【 中国のインフルエンスオペレーション(影響工作)】

 


 先日、「ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界」(峰村健司他、幻冬舎新書、2022年9月)を読んだ。
以下は、一部抜粋。(その2)

 


小野田(元空将) ケイパビリティ(capability 質的な概念)とキャパシティ(capacity 量的な概念)を区別して評価しなければならいません。性能の高いミサイルや戦闘機を持っていれば「ケイパビリティが高い」と言えますが、重要なのはそれをどれだけ持っているかというキャパシティの問題です。キャパシティという概念は単に「量」を意味するものではなくて、弾薬や装備を生産し、補充し、修理するための人的、物的、金銭的な能力すべてを包含するものです。
日本ではどちらも「能力」と訳すことが多いので、ケイパビリティが高ければ強いと誤解されがちですが、キャパシティが低ければ敵にとってあまり脅威になりません。

 

峰村(ジャーナリスト) 旧日本軍は戦艦大和を持っていたから「ケイパビリティ」は高かったが、ほかの海軍の組織や航空機が足りなかったから、「キャパシティ」が必ずしも高いとは言えなかったわけですね。

 

小野田 今のウクライナの戦いも、キャパシティの問題が重要になっています。

峰村 ウクライナ軍のキャパシティを向上させるために米軍が支援をしているわけですね?

 


台湾有事でも西側諸国は結束して迅速に支援に回れるのか

 

峰村 2022年5月の日米首脳会談の際、バイデン大統領は共同記者会見で、中国による台湾侵攻に対して、アメリカが軍事的に関与するのか記者から問われ、「そのとおりだ」と明言しました。その後、ホワイトハウスがアメリカの台湾政策について「まったく変わっていない」と修正しました。一部のメディアはバイデン氏の「湿原」と報じていましたが、私はそうは思いません。アメリカ政府は内部では台湾に対する「戦略的曖昧性」を修正しています。
実際、トランプ前政権は2018年に「インド太平洋における戦略的枠組みに関する覚書」という内部文書をつくっており、台湾を含めた「第一列島線」内で紛争が起きた場合、米軍が「防衛する」と明記されています。

 


中国の影響工作により、日本は「戦わずして負ける」?

峰村 日本のネット空間でも世論工作をすることで、国論を二分し、反戦ムードを盛り上げようとするでしょう。「中国との戦争を避けるべきだ」という企業や世論からの声に押されて、政府も動きづらくなる。日本が「戦わずして負ける」ことを危惧しています。

今の日本人は中国が仕掛けてくる心理戦や世論戦、法律戦といった攻撃にとても耐えられるとは思えません。というよりもすでに中国側の一連の工作は始まっていると言ってもいいでしょう。中国が本気でさまざまな圧力をかけてきたら、「戦わないで降伏しよう」という世論が出てくるなずです。日本国内での中国によるインフルエンスオペレーション(影響工作)は相当深刻ですから。こうした現象を見ると、私はかなり悲観的になっています。


小野田 先日、台湾国防部の人たちと議論したのですが、「われわれ自身が国として団結しないとダメなんだ」という教訓をロシア・ウクライナ戦争から得たと話していました。ところが日本は、「戦うよりも相手と話し合って落としどころを探ったほうがいい」という某元大阪市長みたいな考え方が今後も広がって、国論が二分される可能性がある。

 


経済的な相互依存を「兵器」にしようとする中国

 

峰村 経済安全保障推進法も成立とはいえ、これで十分だとは思いません。これから日本として何を守るべきなのかをもって深く議論しなければいけないと思います。

 

小野田 そうなんです。安全保障を軍事と言うメガネで見ると、中国を抑止するためにわれわれ自身も強くならないといけないし、ほかの国々と一緒に相手を囲んで脅しもかけないといけない。一方、経済というメガネで見ると、われわれと切っても切れない関係をつくれば、中国もリスクを冒さないだろうという話になるわけです。それが逆に中国への抑止になるという見方もたしかにあるでしょう。しかし歴史を振り返ると、経済の結びつきが強くても武力行使を防げなかった例がほとんどです。

 

峰村 中国はむしろ相互依存をある種の「兵器」にしようとしています。2020年10月に開かれ場中国の中長期的な政策の方向性が示される重要会議、中央委員会第5回会議(五中全会)で、習近平氏は「世界のサプライチェーンにおける中国への依存度を高める」と語っています。相手国の中国への依存度を高め、緊張が高まったら取引停止や制裁を科すことを狙った発言と見てよいでしょう。

 


小野田 ロシアも中国も、外国勢力によって自らの政治体制が脅かされることを最も恐れている。中国の「戦狼外交」はこうした警戒心からきていると思います。アメリカも日本も、それを十分に理解した上で、中国と向き合わなければいけないと思います。

 


<感想>
上記のとおり、中国によるインフルエンスオペレーション(影響工作)に踊らされることなく、マスコミ含めた、日本が今より強くなった上での他国との連携による中国抑止のための深い議論が必要であろう。

 

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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