷垣禎一
政党党首各位

(2015年7月26日)