第57回 代表曲と売れた曲は一致するのか

 

吉川晃司

 

デビュー時からずっと、男性アーティストでは一番好きなアーティストです。デビュー時はアイドル的な売り出しがかかって、映画にも出たりして人気を博しましたが、次第にロッカーという言葉が似あうアーティストへ成長。布袋寅泰と組んだCOMLEX時代を挟んでソロに復帰。俳優としても時々活躍しながらも、今もそのかっこよさを維持しているのは凄いことだと思っています。

 

 

【アイドル的アプローチにより人気爆発】  1984年

「モニカ」「サヨナラは八月のララバイ」

「ラ・ヴィアンローズ」「No No サーキュレーション(12インチ)」

広島から飛び出してきたニューフェイスとして、デビュー曲からいきなりの大ヒット。最初の2曲がNOBODY、次の2曲を大沢誉志幸がそれぞれ作曲し、さわやか系のロックでデビュー年は勝負をかけました。そしてそれぞれがトップ10に入るなど、この時点で安定した人気を獲得したのです。映画にも出演したことで、デビュー時のプロモーションとしては、アイドル的なアプローチの印象が強めではありました。

 

【徐々にロッカー志向が鮮明に】  1985~1986年

「You Gotta Chance 〜ダンスで夏を抱きしめて〜」「にくまれそうなNEWフェイス」

「RAIN-DANCEがきこえる」「キャンドルの瞳」

再びNOBODYによるカッコいい曲「You Gotta Chance」と「にくまれそうなNEWフェイス」がオリコン1位を獲得し、その人気をがっちりとつかみきったところで、新しい挑戦をしてきたなという印象を与える「RAIN-DANCEがきこえる」。やや売れ線から外れた大人っぽい曲で、少しずつ本人の望むアーティスト路線へと舵をきってきたというような時期ではなかったでしょうか。

 

【自作曲へシフト】  1986~1988年

「MORERN TIME」「NERVOUS VENUS」「すべてはこの夜に」「MARILYNE」

「終わらないSun Set」「プリティ・デイト」

そして「MODERN TIME」からは自身の作詞作曲によるシングルを送り込むようになり、いよいよアーティスト吉川晃司が本格始動という形になっていきます。その間に佐野元春の作詞作曲で沢田研二が歌った「すべてはこの夜に」などの話題作もあり、コンスタントにシングルトップ10に送り込んではいくのですが、枚数的にはやや停滞。そして「プリティ・デイト」のあと、いったんソロとしての活動は停止して、布袋寅泰との伝説のユニットCOMPLEXを始動させるのでした。

 

【ソロとして再始動しセールスも再上昇】  1991~1993年

「Virgin Moon」「せつなさを殺せない」「ジェラシーを微笑みにかえて」

「Brain SUGAR-Mad Blade Mix-」「KISSに撃たれて眠りたい」

「VENUS 〜迷い子の未来〜」

布袋寅泰とは長く続くわけもなく、COMLEXが終了し、再びソロ活動を開始すると、さすが吉川晃司といったところをいきなり見せてくれます。トップ10にいきなり「Virgin Moon」を送り出すと、その後も出す曲出す曲をしっかりとトップ10へ送り込んでいきます。「KISSに撃たれて眠りたい」では、久しぶりに売上枚数が30万枚を超えるなど、第2のピークを迎えることになりました。これが吉川晃司だというスタイルが、COMPLEXを経て、この時期に確立した印象です。

 

【ヒットチャート上位ランカー常連として最後の時期に】  1994~1996年

「Rambling Rose」「BOY'S LIFE」「アクセル」「SPEED」「SHADOW BEAT」

最後のトップ10入りシングルが1996年の「SPEED」になり、ヒットチャート上位を賑わすのは、この頃までになります。この頃はしっかりと吉川晃司はこれだ!というものが確立されていたので、どの曲も吉川らしさにあふれ、安心して聴ける作品が並んでいました。

 

【大人のロックシンガーとして次のステージへ】 1997~1999年

「エロス」「RUNAWAY」「KEY 〜胸のドアを暴け〜」

「Glow In The Dark」「ギラギラ」

「エロス」を最後にセールスも10万枚を切るようになり、ヒットチャート上位からは退いていくことになりますが、かつてのアイドル青年も、すっかり大人のロッカーに様変わりして、渋い魅力を発揮してくれ続けているのは嬉しい限りです。

 

■売上枚数 ベスト5   

1 モニカ 33.9万枚

2 KISSに撃たれて眠りたい 33.6万枚

3 VENUS 〜迷い子の未来〜 33.4万枚

4 You Gotta Chance 〜ダンスで夏を抱きしめて〜 31.0万枚

5 にくまれそうなNEWフェイス 26.0万枚

微差ではありますが、結局のところデビュー曲「モニカ」が売上もナンバー1です。ただしCOMPLEXあとの2曲が、売上2位、3位になっていて、一時の勢いだけでなく、長期にわたってチャート上位で活躍していたことがここからうかがえます。

 

■最高順位 

1位 … You Gotta Chance、にくまれそうなNEWフェイス

2位 …  RAIN-DANCEがきこえる、キャンドルの瞳

3位 … VENUS

アイドル期の集大成的な2曲が1位を達成し、2位が2曲。ここまではCOMPLEX前ということで、特定のファンが一気に買っていたのでしょう。COMPLEX後では「VENUS」が3位に入っています。

 

■代表曲

1  モニカ

2  You Gotta Chance、KISSに撃たれて眠りたい

吉川晃司の代表曲というと、結局のところは圧倒的に「モニカ」になってしまいそうです。過去の映像で吉川晃司が紹介されるときの楽曲は、ほぼ「モニカ」ですからね。2位以下は混戦で、映画主題歌にもなって「You Gotta Chance」とか売上2位の「KISSに撃たれて眠りたい」あたりが候補になりそうです。しかし「サヨナラは八月のララバイ」「RAIN-DANCEがきこえる」「せつなさを殺せない」「VENUS 〜迷い子の未来〜」あたりをあげたい方もいららっしゃりそうです。

 

■好きな曲 ベスト5

1 ラ・ヴィアンローズ

2 すべてはこの夜に

3 アクセル

4 にくまれそうなNEWフェイス 

5  NERVOUS VENUS

冒頭で述べたように、吉川大好き人間なので、好きな曲もたくさんあるのですが、上位はこんな感じです。けだるさが心地よい「ラ・ヴィアンローズ」が一番、派手ではないけれどもシブくかっこいい「すべてはこの夜に」も大好き。「アクセル」はカラオケで歌うと気持ち良いですし、「にくまれそうなNEWフェイス」もよく歌いました。確かこの歌を歌った後で記憶をなくしてしまい、気づいて家で目覚めたときには、持っていたバッグがなくなっていることに気づいて大焦り(後日警察に届けられていました)といった思い出があります。

 

なんだかんだいって代表曲が「モニカ」でそれが一番売れたというのも事実。本当はほかにももっといい曲はたくさんあるのだということを、今の人にも知ってほしいのですが…

結論:一番売れた曲がやっぱり一番の代表曲