部屋へのドアを勢いよく開ける。
待っていたのはふせんだらけの部屋。
ふせんはどれもみな笑子にとって自分の分身だった。
その自分の分身がたくさんいる部屋で、笑子自身が泣いている。
しんどい。
涙があふれる。
苦しい。
涙があるれる。
そっか、まだ朝だ。
涙があふれる。
なんで泣いてるんだっけ。
涙があふれる。
泣いちゃダメなのに。
涙はあふれる。無情にも、あふれる。
笑子はベッドに倒れ込んだ。
そして普段減多に話もしない笑子が叫んだ。
誰もいない家で、部屋で、独り、空間に向かってんだ。
「みんな嫌いだっ…嫌い…人間も、私もっ」
でも、好きだ。
「なんで私は私なの…」
だって笑子として生まれてきたから。
「教えてよ。」
誰も答えてくれない。
「私はどうすればいい?」
笑えばいい。
笑子はよろけながら机のもとへ行った。
持子に座りぼやける世界の中で手を動かす。
…あった。
昔買った原稿用紙。
グチャグチャの紙達。
机の上に転がっている鉛筆をもって書き出す。
『私はいつからこんな人格になったんだろう』
『何度考えてもわからない』
『教えてくれればいいのに』
書く手が止まる。
手が震えて書けなかった。
原稿用紙に涙が落ちていく。
笑子は丁寧に原稿用紙を元の場所へ戻すと.
ベッドに寝転がった。
「私は…生きてる?」
合言葉がうまく言えなかった。
「大丈夫..大丈夫……」
たったの一言を口にするのに、苦しい。
吐き気がした。
熱は確実に高くなってるだろう。
『大丈夫……』
このまま死ぬんじゃないか?私は。
このまま熱にうかされて、死ぬ?
死ぬの?
私、死にたいのかな?
高校生に書いたこの小説のタイトルは「理由」。
久しぶりに大掃除をしたら出てきました。
私って高校生の時から病んでんの?(笑)
そんなイメージないんだけどな……
だって高校生の時の悩み、1個も思い出せない(笑)
でもそんなもんなのかなぁ。
今悩んでることも、数年後にはどうでもよくなったり忘れてたりするんかなぁ。
ということで、
朗読劇『半分嫌いで半分好き』
脚本・演出・日曜日のワラコ役の鶴野有紗です。
今回は裏話や感想などを思いついた順に書いていきます。
まず脚本。
書きながら、ある程度脳内で演出をつけていくタイプです。
なので出ハケや立ち位置も考慮しながら書き続けていました。
役に関しては、誰が誰を、自分が誰を演じるのか想像はしていなくて、ただ、どの役でも演じていて楽しい!やりがいがある!と思えるような構成にはしたいと考えていました。
ワラコとキョウは、高校の時に書いた小説に登場しており、結構そのまんま使ってたりします。
しかし、小説のキョウは顔にしわのある英国風の男性でした(笑)
そして、特にワラコのセリフに関しては、私のメモからかなり引用しています。
というのも、私は日頃生きていて悲しいことや苦しいこと等があった時、自分の感情をメモしているんです。
ワラコの最後の方のセリフ『なんでもない日常だから苦しい〜』らへんのやつは本当にメモのまんまかもしれない。
実際、そこまで悲しくなかったとしても、ちょっも脚色して文章にすることで、私はかなりストレス軽減というか、メンタルを守れるんですよね。
その時の感情はその時しか完全にわからないから。
ベテランが言っていた、『人の悲しみとか苦しみは他人事で勝手事』みたいな事も常に思っています。
共感はできても、理解は難しい。
でもだから、感情を伝えるために言葉があって、コミュニケーションがある。
演出面では、今回マイクの本数の制限と、1本は有線マイクということで、これを活かしたものにしようと作りました。
ワラコが有線マイクなのは、結局ワラコは繋がれている命なのだというもの。
マイクをシェアしている2人は、班の中で先輩後輩としてペアを組んでいる。
という設定があったり。
実際、脳だけが生きているワラコにとっての幸せは存在するのだろうか?とふと思うことがあります。
だって、仮想世界の中では死にたいも生きたいも、あまりにも残酷すぎないか?
なんてこともね。
研究員諸共、どこまで考えて実験をしているんだろうなぁ。
稽古時も、なるべく演者の個性を活かした演出が出来ればなぁと思いながらつけていました。
同じ役でも、その人の解釈や強みを伸ばした上で、ここだけはこの解釈、テンポでお願いします!的なお伝えをしていたんですが
俳優とか声優ってすげーー……。
どんどん吸収して良くなってくんだから……。
(笑)
本当にみんな良い人で、演技も人柄も最高で、私はひたすらに助けられていました。
学びが多い現場だった。
音響とか衣装を考えたりする時間も、大変ではあるけど楽しかったです。
今回は私のルーツでもあるノベルゲームを基盤に組み立てていったんだけど、音楽の入れ方や演出でなんとなく感じた方もいるのかな。
昔は自分で作るくらい、ノベルゲームが好きです。
文章を最高の演出で読める媒体だと思っています。
それこそ学生時代は乙女ゲームをやりまくってましたけど、乙女ゲームもBGMや展開が良くてな……。
そういうのが作れたらなーって思い、励んでいました。
今回やり遂げてみて改めて思います。
私は、自分の表現したいものと同じくらい、観てくれた人がどう感じるのかを考えて朗読劇を作っているんだなと。
脚本演出家によっては、私の作品を見ろー!とか、観てくれた人がどう思うかより、表現を貫き通すのが大事!とか、観る人を選んだとしてもコレをやりたい!とか、そういうのもあると思うけど
私はどうしても、観てくれた人はどう思うかな……演じる役者はどう思うかな……音響照明の人が困らないかな……
とか、めちゃくちゃ各方面に気を遣ってしまいます。
それは多分短所でもあり長所でもあるんだろうな。
そんな風に、今回は自分自身をかなり理解というか、抱きしめられるようになったなって印象があります(笑)
本番日にサイン会を開かせていただいたんですが、その時に『共感してしまって、涙が……!』みたいな方もいれば『なかなかわからなかった、生きるの楽しいし!』みたいな方もいて、やっぱり人間はおもしれーってなってます。
そうそう、私は作品を創る上で、必ずどの登場人物もバックボーンを作っています。
そのキャラクターの好きなものや嫌いなもの、どんな人生を送ったのか、そういうのを考えるとめちゃくちゃ書きやすいんですよね。
せっかくなので今回も、キャストに資料として渡したものを共有します。
全キャラのバックボーンと小噺です。
シナリオを書く前に書き上げたメモたち。
【登場人物詳細】
ワラコ
(年齢)24
(性別)女
(服)だるだるスウェット
(好き)インスタントラーメン(塩)
(嫌い)パクチー
(一人称と二人称)私、君
(願望)普通から脱したい
(長所)可もなく不可もなく
(短所)可もなく不可もなくな所
(職業)引きこもり
(説明)三浪し大学に入学したものの、就活に失敗しまくり諦めた。
バイトもせず、《インターネット引きこもりマン》と自称し、家から一歩も出ない毎日。
現状をどうにかしたいと思ってはいるが、バイトも就活も始めることが出来ず、親からの仕送りで暮らしている。
(経験)小学校までは男女問わず誰とでも仲良い明るい子どもだった。
しかし中学校で他の地区からの学生も混じり、クラスにとけ込めなくなっていく。
美術部に入るも緊張で上手く喋ることかできず、友達もできなかった。高校では帰宅部。
大学もなんとなく進学した為、進路が定まりきらず、数社受けた就活もすべて失敗した。
以降、家を出されてシェアハウスに住むも、結局は家の支援でしか生きることが出来ない。
(小噺)「普通の普通による普通の噺」
なんてことない、はなし。
つまんない、はなし。
どうでもいい、はなし。
くだんない、はなし。
私ってそれらで創られていて。
それ以外の事はなくて。
大したことなくて。
でも、たまに考える。
どうやったらそうじゃなくなるのかなって。
ぼんやり答えは見つかるんだけど、ぼんやりすぎて行動には移せない。
だからまた、繰り返し。
これすらも、なんてことない、つまんない、どうでもいい、くだんない、中身のない、はなし。
ベテラン
(年齢)28
(性別)女
(服)綺麗めオフィスカジュアル
(好き)たこわさ
(嫌い)特になし
(一人称と二人称)私、あなた
(願望)まとまった休暇が欲しい
(長所)面倒見がいい
(短所)断れない
(職業)コンサルのマーケター
(説明)なんとなくベテランを名乗っているだけで、別にベテランでもなんでもない。
日々身を粉にして働いている一方、シェアハウス内でもグラタンの手伝いや他の住民の世話を焼いている。
目の前にタスクがあるとモヤモヤしてしまうので、どうにかしてすぐ終わらせたいタイプ。
(経験)実際は第一班研究員。
その中でも主任を務めており、本当のベテラン。
研究員達をまとめながら、今回の実験【ハーフコード】を取りまとめている。
実験中はなるべくワラコの見張りが出来るよう、家の外に行きモニタリングしている。
実験はベテランの発案で開始された。
1人でも多くの人生を豊かにしたいと考えている。
(小噺)「幸せの終着点」
『幸せ』。
辞書に書いてあるそれは、なぜか酷く冷たく感じた。
他人事のようで、味気ない。
だから調べようと思った。
自分の興味が尽きるまで。
『普通』を願う彼女にとっての幸せはなんなのだろう?
それを見守る私自身の幸せはなんなのだろう?
月日を重ねる毎に、当たり前の大切さを知る。
月日を重ねる毎に、生きる事への難しさを知る。
皆が同じような思考をしている訳では無い。
最近、実験に前向きではない子もいるくらいだ。
私、一体、どこに辿り着けば満たされる?
ママ
(年齢)25
(性別)女
(服)原宿ファッション系
(好き)鶏肉の軟骨
(嫌い)生クリーム
(一人称と二人称)ママ・私、あんた
(願望)好きなことだけで生きていきたい
(長所)可愛い
(短所)ナルシスト
(職業)建設現場事務
(説明)5人兄弟の末っ子で、上はすべて兄である。
なのでむさくるしい家を早く出て、ゆめかわな自分になるのが夢だった。
しかし結局就職したのは建設現場事務であり、周りは男だらけでイライラしている。
だが女の子扱いされるのは悪くないと思っている。
女を出しているネコババが嫌い。
(経験)実際は第一班研修員。
ネコババとペアを組んでおり、成果を出すべく動いている。
入所当初は華々しい結果を収めていたが、最近は失敗続きであり、期待外れだとラボ内で噂されている。
なので今回の【ハーフコード】では必ず成果を出すと意気込んでいる。
(小噺)「乙女よ、大志を抱け!」
私って本当に可愛い。
顔はもちろん、爪の先から髪の毛、性格まで隅々、余すとこなくパーフェクト。
強いて言うなら、王子様じゃなくてむさ苦しい男達に囲まれてる
ってとこだけ難点だけど、それって私のせいじゃないし。
そう、私のせいじゃない!
なんで世界はもっと私の為に動かないわけ?
全世界の人間が私にときめいて優しくしてくれるのはいつ?
待ってるだけじゃ誰も救ってくれない。
私は、私の価値を、私の手で見出してみせるわ。
ネコババ
(年齢)29
(性別)女
(服)20代 合コン 服 女、で検索したやつ
(好き)グミ
(嫌い)ブロッコリー
(一人称と二人称)ネコたそ・私、あんた
(願望)全ての悪いヤツが捕まって欲しい
(長所)家庭的なところ♡
(短所)IQが低い
(職業)レンタル彼女
(説明)幼少期に『ネコババ』という単語を知った時、可愛いネコと可愛くないババが組み合わさるのかと感動し、それ以来ネコババを名乗っている。
名に刻んだ通り、ネコババするような人間を心底嫌っており、悪い人間に対してのみ口がすこぶる悪い。ママが嫌い。
(経験)実際は第一班研究員。
ママとペアを組んでおり、成果を出すべく働いている。
とはいっても別にそんなやる気はないので、いい感じにテキトーにやりたい。
あくまで言われたことをこなすくらいでいい。
あんまり考えるのが得意ではない。
(小噺)「ボクメツ・サツバツ・ゼンメツ!」
ネコたそはいつだって正しい。
ネコたそはいつだって悪を許さない。
ネコたそはいつだってパーフェクト。
これ、常識。
まぁ?たまに変な奴に色々グズグズ言われるけど、
そもそもその変な奴が悪いからどうしようもない。
そんな奴に構ってる時間もない。
だってこの世には悪い奴が蔓延りすぎてるんだから。
そんなゴミ、余すことなくセンメツしてやる。
余すことなく、ゼンメツしてやる。
その為には、まずお金稼ぎと情報収集なのだ!
スター
(年齢)26
(性別)女
(服)スタイリッシュ、セットアップとか
(好き)オムライス(デミグラス)
(嫌い)生魚
(一人称と二人称)ボク、キミ
(願望)美しいものに触れたい
(長所)すべて
(短所)なし
(職業)ファッションデザイナー
(説明)派手を体現化したような人間。
謎な擬音語を多用する癖がある。
圧倒的スターでカリスマでナルシスト。
実際スタイルも顔も良しなので、周りもその性格にすぐ慣れてしまうらしい。
エンガワによくデコられているが、自分が更に綺麗になるなら別に良しと思っている。
(経験)実際は第二班研究員。
その中でも主任を務めている。
エンガワとグラタンの面倒をよく見ており、特に新人のエンガワに対しては一層大切に育てている。
研究自体に興味があるというよりは、新人育成に力を入れている。
それが自分にとっての幸せであり、仕事をする意味だと考えている。
(小噺)「人類みな家族」
ビバ!青春!
少女よ、大志を抱け!
人間とはいつまでも子どもであり、
愛される存在であるとボクは思う!
人間として生まれたが故に、
人は生きる意味や価値や社会的地位を必要とするが、
本当の所はそうじゃないはずなのだよ。
本質はきっと、そうじゃない。
だからこそボクは与え続ける。
人に愛を。幸福を。肯定を。
エンガワ
(年齢)22
(性別)女
(服)ギャル(ピンクなどの派手めな服)
(好き)デコ、キラキラ
(嫌い)ムカデ
(一人称と二人称)私、◯◯さん
(願望)楽しいことがしたい
(長所)明るい、偏見を持たない
(短所)耐久力がない
(職業)大学生
(説明) 愛称エガワ。ギャル。
ノリと勢いで生きている大学生。
別にギャルになりたくてなったわけではなく、
ただただマインドがポジティブギャル。
なので若者言葉を使うものの、常識をかなり持ち合わせている。
大学では服飾学科。
(経験)実際は第二班研究員。
研究所の中で一番の新人。
根がとても真面目な為、少し突き進みすぎてしまいがち。
上司のスターとグラタンを信頼しており、よく相談している。
(小噺)「当たり前に生きること」
生きるって、楽しいよね。
笑うって、サイコーだし。
そう、思ってたんだけど、いつからだろ~?
高校らへんからかな?
そうやって楽しく生きてる自分と、その正反対の人がいるって気づいた。
生きることが辛くて、何もかもが憂鬱で、見えてる世界も狭くて暗い。
それって、どんな感じなんだろ。
想像するだけで、ちょっと泣きそうになる。
私に出来ることって、なんだろなぁ。
グラタン
(年齢)28
(性別)女
(服)シンプルなワンピース
(好き)ガーデニング
(嫌い)暗い所
(一人称と二人称)私、あなた
(願望)ゆったりまったり過ごしたい
(長所)家庭的
(短所)生きるスピードが遅い
(職業)家政婦
(説明) 家事全般が得意で、シェアハウス内の家政婦として働いている。
基本まったりしているので、他の人と会話が成り立たないが、グラタン自体は特に気にしていない。
ぼーっとしている時間が多いが、家事はテキパキこなす。
(経験)実際は第二班研究員。
第二班の中では最年長だが、特に役職につきたいわけではないのでスターに一任している。
天国という行ったこともない場所に興味があり、実験に参加しているが、誰にもその話をしたことはない。
(小噺)「天国」
“幸せな状態で天国にいけるように”
そんな文章に目を通す度に、思う。
“天国ってどんな所?”
想像もつかない場所に、
誰かを誘導することなんて難しいんじゃないかしら。
でも、一方通行のその道を、自ら歩むことは出来ない。
天国、天国、天国。
ずっと、ずっと、考えている。
私だけの、想像の世界。
私だけの、天国。
こんな感じです。
キャラに対する解釈、深まったかな?
もう本番は終わってしまいましたが、終わってもキャラクター達のことを愛してあげてくださいね。
そして、色んな方面からの感想お待ちしております!!
本当にネガティブでやべーメンタルの持ち主なので、感想で何とか息をしているんです……。
まとまってなくても、長文でも、一言でも、なんでもいい。
受け取ってくれた人がいるんだと、教えてね。
ではでは、あでゅー!