陽気なギャングが地球を回す | つれづれログ

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陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)/伊坂 幸太郎
¥660
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嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。
この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった…はずが、
思わぬ誤算が。
せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の
現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!
奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。
映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス。

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表紙のインパクトが凄い!
伊坂作品の表紙はクールなものが多い印象だけど、これはw
だけど中身はしっかりとした伊坂テイストな作品。

4人のクールでプロフェッショナルな銀行強盗達の活躍を描いた物語。

彼らの銀行を襲う手口は実に鮮やか。
細かな下調べをし計画を練った後、実行。

銀行に入った後は演説の達人が演説中に金を奪い、
通報される前に脱出。
体内時計の女がその圧倒的な時間の感覚と、運転テクニックで
一目散に逃走するといった具合。

必要とあれば威嚇射撃もするけど、人は傷つけないし乱暴な言動で
脅すこともしない。

金を取られた銀行も保険が降りるから、誰も損をしない…らしい。

普通に犯罪だし、その場に居合わせた銀行の利用者や行員は
恐怖からPTSDになる可能性だってある訳だから、彼らの行動が
正しい訳では決して無い。

まぁ、創作にそういった意見は無粋だね。
多少ダークなヒーローなんて山ほどいるものだし。

4人の中でも最も主役格であるウソ発見器公務員の成瀬。
凄く気に入った人物。

演説の達人であり、ボクシングインターハイBEST4の実力を持つ
成瀬と古くから付き合いのある男、響野は彼について、世の中に
ついての解説書を読んでいると表現する。

それくらいしたたかで、冷静な人物が成瀬だ。

クライマックスでピンチに立たされたかと思うと、用意していた
2重、3重の仕掛けでそれをすり抜ける様は華麗で見事!

ウソを見抜くという特殊能力はともかく、成瀬のような冷静さ、
したたかさを持った中年になりたいものだ。

他の作品同様、伏線が効いていて、読んでいて愉快だった。
ここでソレが来たか!って感じ。
たまらんw

巻末の解説で伊坂さんは、書いた作品を何度も書きなおす作家だと
書かれていた。

なるほど~。
話が洗練されているし、仕掛けも効いている。
それはそういった作品作りのプロセスの賜物なんだなぁ。

しかもソフトウェア関係の仕事をしていたという。
同業者としては、ちょっとした親近感を覚えた。

そう言えば「オーデュボンの祈り」の主人公もエンジニアだったっけ。
ソフトウェア開発における心境も、実体験からくるものだったんだなぁ。

職業としては、どちらかと言うと理系に分類される仕事だけど、
伊坂さんや東野圭吾さんみたいに、理系作家の書く物語は、
僕の性に合っている気がする。

だからと言って、自分に小説が書けるとは全く思えないけどw

現在、続編の「陽気なギャングの日常と襲撃」を読んでる途中。
これも面白い作品。

伊坂作品が初めての人にもオススメの一冊。