いやーーーーーーーっ……
めちゃくちゃ……
良かった(この世で1番太い太文字)
どうも、鶴野有紗です。
無事に終えた朗読劇「ミディアムブルーは終わらない」の感想ブログです。
脚本・演出、そして火華の代役を務めました。
解説も加えつつ、基本は感想です。
まずキャストの感想から言わせてください。
今回有難いことに、MsmileBOXさんが私のキャスティングをほとんど通してくださり、本当に頭が上がりません。
その筆頭が
火華役、千春さんです。
もうね、私は千春さんの声質も演技も大好きです。
千春さんは何より引きながらも出すという難しい演技が本当に上手くって。
普通感情って20%とか100%とかの塩梅で出ると思うんですけど、千春さんの演技って、-30%の状態を狙った上で100%が出せるんすよ。
何言ってるかわかんないと思うんすけど……
とにかくすごいんです。
今作を考える上でまず第一に火華というキャラクターが出来上がったのですが、演者はもう千春さんしかいないと思って真っ先に連絡しました。
千春さんのスケジュールが取れてから公演日程決めてください!!!!とお願いするほどです。
実際、稽古の火華は本当によくって……。
私の理想である、中性的で、ぶっきらぼうで、そのくせ誰より優しいという火華が出来上がりました。
私自身予期せぬセリフ部分でふと優しい声になった千春火華がめちゃくちゃ良くて、代役で私が火華を演じた時もリスペクトで真似させていただきました。
火華は本当に難しいキャラクターで(今作はみんな難しいキャラですが)、ただツンケンしてるんじゃない。誰よりも多くの痛みや苦しみを知ってるからこそツンケンしていて、優しい。
そこのバランスが絶妙でした。
次回作ではリベンジさせてほしい!
更に千春さんに合う火華を書きたいです!!!
続いて心音役。
初日の華成結さん。
おもしれー女、だったな……。
稽古時から本当に丁寧に心音と向き合ってくださいました。
演じたあと、私のセリフの感情や流れは合ってますか?などたくさん質問もしてくださいました。
最後のセリフ「待ってるからね」はどういう気持ちで言っていますか?という質問に、私はどちゃどちゃ長い説明をしたのですが、その長い説明すらも噛み砕いて本番に挑んでいただき頭が上がりません。
1人でも場を作る才能を持っている方だなと感じたので、見ていてとても楽しかったです。
2日目、立石凛ちゃん。
最初の読み合わせでは可愛さが溢れてしまっていたので、もう少しだけお姉さんっぽく可能ですか?とお願いしたところ
意味深心音爆誕
という感じでした。
めちゃくちゃ何かを匂わせてそうなのに何を匂わせているのかはわからない絶妙なバランスで、これが本人どこまで考えてんだろ……逆に何も考えないからこそできる技……?どちらにせよ強キャラやん……となりました。
2日目は1日目よりもバランスが強め(?)な組み合わせな中、心音という1人の人間を際立たせてくれて感謝でした。
続いて香織。
1日目の本郷里実さん。
こちらの香織はなんというか、静かな狂気であり、最初から最後まで狂いきれず丁寧さが滲み出るのがまた痛々しいなという印象です。
日記部分の「苦しい。苦しい。苦しい。……」のところはどう読むか私も役者に委ねてみようと読み合わせをしたら、本当に丁寧に読み上げてくださり、鳥肌が立ったのを鮮明に覚えています。
決して香織は最初からおかしかったわけじゃないし、今だって、狂いたくて狂ってるわけじゃないんだよなぁ……。
実はどちらの香織にも根本は同じディレクションをしました。
芽依がいなくなっているとわかっていても、5年間信じられず嘘を紡ぎ続けてきたので、最後「助けて」というタイミングは悔しさや諦め、苦しさ、とにかく色々詰め込んで欲しい。と。
そこの塩梅が凄かったですね……。
火華として本郷さんの香織を見ていると、まるで自分を見てるみたいで痛々しくて、思わず優しく接するようになったのだと思います。
2日目、佐藤舞さん。
こちらは打って変わってパワータイプの狂い方。
心音役にも伝えたのですが、本当につらい時こそ乾いた笑いがでて、それすら虚しくて、また笑えてくることがあるんです。
香織も芽依の“存在しない”話をしている時、本当に確かに楽しくて、でも同じかそれ以上に虚しさも混在していて、もう頭も心もぐちゃぐちゃなんですよね。
そこの出し方が本当に上手い。
喫茶店におもむろに来て芽依との思い出を語り出すシーンは、もっと苦しく……もっと苦しく……と何度もディレクションさせていただき、どちゃどちゃに苦しいシーンが出来ました。
佐藤さんが無理して笑う演技、性癖なんだと思います。
ありがとう。
続いて芽依。
1日目の濵川明那さん。
濵川さんの芽依はもうほんと、元気いっぱいで……。
本当は元気いっぱいな子が、おどおどと喫茶店で働いてるのを見るとそれだけで泣きそうになります。
ともすれば6歳を演じると幼くなりすぎるところなんですが、今回は芽依役は共通で絶妙なところを探っていただいています。
6歳とわかる人にはわかるし、わからない人にはただの大人しい子。
とわかるバランスを取ってもらっていたのですが、濵川さんは上手いねぇ。
そしてママと話すところは全部解放して、一言一言楽しそうにママの顔を見て話してみて、とディレクションしたところ、本当に素敵な笑顔で……。
私が産みました……(混乱)
2日目の深川瑠華さん。
私が産みました(二度目)
いやもうほんと可愛いなぁ……。
心音に笑って、って言われて笑うところの無邪気さが、一周まわって心がキツくなって好きです(母親目線なので)。
なんていうか深川さんの芽依は、いい意味で本当に6歳のような自由奔放さや恐れなさがあってとても良いと思います。
あの母親から産まれたんだなぁと感じるというか、佐藤さんとのバランスがとても個人的に好きでした。
2日間とも、香織と芽依のバランスがよかったなぁ。
店長の東城咲耶子さん。
店長は私自身2020年頃から書いている短編のキャラクターなのもあり、思い入れがとても強く……。
この独特な柔らかさを出せる人……。
と悩んでいたタイミングで東城さんだ……!となりました。
実際本当に優しく柔らかい店長で嬉しかったです。
店長は良くも悪くも相手のテンションに感化されない人なので、難しかっただろうな……と稽古時思いつつ。
細かなディレクションにも笑顔で応えてくださり、その姿もまるで店長でした。
「どう答えたら、満足しますか?」の言い方大好き。
瀬乃役、奥野香耶さん。
私は奥野さんのお声が大好きでして……。
出会いはASMR作品だったんですけれども……。
それから何度か共演させていただいた時も声が本当によろしくて……。
実際、瀬乃のキャラクターは難しく、奥野さんの透明感のある不思議な声質だからこそキャラがたつなと感じました。
特に小説の読み上げパートが多いため、それをこなせるには誰の耳にも届きやすい、サラサラした丸い声が必要で。それに奥野さんはドンピシャでした。
小説の読み上げではあるけれど、瀬乃の内情の吐露でもある部分は絶妙な具合で感情を出してもらったのですが、それもすごかったなぁ……。
今回の代役、私が千春さんの火華を好いていた分、実はかなりプレッシャーで。
感想でも千春さんの火華もみたいと嬉しいコメントもあり。
じゃあやはり、私がやるのは解釈違いなんだよな……。と思いつつ練習を重ねていたら、奥野さんが
「火華が鶴ちゃんを選んだんだと思う」
と言われて、ものすこぐ体中の血が沸き立つのを感じました。
もちろん私は千春さんの火華が正式だとは思いますが、今、今だけは火華が私を選んでくれたのかもしれない。
それはどんなに光栄で、嬉しいことだろう。
その言葉のおかげで、舞台に立つ覚悟が決まりました。
続いては演出面についてです。
私は台本のプロット段階から演出もつけていくスタイルです。
そして今回は、無音と音と声をそれぞれ融合させたものを作りたいと思いました。
なので冒頭は雨をあえて1分間流すことで、観客も環境に慣れてもらったり、あえてBGMではなく環境音をメインで流すことで印象づけたり、BGMをゆっくり聞かせて一息つく間を作ったりしました。
演技面でも、台本にそもそも「しばし無言」などを意識的に入れたり、言葉はなくとも「……」を明記したり、ディレクションでここは1拍おきましょう、等と細かく入れていきました。
無言の後のセリフは際立ちますし、その無言にも必ず理由がある。
何か重たい気持ちを伝えるのには必ず時間がかかる。
そんなリアリティを追求していました。
舞台ではなく朗読劇だからこそできることだなと思います。
BGM選びも楽しかったー!!
雨にノイズがかかったやつは、自分で加工して作りました。
衣装も案を出させていただきました。
基本は黒を基盤に、各キャラのテーマカラーを差し色に使ってもらい。
火華は青(炎の内側)
心音はオレンジ(炎の外側)
店長は緑(自然)
芽依はピンク(幼さ)
香織は白(何もない)
瀬乃は紫(高貴な文豪)
もう生きていない人にはシースルー素材を。
など、大変なオーダーに応えていただいた衣装さんには頭があがりません🙇♀️
次回作は女子高校生達の話を書きたいです。
若さゆえの愚かさや、拙さ、真っ直ぐさを書きたいな。
そして明かされなかった話を明かしていきたい。
その時は何卒よろしくお願いいたします。
あとは話の内容についてですね。
丘の上公園という、火華と心音の思い出の地がなくなる話。
今回は公園との別れですが、日常でこんな別れはたくさんあります。
好きだったコンテンツ、なんとなく着てた洋服、賞味期限の切れた食べ物。人との縁。
夏はどうしてノスタルジーなのか考えた時、環境音が他の季節より多いからなのかな、なんて考えました。
当たり前の違いもどうしても書きたくていれました。
当たり前の概念は人によって違うと言った火華が、最後の方「それが死者の当たり前だ」と言うんです。
生者と違って死者はもうどうすることもできないから。
そんなもどかしさが詰まっています。
心音と話して怖かった話。
心音の家族は仲良しなのに、交通事故でいなくなっている。
心音は未だに親に会いたい。
その様を見ることが、火華からしたらとても怖い。
1番救いたい身近な人を救えない自分に対しての苦しみ。
そんな心音は明るくて社交的だけど、裏を返せば黙れない性格でもある。
自分に自信がないのか、それとも何か……。
に関しては続編で。
台本の4章のタイトル「私達は確かにポラリス」
ずっと夜空にある北極星、ポラリスに例えた話。
ポラリスは三連星であり、星達が寄り添い合い、ひとつの星に見えている。
たくさんの道標になっているポラリス。
きっと火華は香織からみたらポラリスで、香織も芽依からしたらポラリスで、瀬乃も実は香織を救った偉大なポラリスである。
みんな、自分の知らないところで誰かを救っている可能性があるのだという話。
そして香織の年齢。
台本では32歳と書いているのですが、本番は30歳に修正しました。
本当は10年経った設定にしたかったのですが、さすがにきついか……と思い、7年にして、それも微妙な年数か……と5年にしたのですが、その弊害です。
「こんな時間まで起きるの、怖いよなぁ」
火華が芽依に言ったセリフです。
芽依は5年間どう彷徨っていたのだろう?
喫茶店に来たのは最近らしいけど、やって来た当初はどんな感じだったんだろう?
自分を認識してくれる火華の存在はきっとかなり大きかったんだろう。
そして火華もまた、芽依の話を聞いて心を痛めて救おうとしたのだろう。
こんなずっと、毎日起きてて苦しいよね。
でももうお母さんが来るから。大丈夫だよ。
そんな火華の想いを込めました。
曖昧な火華。
死者が見えるのってどんな世界なんだろう。
実際霊が見える方が、普通に生きてる人間と変わらず存在してる、目が合って初めて霊だとわかる、と言っていたインタビューを強く覚えています。
火華の過去も……気になるよね……
最後は、私がキャストに台本と一緒に送るキャラクター詳細という資料があるのですが、そのうちの小噺を各キャラ分載せて終わりたいと思います。
久遠火華
『生きるということ』
生きるとは。
衣食住を満たせば?
心を満たせば?
毎日考える。
僕は生きている。
でも彼女は死んでいる。
あの人は生きていて、あの人は死んでいる。
曖昧になる境界線の上で生きる僕は、本当に生きている?
何が正しくて、何が間違いか。
何が優しくて、何が酷いのか。
わからない。
曖昧なまま、今日を僕は、生きている。
夕凪心音
『生きとし生ける華へ』
オレンジの光を浴びて微笑む君。
薄暗い場所に一人蹲る君。
私を見つめる君。
どんな君も、今となっては愛おしい。
あの頃にはわからなかった命の重みが、今となっては苦しい。
どうしようもない君と、どうしようもない私。
どこにも行けない私達は、進めないまま、周りの一歩を見届け続けている。
曖昧な私達は、ずっと何かを待っている。
何かを、待って、生きている。
店長
『ようこそ、なんでもない喫茶店へ!』
喫茶店には様々なお客様が来店される。
休憩しに来た人、悩みがあってきた人、更には涼みに来た小鳥や、風に乗った花びら。
どれもが大切なお客様です。
ここはなんでもない幸せを、提供し、共有する店。
悩みがあるのなら、是が非でも当店へ。
もちろん悩みがなくとも当店へ。
喜怒哀楽、なんでもない日常にささやかな色を添えましょう。
望月芽依
「ことば」
おはようございます。
おやすみなさい。
ありがとうございます。
ごめんなさい。
むずかしい、ことば、たくさんあります。
もうし、ござません?
もうしわけ、ございません。
はやく、なおるといいね。
だいすきだよ。
ママ、めいはまだ、たくさんことば、おぼえるよ。だから、あんしんしてね。
望月香織
「芽衣へ」
ママね、最近パート再開したよ。
芽衣が大学まで困らないように、お金を貯めようと思って。
芽衣は中学生になったら、どんな部活に入りたい?
やっぱりバスケ部?
ママも昔そうだったんだよ。
大会とかに出ちゃったら、ママ張り切ってお弁当作っちゃう。いっぱい応援するからね。
……これからどんな子に育つんだろう。
楽しみでしょうがないな。
芽衣、いつでも帰ってきてね。
ママもずっと、芽衣の事探すからね。
白崎瀬乃
「蜜」
私の人生は、どうして一度きりなの?
もっと、貴族のお嬢様とか、アラビアの王子様とか、アメリカの起業家とか、日本のアイ
ドルとか、色んな人生を歩んでみたいのに。
あと、もう一人の人生も。
……私は、今日も文字を綴る。
何もない場所に、一文字ずつ文字を生み出していく。
あぁ、生きてる。
私、確かに生きてる。
誰かの蜜を味わうことで、生きている。
苦い、苦い、蜜の味。
私だけの、蜜の味。
以上です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
あでゅー!