週明けに参議院で審議が始まる「共謀罪」の問題点を改めて。
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5月18日、衆議院で山尾志桜里議員が、「金田法務大臣不信任決議案の趣旨説明」(演説時間40分超)をした。
共謀罪法案の問題点から、金田大臣はもとより、安倍政権の問題点を、分かりやすく指摘しているため予定稿をもとに、ボクなりに簡潔にまとめてみた。
全文は衆議院議事録、又は動画で。
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共謀罪法案の本質
277の罪の捜査開始時期を、「話し合い」の段階まで前倒す「共謀罪」が成立すれば、話し合いの有無や内容を知るために、捜査機関は一般市民のコミュニケーションに監視の網をかける力を持ち、自由と民主主義を危うくする。
「共謀罪」はテロ対策の役に立たない。
自由と民主主義に対する「暴力」法案。
金田大臣不信任の理由
委員会議論で金田大臣は、「答弁変遷」「答弁矛盾」「答弁不能」「答弁放棄」を重ね、国会・国民に対し説明責任を果たそうとする意思も能力もないため。
①説明責任を果たそうとする「意思」の欠如。
2月6日の「金田ペーパー」。
質問は「成案後にしてほしい」と、立法府の審議時期等について金田大臣の希望をメディアに配布。
法務委員会質疑では「刑事局長に聞いてほしい」との答弁が絶えることはなく、説明責任を放棄。
②説明責任を果たす「能力」の欠如。
法案内容を理解せず官僚答弁を読み上げ、無関係な答弁で質問をはぐらかし、論理が破たんしていても訂正しない、場合によっては論理破たんに気づくことすらできない。
大臣答弁で委員会は69回ストップ。
「判例はないが、判例的考え方を申し上げている」
「ただいまのご意見に対しましては、私はちょっと、私の頭脳というんでしょうか、ちょっと対応できなくて申し訳ありません」
「キノコ狩りも、テロ組織の資金源として現実的に計画することが想定される」
「ビールと弁当を持っていれば花見。地図と双眼鏡を持っていれば下見」
代理答弁のお粗末
金田大臣の答弁能力の欠如を補うべく、代わりに答弁する安倍総理や刑事局長。
『組織的犯罪集団は、「そもそも」結合目的が犯罪実行を目的としていることが必要』と答弁。
これは正当な組織でも性質が「一変」すれば組織的犯罪集団にあたる、とする法務省統一見解に矛盾する。
この間違いを取り繕うため、『「そもそも」という言葉には「基本的」という意味がある』と答弁したが、辞書には存在しない。
安倍総理は「『大辞林』に『どだい』という意味があり、『どだい』には『基本』の意味がある」との答弁書を閣議決定。
人を刑務所に送る刑罰法規の文言解釈の間違えをウソで塗り固め、閣議決定で裏書きした深刻な事態。
安倍総理本人に間違いを認める度量がないこと、周囲にたしなめる存在がいないこと。
まさに「裸の王様」が行政府の長を続けている。
刑罰法規の構成要件の解釈には、誰でもわかるレベルの「明確性」と、誰がいつ解釈しても同じように読める「安定性」が必要。
安倍総理の代理答弁は、むしろ法案審議を混乱に陥れる結果をもたらした。
刑事局長の答弁も、大変にお粗末。
会社に正当業務と犯罪目的が併存している場合にも「組織的犯罪集団」たりうるか、という重大論点について、当初は「ノー」、その後は実質「イエス」と答弁を変遷。
「捜査の前段階の警察活動として尾行や張り込みなどをすることはあるか」という問いに「捜査として尾行などをすることはない」と、すれ違い答弁を「確信犯的」に繰り返す。
現法務委員会に、最低限のリーガルマインドをもって答弁する者は存在しない。
テロ対策3事例は現行法で対応可能
テロ対策の立法事実として法務省が示した3事例のうち、地下鉄サリン事件を想起させる「薬物テロ事案」、9.11を想起させる「ハイジャックテロ事案」については現行法で処罰可能。
*薬物テロの目的で薬物を入手・・・・サリン等防止法予備罪。
*ハイジャック目的で航空券を入手・・ハイジャック処罰法予備罪。
3つ目の「サイバーテロ事案」は、ウイルス作成時から処罰可能とするべきだ、という政策的判断をするとしても、ウイルス作成等罪に「未遂はこれを罰する」と1条付け足せばよい。
金田大臣は「処罰できない場合がある」と強弁。
現行法で処罰できないと言い張らないと、共謀罪の必要性が語れないからだ。
「共謀罪」法案の3大欠陥。
①テロ対策の役に立たない
「共謀罪」を「テロ等準備罪」と名前だけリニューアル。
テロ対策のためというのは、国民を欺くためのニックネームに過ぎない。
②国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)は、包括的共謀罪が無くても批准できる
条約批准187国のうち、批准のために新たに包括的共謀罪を立法した国はノルウェーとブルガリアだけ。
③一般市民が警察による情報収集・調査・捜査対象となり、SNSも丸裸。
「一般の方々は捜査の対象にならない」のではなく、「捜査の対象になるような人物は一般の方々ではない」というのが大臣のロジック。
共謀罪における証拠について、メールもラインもツイッターも証拠になりうる。
発言の自由とプライバシーを大きく制約し、ネットコミュニケーションが捜査機関によって丸裸にされる。
共謀罪は「物言う市民から権力を守る法案として機能していく」危険を内包している。
******************(まとめた文章責任:大津留)