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書評:阿南友亮『中国はなぜ軍拡を続けるのか』新潮選書

  答えは、「中共党が中国で支配の永続性を図るには軍拡しか選択肢が無いから」。

 

 著者の説得力は実証に裏打ちされているので、誰も反論できないだろう。「誰」の中には北京・中南海に棲む中共党の最高幹部らもいる。

 著者の父親は外交官。確か、駐日大使まで上りつめた。硬派といわれていたが、途中で中共党の対日工作により、立法府に顕在している親中派を用いて圧力をかけられ屈服した、と見られていた。以後、媚中派の有力者になった。しかし、これだけクールな見方をもつ子息を持ったなら、外交官としてはともかく、父親としては成功した口かもしれない。

 

 ニクソンの訪中から始まった中国へのテコ入れ、米国の意を受けた最大の協力は79年の大平首相の訪中から開始された日本の経済協力である。総額にすると8兆円以上、それも経済成長の基盤整備に多くの地道な日本技術者による技術協力がどれだけ有為に働いたかを、さりげなく客観的に示唆しているところが著者の分析結果の貴重なところ。明快に指摘すると、ペルソナ・ノン・グラータに指名されて、訪中できなくなる?父親がいるから大丈夫?

 

 外相・王毅は、これを読んでどういう反応を示したのか、気になるところでもある。わかっても、沈黙を守るしかない。下手な反応をすると次が危うい。

 

 党の公式の対日認識とは別に、著者の定義に従えば、「民間社会」(党に帰属しない一般の人々)へのあまりの日本への好感を伴う影響力に、当然、中共党の保守派から反撥の牽制球が飛んだ。改革・開放の主導者・鄧小平は「走日派」と見られないための護符として、85年に幻の南京大虐殺博物館名の揮毫をする。踏み絵であった。このあたりの反動現象には、中南海の対日スジに刺激を与えてはまずいと判断したのか、著者は強いて触れていない。

 

 日本という存在が「民間社会」への深甚な影響力があるから、一方で日中友好を言い、他方で日本軍国主義復活があると演出し、愛国主義教育の虚偽に満ちた「歴史認識」を振りかざして、対日批判外交を展開する。このご都合外交に、歴代の日本政府は振り回されてきた。策なき日中友好派で済ます外務省のチャイナ・スクールの弊害もある。著者の父親もその負の一人だ。

 

 ご都合主義外交の中共党は、その傍ら、尖閣は自国領と法にまで記すところはしっかりしている。自党の主張の正当化を国内に向けて強調するために、領海、領空侵犯を繰り返す。自国領としての権利行使である。

 

 かくて、偉大なる「中華民族」の再興に不可欠と信じる軍拡の正当化は、国内での中共党支配の正当性の強調と表裏にある。そこで党への批判や「群体性事件」(局地的な民衆による暴動)を武装警察で抑圧する。こうした暴力装置の中心にいる軍は、中国という国家に帰属せずに、中共党の私軍なのである。

 

 政権交代が制度的に保証されている日本のような西側の住人から見ると、異様な体制である。著者は、異様を存続させるために軍拡を不可避とするメカニズムを、紅軍や「人民解放軍」の建軍当初から、これでもかこれでもかと明らかにする。多分、これらの視点はいわゆる中国ウオッチャーにとっては自明の事柄なのであろう。だが、非専門家たちである読者に、ここまで明らかに説得力をもって示したこの著作に相当するものは、これまでなかったのではないか。

 

 ここで、問題。中共党は存続を課題とする限り、軍拡の力学に邁進するしか選択肢が無いのは、この著作でよくわかる。

 だが、2015年に出たM・ピルズベリーの『百年マラソン』(訳題「CHINA 2049」)の視点を援用するならば、軍拡の一方で党中央宣伝部の一兆円に及ぶと見られる情報宣伝工作でのソフト面の戦争(超限戦)の凄さは、なぜか著者の対象には入らなかった模様である。日本への実害は、こちらの分野である。意図して取り上げないとしたら、タブー視しているのか。

 

 中共党のハード・ソフトを組み合わせた「戦争」は、古典の孫子に負うように、シナ人伝来のもので、余人には窺いしれない深いものがある。そうした文明的な視野を組み入れて、この著作を読むと、とくに「おわりに」での提起には、えらい隣人を持ったものだと、改めて沈思黙考せざるを得ない。多少とも日本の将来を危惧しているとしたら、必読の労作と思う。ここまで平明に主題を明らかにしてくれた著者に感謝する。2017年刊

トランプは3人のコリア系米人が解放されたのに、本当に感謝すると言ったのか

 日本の報道媒体はフェイクが通例なので、半信半疑なのだが、表題のよう な発言したのか。

 もししたとしたら、明らかにおかしい。

 北が不当逮捕して、政治裁判で有罪にした。

 

 今度は、釈放して、トランプに媚びを売ったかたちだ。

 強い相手には媚びる、それがコリアンの習性である。

 

 習近平は、大連にまででかけて行き、金正恩を助けた。

 最初に列車で北京訪問したさい、帰路にその列車が爆破される機会を活かさなかった。

 習は、致命的なミスをしたように見える。

 

 日本の報道媒体に登場する専門家や形容しがたいコメンテーターは、日本は置いてけぼりと言うが、ホントかいな。

 安倍首相の立場は、トランプの交渉が有利に進めば進むだけ、平行して有利になる。

 それがわからないでコメントをするのは莫迦だ。

中国・外相王毅は北朝鮮を訪問して、半島の非核化を主張した背景で見落とされているもの

 日本の報道媒体の限界をかねがね指摘してきたが、相変わらず。

 王毅は5月3日に、平壌で金委員長になぜ「半島の非核化」を主張したのか。

 

 今夜のBS朝日:18:00からの「激論クロスファイア」、19:00からの「日曜スクープ」に、いわゆる専門家が登場して、あれこれ卓説?を述べ立てる。だが、いくら聞いても釈然としない。

 そして、日本はかやの外に置かれているかの言い分までが覗える始末。

 

 視点がボケているとしか言えない。

 なぜ、ボケるのか。

 日本の安全保障はどうするか、への真剣な問いかけを我が身にしない専門家たちなのだ。

 呑気なトーさんなのである。

 

 この責任は、番組の製作者たちにあるのだろう。思考停止に陥っているから。

 番組「激論クロスファイア」に至っては、田原はすでに脳軟化症を呈している。デス・クロスファイアである。

 

 中国にとっての最悪のケースは、北朝鮮が核に固執し続けると、日本から「核武装」の声が公然と生じる事態になることだ。

 半島の非核化という主題にある隠れた最大問題は、日本の核武装というシナリオが想定されてくること。