記憶喪失になったぼくが見た世界 | つれづれログ

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色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

記憶喪失になったぼくが見た世界 (朝日文庫)/坪倉優介
¥588
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18歳の美大生が交通事故で記憶喪失になる。

それは自身のことだけでなく、食べる、眠るなどの感覚さえ
分からなくなるという状態だった―。

そんな彼が徐々に周囲を理解し「新しい自分」を生き始め、
草木染職人として独立するまでを綴った手記。

感動のノンフィクション。

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前回のブログが4月初め…。

月日が経つのは本当に早い。
忙しいと特に。
まだまだ忙しい毎日だけど、またボチボチと書いていこうと思う。



本作を知ったのは新聞の広告欄。
リアルな記憶喪失の体験という物に興味を惹かれて読んでみた。

創作物なんかでありがちな記憶喪失の人物。
物語の演出を考えると、便利な設定だ。

そんな彼らが失っているのは記憶の一部である事がほとんど。
それに対して事故直後の坪倉さんは、上記のあらすじに
ある通り、ほとんど全ての記憶がリセットされてしまった状態だった。

身体は大人、中身は子供という言わば逆コナン状態…。
作中には坪倉さんのお母さんの記録も記してあるが、ご家族の方の
苦労はそれはもう大変な物だっただろう。

そんな状態から様々な事を、文字通り0から学び直した坪倉さん。
フィクションのように、失った過去の記憶を完全に取り戻す事は
なかったけれど、芸術家になるという未来を作る事は出来た。


坪倉さんの知人は言う。
事故の前後で記憶が無くなっただけでなく、人まで変わってしまったと。

ちょっと考えてみれば、過去の経験の積み重ねがその人物を
構築するものだから、当たり前の事とも言えるだろう。

そう考えると、よく言われているように、経験というものが人に与える
影響は本当に大きい。

楽しい事や悲しい事、嬉しいことや苦しい事を経験する度に、
人は成長していく。

アラサーである僕も、歳をとる事について悲観する気持ちが
分かるようになってきてしまった(汗)。
しかし、それはあくまでも肉体的な衰えに対して。
様々な経験を重ねた精神面での加齢は、素晴らしい財産だと思う。

まぁ、無邪気さや未知の物への感動など、中には失う物もある訳で
それはそれで少し寂しい事ではあるけど…。

事故直後の坪倉さんの独特の感性はまさにそれに由来している。
概念に囚われない感覚と言えば良いのか。


坪倉さんが立派に社会復帰出来たのも、事故後の様々な
経験の結果、0から坪倉優介という人物を創り上げたから。
言うまでも無く、周りの温かいサポートもあった上で。

人は経験する事で変わっていく。
良くも悪くも。

新しい事、慣れない事をするにはたくさんのエネルギーが必要。
それに比べれば、現状を維持していくのは楽な事ではある。
惰性とも言える。

だから現状から踏み出すという選択には勇気が必要だ。
現状が安定している場合は特に。
今の僕はそんな感じ。

だけど人には成長の欲求がある。
5年後、10年後に今の自分を振り返った時、あの時の
自分なんて、まだまだ未熟だったなと思えるくらい成長していたい。

そんな感じで、今後の自分がより良い方向に成長出来るよう、
色々な事を経験していきたいと思った。