近畿地方も梅雨が明けるとセミがやかましく鳴く季節を迎えました。
ここ大阪で鳴くセミはクマゼミとアブラゼミのほぼ2種類で占められるのですが,特にクマゼミは多く,シャーシャーと大合唱を轟かせ夏の風物詩となる一方でその五月蠅(うるさ)さならぬ七月蟬さにウンザリしている方も多そうです。
他方,アブラゼミはジリジリと鳴き東京では最もメジャーなセミですが,私の住む周辺ではクマゼミの方が圧倒的に多く目につき,アブラゼミはむしろ少数派のように思います。
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さて先日,地面から出てきたセミの幼虫をたまたま捕まえる機会があったので,羽化させてみることにしました。
果たしてこのセミはクマゼミなのか,アブラゼミなのか,それともそれ以外なのか。
幼虫の形態をネットなどで調べずに,成虫の姿を見るまでのお楽しみとしました。
この日は雨が時折降ってましたが,そんな雨上がりの後の土が柔らかくなった夕刻にセミの幼虫は出てくることが多いと聞きます。
割り箸で即席で用意した止まり木ですが,あまりお気に召さなかったのか,登ったと思えば降りたりまた登ったりを繰り返していました。
羽化の場所はカーテンなどでも良かったなぁと今になって思います。
結局は羽化のタイミングも近づき背に腹はかえられぬと思ったのか,割り箸の先端に鉤爪を引っかけて体を固定したのが午後11時ごろ。
そして真夜中0時に背中が割れてきました。
10分後。白い成虫が殻の中から顔を出します。
そこからさらに10分後。少しずつ身体も出てきました。
背中が割れて30分後。セミが逆さまの姿勢になりたまに手足を動かしているのが確認できます。羽も出てきましたが小さく折り畳まれています。
40分後。ほぼ体全体が姿を現します。この姿勢が結構長く続き20分ほどこの状態でした。
背中が割れてから1時間が経ちました。
突然腹筋を曲げて逆さまだった身体を立て直します。
そして殻の中に仕舞われていたお尻を出して脱出完了。
羽が少しずつ開いてきます。
1時間30分後。
羽が完全に開きました。
背中が割れ始めてから2時間。
体と羽が黒っぽく変化。
このあたりからようやくこのセミがアブラゼミであることを確信しました。
羽化の始まりから4時間が経ちました。
アブラゼミの成体がほぼ完成されています。
まだ羽はうっすらと透明で乾き切っていないことは見て取れます。
そして7時間後。
朝目覚めるとアブラゼミの完全体が殻にぶら下がっていました。
羽化の始まりから完全体になるまでの7時間の変化をアニメーション化すると下のような感じになります。
撮影間隔はまちまちですが,ダイナミックに形態が変化していることは理解できますね。
生命の不思議と言わざるを得ない,とても興味深い光景でした。
成虫へと変貌したセミはそのまま元気そうに羽ばたいて遠くの空へと消えていきました。
アブラゼミは土の中で幼虫として3〜4年を過ごした後,土から出て成虫となっておよそ2〜3週間ほどで寿命を迎えます。
このセミも最後の輝きを求めて残りの余生を過ごすのでしょう。
そう考えるとセミの声もなんだか少し哀しげに聴こえてくるのでした。