第36回 代表曲と売れた曲は一致するのか
荻野目洋子
バブリーダンスで近年再注目され、キャリア的にも再浮上した印象のある荻野目ちゃん(アイドルに対して苗字にちゃん付けのニックネームも目新しかった)。それをきっかけに若い層にも認知されるようになったところはあるでしょう。紅白歌合戦にも5回出場と、1回も出場していない南野陽子、浅香唯、本田美奈子らに比べてNHKに好かれていたのでしょうか、確かに優等生的で品行方正な印象がありますね。でも最初に売れるまでは結構苦労はしました。そんなセールスの推移と代表曲との相関はどうなのでしょうか。
【売れるための試行錯誤期】 1984~1985年
「未来航海」「さよならから始まる物語」「ディセンバー・メモリー」
「無国籍ロマンス」「恋してカリビアン」
先に女優として世に出ていた荻野目慶子の妹ということで、話題性では優位性をもってのデビューとなりましたが、チャートでは30位前後が続き、どうしたら上位に行けるのか、試行錯誤のようなものが感じられる初期の作品群でした。作詞も作曲も作品ごとに違う作家を起用していますが、荻野目洋子らしさをどう見せていくのか、サラリとした彼女の歌唱には初期の作品がうまくはまらなかったみたいです。そこで5曲目「恋してカリビアン」で“陽”の方向へガラリと転換、西武ライオンズの秋山選手の応援歌にも使われ、耳にすることも多かった曲ですが、売上的にはもう一息といったところでした。
【兆し、そして大ブレイク】 1985年
「心のままに」「ダンシング・ヒーロー」
そんな中、ちょっと風向きが変わってきたかなと思わせたのが「心のままに」で、こちらは前作から一転、“陰”の要素が強いしっかり聴かせるタイプの曲でしたが、これか初のトップ20入りと、上昇の兆しをみせます。そしてさらに手を変えての洋楽のカバー曲「ダンシング・ヒーロー」でついに大爆発したのです。ユーロビート系のディスコミュージックが上り調子の時代的背景も手伝い、見事に荻野目洋子にはまったということでしょう。
【バブリーなダンスナンバー路線で人気絶頂】 1986~1987年
「フラミンゴinパラダイス」「Dance Beatは夜明けまで」「六本木純情派」「湾岸太陽族」
「ダンシング・ヒーロー」のヒットで攻めどころが明確になったのか、ここからしばらくは、ダンスナンバーが続きます。時代はまさにバブル絶頂に向かって突き進んでいこうかという時代、タイトルにも“パラダイス”“六本木”“湾岸”といったいかにもバブリーなワードが使われ、それが荻野目洋子の個性となって、歌手としての絶頂期を迎えていたのでした。
【作品のテイストを広げてシンガーとして成長】 1987~1988年
「さよならの果実たち」「北風のキャロル」「ストレンジャーtonight」
「スターダスト・ドリーム」「Dear コバルトの彼方へ」
そうはいってもいつまでもダンス路線では飽きられるし成長もないということなのかどうか、「さよならの果実たち」「北風のキャロル」と少し雰囲気の違う作品を選び、また2曲ほどダンス路線に戻った後、落ち着いた雰囲気の「Dear」と、作品の幅を広げようとしている意図を感じる時期でした。そしてその中でもチャートの1位、2位を確実に確保、売上も10万枚以上を死守し、まさに安定の荻野目ちゃんといった印象でした。
【アイドルとしては徐々にピークアウト】 1989~1990年
「ヴァージ・オブ・ラヴ」「湘南ハートブレイク」「ユア・マイ・ライフ」「ギャラリー」
「少年の瞳に…」
しかし「ヴァージ・オブ・ラヴ」から売上枚数が10万枚を割るようになり、さらに「ユア・マイ・ライフ」を最後にシングルチャートのトップ10から遠ざかっていくことになり、いよいよアイドルとしての賞味期限がやってきたという雰囲気になってきました。それとともに歌も難しいものになっていき、いよいよ歌手としては方向転換を強いられていく時期になってきたのがこの時期でした。
【脱アイドルの個性的作品で再び上昇】 1991~1992年
「美女と野獣」「ねえ」「STEAL YOUR LOVE」「コーヒー・ルンバ」
ところがここから一直線に落ちていかなかったのがすごいところで、「ねえ」で再び20万枚の壁を超えると、3曲連続して10万枚越えを果たします。いずれもトップ10には入っていませんので、以前のように発売と同時に枚数を売ってというアイドル的な売れ方ではなく、楽曲の力でじわじわと枚数を重ねていって積み上げた結果で、なかなかの粘りをみせた時期でした。
【大人のシンガーとして次の段階へ】 1992年~
「ロマンティックに愛して」「夢見るPLANET」「ロマンセ」「明日は晴れる!」など
しかしながら粘りもここまでといったところで、ヒットチャート戦線からは以後遠ざかっていき、バブリーダンスでスポットが当たるまでは、歌手としての活動は目立たない感じにはなっていきました。
■売上枚数 ベスト5
1 ダンシング・ヒーロー 32.4万枚
2 六本木純情派 26.1万枚
3 ねえ 20.6万枚
4 コーヒー・ルンバ 17.1万枚
5 湾岸太陽族 16.2万枚
1位、2位はやっぱりねといった2曲になっていますが、アイドルとして一旦ピークアウトした後の「ねえ」「コーヒー・ルンバ」が3位、4位と大健闘しているのが、かなり意外な印象を持ちました。
■最高順位
1位 … さよならの果実たち、ストレンジャーtonight、スターダスト・ドリーム
2位 … 北風のキャロル、DEAR
1位を3曲、2位を2曲が獲得していますが、その5曲いずれも売上枚数の5位以内に入っていないのが実に特徴的。チャートでの最高順位と売上枚数がほとんどリンクしていないという、不思議な結果に…。確かに1位になった3曲は、意外なラインアップのようにも思えます。
■代表曲
1 ダンシング・ヒーロー
2 六本木純情派
3 コーヒー・ルンバ
1曲はというと断トツで「ダンシング・ヒーロー」であることには間違いないでしょう。次点は長い間チャート上位にいた「六本木純情派」、そして脱アイドル期からは(個人的には不本意ですが)カバー曲「コーヒー・ルンバ」というところでしょうか。
■好きな曲 ベスト5
1 フラミンゴinパラダイス
2 心のままに
3 湾岸太陽族
私の好みとしてはこんな感じです。
「ダンシング・ヒーロー」が一番売れていますし、「六本木純情派」も次に売れているということで
結論:枚数で売れた曲がほぼそのまま代表曲