第34回 代表曲と売れた曲は一致するのか

岡村孝子

あみんとして「待つわ」が大ヒットするも、その後デュオを解消し、ソロアーティストとして再スタートを切った直後はなかなか売り上げも伸びず苦労しましたが、少しずつ存在感をしめしていき、OLの教祖とまでいわれるまでになりました。今回その岡村孝子のイメージと実際の売上実績とのギャップの有無をみてみます。

 

【脱あみんからの方向性模索期】  1985~1986年

「風は海から」「今日も眠れない」「はぐれそうな天使」「夏の日の午後」

果たしてあみんの延長上で勝負するのか、岡村孝子個人としての独自性を出していくのか、そんなソロとしての方向性を探っているような作品群となっています。「風は海から」「今日も眠れない」はともに似たような感じの作品になっていますが、まずこれがソロ岡村孝子の名刺代わりといったところだったのでしょう。ただデビューとしては地味な印象はぬぐえない楽曲で、最初からヒットというわけにはいきませんでした。そんな中3rdシングルにもってきたのが、シングルでは稀有である“自身が作っていない”楽曲「はぐれそうな天使」。来生えつこ&たかおの作品で、これがそこそこ売れます。ただ曲調としては、やはり自身の曲とは違った雰囲気で、4thでまた自作に戻すのですが、セールス的にも落ちてしまい、どうしたら売れるのか模索が続きます。

 

【ソロ岡村孝子の確立期】  1987~1988年

「夢をあきらめないで」「迷路」「電車」「Believe」

このあたりでソロアーティスト岡村孝子としての基盤が確立されたように思います。というのも7月に発売されたアルバム「liberete」がアルバムチャートで5位とトップ10入りを果たし、いよいよソロとしても認められてきたという結果が見え始めたというのが大きいでしょう。シングルではまだ結果は出ていませんが、岡村孝子にとって重要な位置を占めるようになる「夢をあきらめないで」が発売されたのもこの時期になるのです。

 

【ソロ岡村孝子の深耕期】  1988~1990年

「TODAY」「クリスマスの夜」「青い風」「天使たちの時」「心の草原」

一般的に支持されだした岡村孝子たるものをさらに固めていったのがこの時期。シングルではトップ20に届くときも出てきて、だいぶ浸透してきた印象ですが、それ以上にアルバムでは1988年「SOLEIL」で1位を獲得すると、そこからは出すアルバムがことごとく1位を獲得する、人気アーティストの仲間入りを果たしたのです。あと欲しいのはシングルヒットだけという状況の中、OLの教祖ともいわれるようになっていくわけですね。

 

【シングルセールス好調期】  1991~1992年

「Good-Day」「ミストラル」「笑顔にはかなわない」「フォーエバー・ロマンス」

アルバムアーティストとしては地位を確立していた岡村孝子にとって、初のトップ10入りシングルとなったのが「Good-Day 〜思い出に変わるならば〜」でして、枚数でも10万枚に初めて届きます。そしてそこから3曲連続して10万枚と、シングルのセールス面においては、この時期がピークとなります。

 

【ソロ岡村孝子の維持継続期】  1993~1997年

「無敵のキャリア・ガール」「ハレルヤ」「山あり 谷あり」「ヒロイン」など

一旦は伸びた売上もこのころから再び下降してしまい、それでもコンスタントに新曲をリリースし続け、求められる岡村孝子像に答えながらも、次の展開を模索しているような、そんな時期だったのかもしれません。

 

【地道な活動期】 2000年~

「永遠の木もれ陽」「心のフレーム」など

1998~1999年は新曲がなく、21世紀以降は活動のペースが緩やかになっていきます。アルバムでのトップ10入りも2000年発売の「Reborn」が最後ということで、ヒットチャートの一線からは退いていく形にはなりましたが、結婚離婚や病気休養なども経ながら、現在まで地道に活動を続けているのはファンにとってはうれしいことではないでしょうか。

 

■売上枚数 ベスト5   

1 笑顔にはかなわない 13.9万枚

2 ミストラル -季節風- 10.3万枚

3 Good-Day 〜思い出に変わるならば〜 10.0万枚

4 天使たちの時 〜Time of the Angels〜 7.4万枚

5 フォーエバー・ロマンス 7.2万枚

かなり意表を突かれるラインアップになっている気がします。時期としては1991~1992年ごろが一番売れていたということになります。

 

■最高順位 

9位 …  Good-Day 〜思い出に変わるならば〜

アルバムでは1位をとりまくっていましたが、シングルでトップ10入りしたのはなんと1曲のみ。やはり典型的なアルバムアーティストという感じはあります。売上1位の「笑顔にはかなわない」はなんとトップ20にも届いていないのです。

 

 

■代表曲

1 夢をあきらめないで

2 はぐれそうな天使

3 Believe

代表曲としては圧倒的に「夢をあきらめないで」でしょう。今もよくテレビなどでも使われることの多い曲で、2番手、3番手は仮にこの順にしましたが、「はぐれそうな天使」と「Believe」は微差という感じです。

 

 

■好きな曲 ベスト5

1 はぐれそうな天使

2 夏の日の午後

3 風は海から

4 クリスマスの夜

番外 ピエロ

基本的には初期のころの歌が好きで、中でも来生たかお節がはまりスマッシュヒットとなった「はぐれそうな天使」は大好きです。岡村孝子の作品は、どうしても似たように聴こえてしまうところがあって、中期以降はちょっと飽きていたというのも正直を言うとあります。またアルバム曲なので番外としましたが、「ピエロ」の悲しいうたなんだけれどもポップな感じも好きで、こういう感じの作品をシングルでも出してくれていたら、また違った結果になったかもしれないのになんて思っています。

 

みんなが耳にしたことのある代表曲「夢をあきらめないで」が最高50位で1.3万枚という枚数という一方、一番売れたのが一般認知度としては決して高くない「笑顔にはかなわない」ですから、実績と印象がかなり乖離していると言わざるを得ません。よくあるのは、知名度の乏しいデビュー直後の頃の売れなかった曲が、ブレイクしてから発掘されてあとで代表曲になるというパターン(杏里とか徳永英明とか…)ですが、岡村孝子の場合は、もともとあみんとして大ヒットも飛ばしていて、ある程度の知名度もある中でも売れてないかった作品が、後に代表曲になるということで、かなり珍しいパターンではあります。

結論:代表曲と売れた曲は全くリンクしていない