3月18日、息子の小学校卒業式。
感動して涙するかと思っていたが、
笑いながら祝福する時間になった。
それにはワケが。
彼が全身緑スーツを着用して式に臨んだからだ。
そこに至るまでの物語。
遡ること2ヶ月ほど前、
何を着て卒業式に参加するか、の話になった。
最近の小学生はボクの頃とは違い、
羽織袴・スーツなど、その日のために衣装を購入・レンタルする、らしい。
「逆に、普段着で参加したら目立っていいやん」
「中学の制服で参加するのは、どう?」
というボクの意見は即却下。
息子と母親の話し合いが続いた。
そして息子の強い希望で決まった。
「卒業式は、中條さんのスーツで参加する」と。
中條さんとは、吉本新喜劇の中條健一さん。
全身を緑のスーツをまとい『アスパラガス』と言われる方だ。
吉本新喜劇が好きな彼にとって、
中條健一さんは彼のツボにはまる特別な存在だった、らしい。
息子と母親の『親バカ・子バカ』の挑戦が始まる。
初めは緑のスーツを購入しようと試みる。
ただネットで見ても、中條さん色のスーツを見つけられない。
新世界や船場へ出向いた。
緑系スーツはあるが、
中條さん色で無かったり、
柄が付いていたり、
ワンポイントがあったり。
もちろん予算との関係も。
母親は吉本興業に電話する。
「中條さんは、スーツをどこで購入されているのですか」
衣装さんが作っていることが判明すると、母親はひらめく。
「そうか、作ればいいんだ」
当然だが、彼女はスーツなど作ったことは無い。
というか、決して裁縫が得意でもない。
ボクの知る限りでは。
そして時間も無い。
ただ勢いとはスゴイもので、
2人は問屋街で布地を購入してしまった。
限りなく中條さんのスーツに近い色を探して。
ネットで型紙を購入。
裁縫の先生を探し、教わりに行く。
いきなり、素人がスーツを作ると言って現れたのだから驚いたのだろう。
裁縫の先生曰く『あなた、飛び級ね』と、粋な表現。
習いに行き、夜に宿題と称してミシンを動かしスーツを縫う日々が続く。
同時に、ワイシャツやネクタイも。
ネクタイはボクのを分解して型紙代わりとした、らしい。
靴と靴下は購入。
靴下がポイントらしく、
何店も探したという。
そんな日々が過ぎ、卒業式前日に完成する。
それが、コレ。
そのままの姿で体育館に現れ、
卒業証書を授与され、
式を終えた。
『みんなちがって、みんないい』
『誰もが自分らしく暮らせる伊丹を』
そんなことを思っているボクだが、それを体現した二人。
正直、少し羨ましかった。
そんな息子を、苦笑いしながらも、大きな心で受け入れてくれた先生、そして友人。
なんかステキだった。