第79回 代表曲と売れた曲は一致するのか

 

酒井法子

 

のりピー語を使って話題を集めた正統派のど真ん中のアイドル時代、アイドルとしての人気が下降してから不死鳥のように蘇った時代、そして突然の結婚から、世を騒がした例の事件と、波乱万丈の芸能界人生を送ってきたのりピーの歌手としての実績を追ってみます。

 

【王道の可愛い系アイドル路線を模索】  1987年

「男のコになりたい」「渚のファンタシィ」「ノ・レ・な・いTeenage」「夢冒険」

デビュー前からテレビ雑誌で積極的に露出され、デビュー曲からオリコン6位とこの上ないスタートを切った酒井法子は、2曲目以降もトップ10入りを継続と、順調なデビュー年となりました。のりピー語に象徴されるような、どこか作られたような可愛さが個性となり、デビューの年はそのキャラクターにあった等身大の楽曲が選ばれ、そのあとの路線を探っているような雰囲気はありました。「夢冒険」は甲子園の入場曲に使われましたね。

 

【元気な応援ソングに活路を見出す】  1988~1989年

「GUANBARE」「1億のスマイル」「HAPPY AGAIN」「ホンキをだして」等

1988年に入ると、聴いている若者たちの背中を押して元気づけるような作品に活路を見出したかのように、「GUANBARE」「1億のスマイル」「HAPPY AGAIN」「ホンキをだして」と似た路線のシングルが続きます。この時代の作品群が、ある意味アイドル歌手としての酒井法子を象徴するものだったように、個人的には感じています。一方でこの頃のイメージが酒井法子=明るく笑顔で元気で純粋的なイメージが、例の事件があったとくに、余計にギャップとなってショックを増長させ、その後の復帰に対しても邪魔をしているようなところがあるようにも思ってます。セールス面でいうと、一定のファンのおかげで初動はオリコンの上位には当たり前のように入ってくるのですが、トータルセールスでは伸びないということで、10万枚の壁をなかなか超えられないままの時代が続きました。

 

【ちょっとだけ大人の恋の歌にも着手】  1989年

「おとぎの国のBirthday」「Love Letter」「さよならを過ぎて」「All Right」

応援ソング路線に一区切りをつけると、少しだけ大人のリアルな恋愛の歌にも着手し、「Love Letter」「さよならを過ぎて」といった、せつない系の歌で新たな一面を見せるようにもなっていきます。ただセールス的には相変わらず10万の壁が存在し、いまひとつ突き抜けたヒットがないまま、きっかけを探しているようなそんな状態にも見えました。

 

【優しく包み込むような母性を感じる作品群】  1990~1991年

「幸福なんてほしくないわ」「ダイヤモンド☆ブルー」

「微笑みを見つけた」「イヴの卵」「あなたに天使が見える時」

セールス的にはトップ10にギリギリ入るかどうか、枚数的には5万枚前後というぐらいの感じになってきますが、年も重ねてお姉さんになっていくと、どこか母性で包み込むような優しい楽曲が増えてきます。歌手としてどう年を重ねていくのか、ひとつの方向性のようなものを見つけたかったような気はします。

 

【アイドルとしての人気が下降し路線が定まらない悪循環】  1991~1995年

「モンタージュ」「軽い気持ちのジュリア」「涙のピテカントロプス」「たぶんタブー」他

この頃になるとセールスもトップ10圏外からさらにトップ20圏外へと落ちていき、アイドル歌手としての寿命を迎えたような動きになっていきます。シングルのタイトルを見ても、なんとかタイトルで引き付けようという、どこかさまよっているような印象さえ与えて、長期低迷状態へと陥っていくのでした。

 

【女優人気と併せて見事に復活】  1995~1997年

「碧いうさぎ」「Here I am〜泣きたい時は泣けばいい〜」

「鏡のドレス」「涙色」

この頃になると女優としての活躍の方が際立ってきていて、1993年の「ひとつ屋根の下」は大いに話題になり、そして1995年の「星の金貨」のテーマソングに起用された「碧いうさぎ」がもう少しでミリオンセラーという大ヒット。長期低迷状態から突然の復活どころか、キャリアハイとなる売上を上げることになります。そしてアイドルとして全盛期にも叶わなかった紅白出場を果たすと、その続編のテーマソング「鏡のドレス」もヒットと、ここに及んで歌手としてのピークを迎えたのでした。

 

【再び低迷状態に】  1998~2000年

「横顔」「PURE」「WORDS OF LOVE」「miracle」

しかししながら歌手デビューして10年を過ぎたこの時期になると、歌手としては再び低迷状態に陥り、ほぼ女優業中心の芸能生活へとシフトしていくことになりました。

 

■売上枚数 ベスト5   

1 碧いうさぎ 99.7万枚

2 鏡のドレス 44.7万枚

3 涙色 11.8万枚

4 ホンキをだして 9.8万枚

5 1億のスマイル

  Love Letter 9.1万枚

アイドル真っ盛りの曲ではなく、上位3曲は復活後の3曲になっています。これは、ひとつは音楽業界全体の勢いがある頃とそうでない頃に出したシングルということもありますが、アイドル時代は、特定のファンに支持されてはいても、そこからなかなか広がらずに、枚数が伸びなかったという要素が大きいでしょう。

 

 

■最高順位 

2位 …  1億のスマイル 

4位 …   渚のファンタシィ、ノ・レ・な・いTeen-age、夢冒険、

      HAPPY AGAIN、ホンキをだして

2位を獲得したのが1曲で、あとは4位が6曲という結果です。しかもこれはすべて前半の作品で、特定のファンが発売と同時に購入して初動順位が高かったということで、しかし2週目以降に広がりがなく、枚数的には苦戦。むしろテレビ番組を通じてじわじわと広がった後半の作品は、最高順位こそさほどではなくても、長く売れて枚数を重ねたということになるでしょう。

 

■代表曲

1 碧いうさぎ

2 夢冒険

3 鏡のドレス

認知度という点や実績からして、「碧いうさぎ」が圧倒的に1位になりそうです。甲子園の入場曲に使われた「夢冒険」と2番目に売れた「鏡のドレス」が次点でしょうか。

 

 

■好きな曲 ベスト5

1 あなたに天使が見える時

2 Love Letter

3 GUANBARE

4 涙色

5 1億のスマイル

「あなたに天使が見える時」は名曲でしょ、と思っているのですが、この曲で続けていたトップ10入りの連続記録が途切れてしまったのですよね。「Love Letter」の切なげな感じも捨てがたく、また応援ソング系では「GUANBARE」の春らしいポップな感じも好き。「涙色」は河村隆一の作家としての能力にひかれました。

 

セールス的には圧倒的に「碧いうさぎ」ですし、酒井法子の過去の歌の映像で使われるのもほぼこの曲。アイドル時代の曲は順位は高いけれど、枚数がいかないというのが致命的で

結論:圧倒的に一番売れた曲が圧倒的な代表曲