第81回 代表曲と売れた曲は一致するのか
さだまさし
フォーク界の重鎮的存在のさだまさしを取り上げます。なんといっても独特の詩の世界が多くのファンを引き付けるアーティストで、コミカルなものから人生を綴るシリアスなもの、社会的メッセージの込められたものなど、硬軟自在の歌詞で、多くのヒット曲を送り出しました。
【ソロとしても好調なスタート】 1976~1978年
「線香花火」「雨やどり」「吸殻の風景」「案山子」「桃花源」「檸檬」
グレープとして「精霊流し」「無縁坂」といったヒットを出したあと解散となり、今度はソロ歌手としてデビューしたさだまさし。そしてその第2弾「雨やどり」がオリコン1位を獲得。ソロとしても順調なスタートとなりました。この時期の作品はタイトルがみな短く、素朴で身近な題材を歌った作品が多かったのですが、その中でも「雨やどり」はユーモアの要素が大きく、聴いていてくすりと笑いたくなるような歌でした。「精霊流し」などの暗いイメージとは違う面が受けて、ヒットにつながったのでしょう。
【大ヒット連発】 1979~1980年
「関白宣言」「親父の一番長い日」「道化師のソネット」「防人の詩」
売上面ではキャリアのピークにあったのがこの時期で、ヒット曲・話題曲を連発し絶頂期にあったといえるでしょう。まずは社会的なブームにもなった「関白宣言」は2度目の1位を獲得し、ミリオンセラーを達成。続く「親父の一番長い日」は12分30秒という曲の長さが話題になり、2曲連続の1位となりました。「道化師のソネット」「防人の詩」はともに映画の主題歌と、とにかく出す曲出す曲が話題に富んで、いずれも大ヒットとなったのでした。
【らしさ全開の安定期】 1981~1982年
「驛舎」「生生流転」「しあわせについて」「長崎小夜曲」
さすがにヒット連発の絶頂期がずっと続くというわけにはいかなかったものの、さだまさしらしい作品を次々に送り出して、セールス面でもトップ20、10万枚台を維持していたのがこの時期です。故郷を舞台にした「驛舎」「長崎小夜曲」、人生について歌った「生生流転」「しあわせについて」と、まさにさだまさしならではの歌詞の世界が繰り広げられていました。
【セールスがやや低迷】 1983~1985年
「退職の日」「望郷」「それぞれの旅」「寒北斗」「軽井沢ホテル」
それまで好調だったセールスが低下してきたのがこの頃。人生賛歌、望郷賛歌というパターンがやや飽きられてきていたのかもしれません。
【個性的な作品群】 1995~1987年
「恋愛症候群」「ONCE UPON A TIME」「春女苑」
「男は大きな河になれ」「風に立つライオン」
そんな中で久しぶりにコミカルな作風の「恋愛症候群」をリリースすると、オリコン11位、売上も10万枚超えと、セールスにも結び付きました。血液型別の恋愛占いみたいな面白い歌で、一般に受けがいいのは、こうしたコミカルな歌だったように思います。そのほかセールス的には伸びませんでしたが、後に映画にもなった「風に立つライオン」もリリースされています。
【独自の地位を確立】 1988年~
「時代はずれ」「建具屋カトーの決心」「冬の蝉」「長崎から」
「ヴァージン・ロード / 関白失脚」
これ以降はヒットチャート上位からは遠ざかっていきますが、他のアーティストでは替えられない存在感で、独自の地位を確立していくことになりました。
■売上枚数 ベスト5
1 関白宣言 122.7万枚
2 雨やどり 68.3万枚
3 親父の一番長い日 66.8万枚
4 防人の詩 56.4万枚
5 道化師のソネット 40.4万枚
1977~1980年に集中しており、大御所感のある息の長いアーティストではありますが、そのピークは特定の時期に偏っていたというのが実際のところです。その中でも社会的な話題にもなり、この時代を反映しているような「関白宣言」が圧倒的な売上枚数をあげています。
■最高順位
1位 … 雨やどり、関白宣言、親父の一番長い日
2位 … 道化師のソネット、防人の詩
じわじわ演歌型の作品が多いかと思いきや、1位が3曲、2位が2曲と、瞬発力も備えたヒット曲も意外に多く放っています。売上枚数とも完全にリンクしていて、わりと素直でわかりやすい結果になっています。
■代表曲
1 関白宣言
2 北の国から~遥かなる大地より~
3 雨やどり
「北の国から」は実質B面(北面)扱いなのですが、今となってはA面だった「長崎小夜曲」よりも認知度が高いですからね。まあ、でも1位は「関白宣言」でしょうか。3位は迷いました。そのほか「案山子」「道化師のソネット」「風に立つライオン」も候補になりそうです。ただグレープ時代も含めれば「精霊流し」が入ってきそうかな。
■好きな曲 ベスト5
1 驛舎(えき)
2 長崎小夜曲
3 道化師のソネット
4 恋愛症候群
5 関白宣言
個人的には「驛舎」が大好きで、歌詞を読んでいるだけで、映画のワンシーンを観ているように情景が浮かんでくるのですよね。発売当時よりもあとになってじわじわと好きになっていった感じです。一方「長崎小夜曲」はさだまさしにしてはメロディーがポップで、発売当時から好きでした。「道化師のソネット」も美しいメロディーが好き。「恋愛症候群」は当時大学の受験勉強をしながら、深夜だけ聴こえた文化放送「セイ・ヤング」でよく流れていたのが懐かしいです。
確かに「関白宣言」を代表とする売上上位の曲たちは代表曲の1つでの間違いはないのですが、あまり売れていなかった曲にも、上に挙げたように代表曲的な存在になっている存在もあるようで
結論:売れた曲は代表曲といえるが、売れなかった曲にも代表曲はある




















