〓筑波書房 書評情報〓(日本農業新聞 2020年8月23日号 書評欄に載りました)『平成農政の真実 キーマンが語る』菅 正治 著 本体価格 1500円+税→(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784811905709)
【書評内容】
 元号が新しくなったことに伴い、平成時代の農業政策を振り返ってみたい。そんな思いから、鍵を握る人に著者が直接話を聞き、まとめたのが本書だ。平成の30年間は、農政にとって実に多くのことがあった。初めの頃は、ウルグアイ・ラウンド交渉が大詰めを迎えていた。交渉は結局、米の部分開放を受けいるれる決断がなされた。交渉の結果、総額6兆円100億円のウルグアイ・ラウンド対策が打ち出された。食糧管理法は1995年に廃止され、新たに制定された食糧法の下、国の役割は大幅に縮小。農業基本法も99年に廃止され、新たに食料・農業・農村基本法が施行された。
 2001年には世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)がスタートしたが、先進国と途上国の対立で交渉は決裂。その後は2国間交渉、環太平洋連携協定(TPP)に大きくかじが切られた。その後、自民党政権から民主党政権に代わり、農政も大きな変化を遂げた。されに、自公政権が誕生し、第2次安倍政権が発足し、官邸主導で農政が推進された。
 こうした平成農政の変遷を17人が語っている。同じ農業政策でも評価する人もいれば、否定的な人もいる。まったく異なる意見もあれば、評価は別にしても認識は共通する問題もある。だがそうした相互の意見が交わることはない。その点こそが農政30年の悲劇なのではないか。そんな思いを強くした。