〓筑波書房 書評情報〓(日本経済新聞 2024年6月22日号 今を読み解くに載りました)日本農業年報69『基本法見直しは日本農業再生の救世主たりうるか』編集代表 谷口信和 編集担当 安藤光義修  税込価格 3,300円+税→(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784811906720)
【書評内容】〔評:柴田明夫(資源・食糧問題研究所代表)〕
 食料安全保障をめぐる議論が盛んである。「コロナ禍」と「異常気象」、「戦争」によりサプライチェーン(供給網)が混乱する中で食料価格が高騰し、多くの国々が保護主義的な姿勢を強めていることが背景にある。関連する良書も相次いで刊行された。(中略)
 では、日本は食料の安全保障を如何に確保するか。八木 浩平・野口 敬夫・林 瑞穂 編著『日本の食料安全保障と国際環境』(筑波書房・24年)は、国際的な穀物バリューチェーンを、国・企業・消費者の視点から俯瞰することで、日本の穀物調達の安定化を進める上での課題を考察する。日本が輸入している穀物と油糧種子について、その輸入量を生産するのに必要な海外の農地面積を試算すると913万㌶。これは日本国内の農地面積2.1倍に相当し、全量を国内生産に置き換えることはできないと指摘する。
 だからこそ、あらゆる生産国が自給率を高めることが最良の選択であり、貿易はその補完的な手段と位置付けることを共通の目標にすべきだと説くのが、谷口信和編集代表『基本法見直しは日本農業再生の救世主たりうるか』(筑波書房・24年)だ。
 グローバリゼーションの下で、農業を極限まで外部化してきた日本は、改めてその脆弱性に気付くべきである。そもそも工業製品に比べ安価で長期保存が難しい食料は極めて地域減的な資源で、地産地消が原則である。