【 台湾有事:どういう政策をとるべきか 】

 


 先日、「自衛隊最高幹部が語る 台湾有事」(岩田清文・武居智久・尾上定正・兼原信克、新潮新書)を読んだ。


 以下は一部抜粋。

 


アメリカの「戦略的曖昧さ」をどう評価するか(P200〜)

 

兼原 アメリカの曖昧政策(戦略的曖昧さ)がこのままでいいのか、という根本の問題があります。アメリカは台湾に核の傘を提供していない。軍事的に台湾有事への対応を真剣に突き詰めて考えている感じもしない。それでいて「外交的に何とかします」と言われても、国民に責任を持つ立場の日本の政治家なら、「信用できません」というのが普通だと思います。アメリカは強くて遠い。しかも走りながら考える国民性です。余裕があるから最初は、案外、ぼーとしていることが多い。しかも核兵器を持っているから米中全面戦争は起こり得ない。

 

しかし、日本は違います。万が一、台湾有事が始まれば、米国のアジア最大の出城である日本は、台湾と同様に蹂躙される危険がある。だから日本は台湾有事を起こさせてはならないのです。

 

武居 72年体制の成立以降、日本政府は台湾の問題に正面から向き合うのを避けてきたところがありました。言い換えると、ことを荒立てないように努めていたということです。

 

今の日本には有事法制があり、平和安全法制がある。いま96年(第3次台湾海峡危機)と同じようなことが起こった時、日本はもう曖昧な態度を取ることはできないでしょう。

 

尾上 ストラテジック・アンビギュイティ(戦略的曖昧さ)のポリシーを変えるべきだという議論は、リチャード・ハースをはじめアメリカの専門家の間でもありますが、アメリカは戦略的な計算に基づいて、意図的に曖昧な態度をずっと貫いてきている。それが習近平の戦略計算にプラスに働くのか働かないのかというところの判断で、いろいろな議論があります。

 

 軍事的な侵攻は絶対に許さない、その場合はアメリカが介入する、という方針を明確にしつつ、台湾に対しては、「独立宣言はするな。それは今までの枠組みを壊すから」というアメリカの考えを政策として宣言することが私はいいと思いますが、台湾を死活的な国益と考えるかどうかにも色々な意見があり、それによって曖昧政策が良いのか、明言政策が良いのかについて考え方が違ってくるでしょう。

 

ただし、バイデン大統領が度々、アメリカは台湾を同盟国と同様に防衛するという趣旨の発言をし、ホワイトハウスや国務省がすぐに曖昧政策に変更はないとその発言を否定しています。このような米国指導部の曖昧で不統一な態度は良くない。

 

岩田 戦略的曖昧性に関しても、日本は傍観者的に見ているだけで、何も考えていないのが現状だと思います。米国がどういう政策に出ようとしても、日本としてどういう政策をとるべきなのかを議論しておくべきです。

 

岩田清文:元陸上幕僚長(元陸将)
武居智久:元海上幕僚長(元海将)
尾上定正:元空自補給本部長(元空将)
兼原信克:元内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長

 

ご参考1)有事法制:https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/kuniwomamoru/yuji/index.htm

 

ご参考2)平和安全法制:https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/nsp/page1w_000098.html

 


<感想>
台湾有事発生時に、日本としてどういう政策をとるべきなのか。国会における早期議論を期待したい。

 

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