
新刊の発売に伴ってこの2、3週間、春樹さん本人と
彼に関する記事の露出が多いので、ちょっと整理。
『文学界』4月号には彼のロングインタヴューが掲載
されている。『アフターダーク』に関する著者自身の
見解や執筆ウラ情報的な話、自作が世界各国で
読まれている現状について感じていることなど。
読み応えがあります。たとえ話にクラシック音楽を
用いることが多いので、この方面に精通していれば、
彼の言わんとするところがもっと良く理解できるのかも。
「東京奇譚集」が連載されている『新潮』。4月号では
ペンギンクラッシックスでアジアの作家で初めて芥川が
選ばれたことを知らせている。訳者は村上作品の英訳で
お馴染みのジェイ・ルービン氏。そして、彼が序文を
春樹さんにお願いして快諾を得たとのこと。
この文章の中でルービン氏は、芥川や春樹さんが
外国で受け入れられているのは、東洋のエキゾチズム
への興味ではない、と論じている。普遍的な、人間存在
への共感や理解がその理由だと。
3月27日の読売新聞にもインタヴュー記事が。
「真っ暗で、外では木枯らしが鋭いうなり声を上げている
夜に、みんなで体温を分かち合うような小説」を
書きたいと彼は言う。あるいは「どこまでが自分の夢で、
どこからがほかの誰かの夢なのか、境目が失われて
しまうような小説」をと。記事はこちらでも読めます。
新潮社が「村上モトクラシ」というサイトを立ち上げた。
約半年の期間限定。主に『海辺のカフカ』と『象の消滅』に
関する情報。この期間の他社からの出版物も フォロー
してくれるようです。これまであったような著者と読者の
コミュニケーションの場は今のところなし。
扶桑社の雑誌『en-taxi』 には「ハルキ・ムラカミの闇降る
世界」と題した記事が掲載されている。
ジョン・アップダイクが『THE NEWYORKER』に寄せた
『海カフ』英訳版の書評の和訳が読める。訳者は
新元良一氏で、彼の「寸評」になるほどと思う。
アップダイクと言えば、春樹さんが早稲田大学に受かって
上京してきた初日、届くはずの荷物一式が届かずに、
がらんとした部屋で読んでいたのが彼の小説では
なかったか。『ノルウェイ』で、18歳のワタナベ君にとっての
最高の小説が一時期『ケンタロウス』だったという
エピソードもあった。1932年生まれ。大御所ですね。
私は大学時代に『走れウサギ』を読んでそれっきりだ。
『R25』の「3/25-3/31」号には、ロシアや中国で村上作品が
よく読まれているというコラムがあった。沼野充義氏や
ドミトリ・コヴァレーニン氏の短いコメントが読めるだけだが。
コヴァレーニン氏はロシアで最初に村上作品を訳した
人です(『羊をめぐる冒険』)。このお二人のトークショウを、
倒産する前の青山ブックセンターで聴いた思い出がある。
反日感情の異常に高まっている中国で、どんな読まれ方を
しているのだろうか。
ところで下の表紙、左が『羊をめぐる冒険』、右が龍さんの
『69』のロシア語版だそう。
日本は、結局こういうイメージになってしまうのでしょうか。