2012年11月,長野県飯田工業高校3年生の学生8人が気球にカメラを載せて青い地球の観測に挑戦しました。
しかし,成層圏で破裂して地上に落下するはずだった観測装置からの信号は途中で途絶え,結局カメラは回収されないまま彼らは高校を卒業します。
そして月日は流れ2020年11月。
8年越しにカメラが見つかったとメンバーに一報が入ります。
卒業後,彼らは全く別々の道を歩んでいたのでした。
カメラに残された高校時代の自分との再会,そして記録された青い地球の姿。
忘れかけていた青春の青くて苦い日々が少しずつ甦りはじめます。
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先日NHK BS1で放送されたドキュメンタリー番組,『8人の青い宇宙』。
映画にもありそうなドラマチックな展開が胸熱でした。
今から遡ることちょうど10年前の2012年4月。
工業高校3年生の生徒8人が課題として「成層圏からの地球の撮影」にチャレンジしたのがこの物語の始まりです。
もともと皆が仲が良かったというワケではなく,これまでの高校生活でほとんど話したこともなかったメンバー同士も中にはいたと言います。
分担して課題に取り組むメンバー達。
気球製作班,落下予測班,記録・回収班とそれぞれの役割の中で制作に打ち込みます。
いろいろな法令も勉強しなくてはいけません。
気球を飛ばすためには国に事前に許可を取らないといけないそうです。
何度も校内で実験を繰り返し,ついに気球は完成しました。
そして2012年11月。
気球がついに空へと打ち上がりました。
気象条件から考えて当日は福井県から飛ばすことになったそうですが,メンバーの一人は当時の心境をこのように振り返っていました。
「正直なところ飛ばしたくなかった。気球の制御も充分に出来ていなかったし,落下時に人にぶつかったらと不安だった。」
第三者から見ているととても楽しそうに思えますが,裏には当事者の並々ならぬ苦労や不安があったことが伺えます。
順調に打ち上がったと思えた気球も,搭載されたGPSの足跡が途中で途絶えます。
探し回ったものの見つからず,すぐに見つかるだろうと思っていた気球はついに卒業式になっても見つかることはありませんでした。
卒業後,彼らはおのおのの道に進み,やがて気球を飛ばしたことも過去の記憶として終わったものだと忘れ去られることになります。
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時は流れて2020年11月。
LINEで連絡が入ります。
『気球が見つかったとの一報が入りました』
そのニュースはすぐに全国的に取り上げられました。
【8年前の気球,成層圏から奇跡の帰還!】
【8年前の高校生の気球が埼玉で発見】
見つかってハッピー!青春って素敵!素晴らしい思い出ができて良かったね!ってなりそうですが,なかなかそうもいかないようです。
全国的に知られることとなったこのニュースから,明るみに出た事実も。
スマホをGPS代わりに空へと打ち上げたのですが,実は電波法に違反していたことがネット上で指摘されます。
打ち上げた気球がその日に回収できていれば蒸し返されることもなかっただろうとメンバーの1人は語ります。
複雑な気持ちを抱えるメンバーもいたりして美しい思い出だけではありませんが,やはり高校時代に何かに打ち込んだ経験は他人の私の目から見てもとても眩しく思えたのは事実です。
俺は高校時代何に打ち込んだだろう?
受験勉強に明け暮れた暗い青春だったかもしれません。
さて,地上に帰還したカメラですが,そこには青い地球が収められていました。
打ち上げから地上落下までのフルバージョンがYouTube上で公開されています(2時間半の動画)。
横向きカメラの映像。