第36回 代表曲と売れた曲は一致するのか
尾崎豊
若くしてすでに同世代に対するカリスマ性を備えたアーティストでしたが、20代になると、10代の頃の作品のイメージに苦しみ、いろいろもがき続けた挙句の衝撃的な死で、伝説と化した唯一無二のアーティスト。さて尾崎のみんなが知っている作品は果たしてセールス面ではどうだったのでしょうか。
【新たな十代のカリスマ静かに現る】 1983~1984年
「15の夜」「十七歳の地図」「はじまりさえ歌えない」
今では知る人の多い「15の夜」「十七歳の地図」といった作品も、当初はまったく売れませんでした。作品の力がいくら強くても、知ってもらうところでのハードルがまず高いわけで、デビュー間もないころの売れなかった曲が、後から見いだされるなんてパターンは、杏里のときにもありましたが、このころの尾崎の作品はそんな感じです。
【いよいよ全国区へ】 1985年
「卒業」「DRIVING ALL NIGHT(12インチ)」
1985年の春、「卒業」というタイトルの作品が斉藤由貴、菊池桃子、倉沢淳美らによって次々にリリースされ、その話題性の中で尾崎の「卒業」もラジオでよくかかるようになってくると、その強烈な歌詞とあいまって、一気に尾崎豊の名前が知れ渡ります。大人や社会への反抗や自由への渇望を歌う彼の死は、特に10代の若者たちの共感を誘い、早くもカリスマ的存在になっていくのです。存在感としては、歌手尾崎豊のピークだったといえるかもしれません。「DRIVING ALL NIGHT」で初のトップ10入りを果たしました。
【逮捕からの再起】 1987~1989年
「核」「太陽の破片」
ところが作品作りに対して行き詰まったのか、覚せい剤に手を出して逮捕されてしまいます。そして復帰を果たした「核」そして「太陽の破片」といった楽曲は、10代の頃のテーマとは明らかに異なるものになっていて、20代の尾崎がどんなことを、歌を通じて訴えていくのか、この先に興味を抱かせるスケール感の大きな作品でした。
【20代の尾崎の進む道の模索】 1990~1991年
「LOVE WAY」「黄昏ゆく街で」「永遠の胸」「I LOVE YOU」
そこからの尾崎は、20代として何を歌っていくべきなのか、迷っているような感じを受けるところはありました。例えば「LOVE WAY」には10代の時とはまた違った種類の激しさを感じ、一方で「黄昏ゆく街で」では10代にはなかった包容力のようなものが伝わり、そしていきついたのが初期のアルバム曲の再リリース「I LOVE YOU」だったのです。なんとその焼き直しの曲が、それまでのどの曲よりも売れたわけですから、ほんとわかりません。ただ結局求められているのは10代の尾崎なのか、そんな思いもあったのではないでしょうか。
【衝撃の死により永遠のカリスマへ】 1992年~
「汚れた絆」「OH MY LITTLE GIRL」
1992年4月、カリスマの突然の死が世間を驚かせました。享年26歳。結果として、26歳の姿のまま、尾崎はそれ以上年を取ることなく、人々の心の中に残り、それゆえに伝説的存在となったともいえるでしょう。そしてなんと死後約2年に経ってリリースした「OH MY LITTLE GIRL」が初のシングルチャート1位を獲得し、さらにミリオンセラーも達成ということで、ここでも伝説的な偉業を達成したのでした。
■売上枚数 ベスト5
1 OH MY LITTLE GIRL 107.8万枚
2 I LOVE YOU 48.4万枚
3 太陽の破片(12インチ) 25.2万枚
4 核(12インチ) 18.8万枚
5 汚れた絆 13.7万枚
死後にリリースした「OH MY LITTLE GIRL」が最大のヒットとなりましたが、もともとは初期のアルバム収録曲で、あまり日の目を見ていなかった作品。それが10年以上経ってスポットが当たり、ミリオンセラーに。「I LOVE YOU」のヒットは生前ですが、これもアルバムの一曲として世に出た後時間を経てリカットされた作品。これら、後になってシングルカットされた2曲が圧倒的に売れています。
■最高順位
1位 … OH MY LITTLE GIRL
2位 … 核(12インチ)、LOVE WAY
唯一の1位獲得曲が死後にリリースされた「OH MY LITTLE GIRL」ということで、次が2位の2曲。こちらは20代になってからの作品。
■代表曲
1 I LOVE YOU
2 15の夜
卒業
OH MY LITTLE GIRL
一曲となると「I LOVE YOU」になりそうです。尾崎豊の紹介などでバックで使われるのは、この曲が多いような気はしますし、歌われるのも一番多い気がします。次点となると、初期に鮮烈なイメージを与えた「15の夜」、世に広がるきっかけとなった「卒業」、一番売れた「OH MY LITTLE GIRL」あたりになりそうですが、甲乙つけ難いです。
■好きな曲 ベスト5
1 LOVE WAY
2 卒業
3 OH MY LITTLE GIRL
番外 失くした1/2
こんな感じで、あまり存在としては目立たない曲ですが、曲調的には激しい「LOVE WAY」が好きです。
「15の夜」「十七歳の地図」「卒業」といった尾崎を象徴する初期の作品がセールス的には厳しかったので、のちにリカットされた「I LOVE YOU」「OH MY LITTLE GIRL」は売れましたが、必ずしもセールスどおりというわけではないのですよね
結論:尾崎を語るには売れなかった初期の作品を代表曲として外すわけにはいかないでしょう