- シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)/有川 浩
- ¥641
- Amazon.co.jp
「2年間で、劇団の収益から300万を返せ。
できない場合は劇団を潰せ」
―鉄血宰相・春川司が出した厳しい条件に向け、
新メンバーで走り出した『シアター フラッグ』。
社会的には駄目な人間の集まりだが、
協力することで辛うじて乗り切る日々が続いていた。
しかし、借金返済のため団結しかけていたメンバーに
まさかの亀裂が!
それぞれの悩みを発端として数々の問題が勃発。
旧メンバーとの確執も加わり、新たな危機に直面する。
そんな中、主宰・春川巧にも問題が…。
どうなる『シアターフラッグ』!?
書き下ろし。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「シアター!」は是非続編を読みたいと思っていた作品。
そんな期待に応えてくれる形で続編が発表されて本当に嬉しかった。
前作に引き続き、登場人物が魅力的。
ちょっと影が薄かった印象のメンバーについても、きちんと
スポットライトが当てられていて非常にイイ感じ。
それによってシアターフラッグへの愛着が深まっていくもんなぁ。
作者のそういう配慮って素晴らしい。
お気に入りキャラである司は相変わらずカッコいい。
メンバーに対しての厳しさ、時折見せる優しさはまるで担任の先生。
そして優秀な営業の手腕、さすがです。
メンバーの黒川も言ってたように、男も惚れる男、それが司。
そんな一見完璧男である司だけど、今回は人間臭い側面が
表現されている印象。
過去の失敗の経験や、家族との関係性などなど。
そんな掘り下げ具合がとても良い。
恋愛的要素も増えたように感じる。
本筋に対して、恋愛的な要素が邪魔臭く思えてしまう作品って
少なくないけれども、この作品に関してはそんな事はまるでない。
きっと各メンバーに愛着を感じる事が出来るからだと思う。
描写も大人で爽やかだし。
芝居に取り込む姿勢は人それぞれ。
でも皆が芝居に対して、真剣に取り組んでいる様は良いなぁ。
夢とか目標のため、努力する人の姿って素晴らしい。
高みを目指して成長する人って美しい。
そんな事を感じた。
僕自身、最近忙しくて目の前の仕事をこなすだけで精一杯という
感じだったけれども、仕事に対する情熱のような物を思い出させて
くれた。
あとがきの有川さんの物語の書き方、面白い。
当時人物に勝手に動いてもらってそれを書くという。
物語を作り出すというよりは、イメージの中の世界をそのまま
描写しているような感じなのだろうか。
もう1作、完結編が作られるそうで。
もう1作読めるという喜びと、もう1作しか読めないという寂しさが
混ざった心境ではあるけれども、とにかく楽しみだ。