第35回 80年代後半の美少女ブーム、歌手としての格付けは?
後藤久美子 小川範子 坂上香織 藤谷美紀
後藤久美子の出現をきっかけに巻き起こった美少女ブーム。ローティーンの少女たちが次々に現れて歌手デビューを果たし、ヒットチャートの上位を賑わせました。そんな中の代表的な4人をピックアップし、歌手としては誰が格上になるのか、考えてみました。
【後藤久美子】
すべての始まりはこの人。“ゴクミ”の愛称で芸能界の話題を独り占めしていた感もあり、モデルや女優として活躍しましたが、少しでも売れるかと思われれば歌を歌わされた時代。デビュー時点ではまだ12歳(すぐに13歳になりましたが)ということで、いきなりチャート3位に初登場しました。ただご本人はあまり歌に興味がなかったのでしょう、シングルたった2曲だけで終わってしまいました。楽曲的にもちょっと地味だったかもしれませんね。その後の人生はまさに型に縛られない自由な生き方をしている印象ですが、数年前久しぶりに映画で姿を見たときは、ちょっとした感動を覚えました。
【小川範子】
子役時代から芸能界で活躍していましたが、後藤久美子によって巻き起こった美少女ブームの中でスポットが当たり、14歳で歌手デビューとなったわけです。今回の4人の中では最も歌唱力が高く、しかしその歌唱力ゆえにアイドルらしいかわいい歌というよりも、じっくり聴かせる歌を歌わされたことが、果たしてよかったのかよくなかったのか。ブーム終了後は女優として活躍していましたが、結婚していつのまにか表に姿を出さなくなってしまったのはかなり残念。個人的には4人の中で一番(断トツで)好きでした。好きな曲は「永遠のうたたね」です。
【坂上香織】
ドラマなどでちょくちょく活躍し、美少女ブームの中で注目され、14歳で歌手デビューを果たしました。なぜかこの美少女たちの歌はみんな、明るいポップな曲ではなく、陰のある暗い歌ばかりで、坂上香織のデビュー曲「レースのカーディガン」もちょっと暗くおとなしめの作品でした。彼女のその後もまた特徴的で、美少女ブームの後の停滞感からなのかセクシー路線へと舵をとっていき、ヌード写真集まで発売し話題にもなりました。
【藤谷美紀】
この4人の中では後発になりますが、第1回「全日本国民的美少女コンテスト」のグランプリを引っ提げて14歳で歌手デビュー。美少女ブームの中で、文字通り美少女中の美少女というタイトルをもってのデビューということで、期待も大きかったのでしょうが、歌手としてはデビュー時がピークとなってしまいました。それでも4人の中では一番アイドルらしい楽曲を歌っていたのは藤谷美紀だったといえるでしょう。またその後の歩みを見たときに、今回の4人の中では、一番地道にコツコツと女優業を続けてきているのが藤谷美紀になるでしょう。その意味では良くも悪くも正統派という感じですね。それにしてもそれぞれ四者四様の芸能人生で、同じ時期に同じ美少女のくくりの中で売り出されながらも、まったく異なっているのが面白いです。
■売上枚数 ベスト3
1 teardrop 後藤久美子 7.3万枚
2 レースのカーディガン 坂上香織 7.2万枚
3 転校生 藤谷美紀 6.2万枚
4 こわれる 小川範子 5.8万枚
5 ガラスの目隠し 小川範子 5.7万枚
上位4曲を4人で見事に分け合っていますし、枚数自体も似たり寄ったり。そして一番下位の4位だった小川範子が5位ということで、そこまで踏まえるとほぼ横一線といった感じです。その中でも先陣を切った元祖美少女後藤久美子のデビュー曲が1位ということでした。
■最高順位
3位 teardrop 後藤久美子
6位 こわれる 小川範子、ガラスの目隠し 小川範子
7位 レースのカーディガン 坂上香織、赤いポシェット 坂上香織
後藤久美子がやはりその話題性から発売1週目に3位になったのが最高順位でした。ここに出てこなかった藤谷美紀も10位には入っています。
■トップ10入り曲数
1位 小川範子 5曲
2位 坂上香織 3曲
3位 後藤久美子 2曲
4位 藤谷美紀 1曲
ここでは小川範子が優勢。人気の持続度という点では最も健闘したということになるでしょうか。ただ後藤久美子は発売した作品自体が2曲だけですから、これが精いっぱいなのですが…
■トータルセールス
1位 小川範子 42.3万枚
2位 坂上香織 21.4万枚
3位 藤谷美紀 14.7万枚
4位 後藤久美子 10.7万枚
歌手として比較的長く活動を続けていた小川範子が、2位にWスコアの大差をつけてトップです。
瞬発力をとるのか、歌手としての持続力をとるのか、それぞれ優位な箇所が難しいですが、今回はあくまでも歌手としての格付けですから、2曲しかリリースしていない後藤久美子を1位にするのは少しためらいがあります。長く歌手活動をしてトータル枚数やトップ10にランクインした曲数、さらには歌唱力も評価して1位は小川さん、次は最高3位を記録した後藤さんとトータルセールス2位の坂上さんかなぁ。芸能人としては1番長く活躍した藤谷さんですが、歌手としては実績的に4位でしょうか。
結論: 小川範子>後藤久美子=坂上香織>藤谷美紀