〓筑波書房 書評情報〓(技術と普及 2023年3月号 BOOKs欄に載りました)『フランスのアグロエコロジー転換戦略』清水 卓 訳 税込価格 2,420円+税→(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784811906164)
【紹介内容】
 現在、日本であまり馴染みがないと思われている「アグロエコロジー(Agroecology)」。agro(農業)とecology(生態学)を組み合わせた造語で、直訳すれば「農業生態学」となろうが、本書ではより厳密に「生態学的農業」を採用している。
 では、アグロエコロジーとは何か?アグロエコロジーにはそもそも多くの定義があるようだが、本書21頁には「生態学と農学、農法あるいは特定の国では社会運動との交点に立つ科学部門」であり、「持続可能な農業システムの研究、概念形成および管理への生態学の適用」とある。具体的に言えば、生態系の営みに則った持続可能な農業であることはもとより、生産から加工、流通、消費に至るフードシステム全体を見据え、さらには経済、社会、文化、政治の平等や多様性を重んじる、実に包括的な理念のようだ。そして、このアグロエコロジーへの転換をフランスは国家戦略に据えた。
 本書は、フランス社会の国民的合意形成の柱の一つとされる経済社会環境審議会での意見集約を全訳したもの。近代農業からのパラダイム転換を目指す社会運動から発展してきたアグロエコロジーだが、翻ってわが国のみどりの食料システム戦略を考えるうえでも参考になるだろう。