第31回 代表曲と売れた曲は一致するのか

 

大江千里

童顔に眼鏡をかけた風貌と、等身大の男の子女の子を歌った楽曲で、特に女子大生やOLの気持ちをグッとつかみ、次第にそのファン層を広げていった大江千里を取り上げます。

 

【水面下で潜航中】  1983~1984年

「ワラビーぬぎすてて」「ガールフレンド」「ふたつの宿題」

「BOYS&GIRLS」「ロマンス」

デビュー当初から売れたわけではなく、しばらくはシングルチャートトップ100圏外で潜航していくことになります。まだ若さという以上の幼ささえ感じさせる優しくて繊細な作品は、大江千里にしか作ることのできない独特の世界をこの頃からすでに確立していたように思います。

 

【女子大生とOLのハートをつかみ始める】  1984~1986年

「十人十色」「リアル」「フレンド」「コスモポリタン」「きみと生きたい」

この頃になると、時折音楽雑誌やラジオなどで目にしたり耳にしたりということも増えてきて、「十人十色」「リアル」は初期の大江千里を代表する作品になります。オリコンシングルチャートにも確実に入るようになり、特に女子大生やOLさんたちの人気はかなりのものになっていきます

 

【メディア露出も増え知名度も拡大】  1986~1988年

「Bedtime Stories」「YOU」「POWER」「GLORY DAYS」「これから」

音楽に関することだけでなく、俳優業やMCなどにも進出し、テレビを中心としたメディアへの露出がさらに増えていきます。セールス面ではシングルチャート20位以内が定着し、固定ファンも確実に増えていきます。当時アルバイト先で一緒だった女子大生の子も「千里ちゃん」と呼んで、まるで友達のように大江千里を語っていましたが、その親近感が人気の秘密のひとつだったのかもしれません。

 

【シングルチャート上位の常連に】  1989~1990年

「おねがい天国」「ラジオが呼んでいる」「WE ARE TRAVELLIN’ BAND」「たわわの果実」「dear」「APOLLO」

そしてついに「ラジオが呼んでいる」でトップ10入りを果たすと、「dear」は6位にまで上昇。一方で「おねがい天国」「たわわの果実」といった遊び心いっぱいの作品もシングルとしてリリースするようになるなど、余裕のようなものをふるまいにも感じられるようになっていき、名実とも人気アーティストになっていきました。

 

【ついにセールスが人気に追いつく】  1990~1992年

「あいたい」「格好悪いふられ方」「HONEST」「ありがとう」

こうして人気アーティストの仲間入りを果たした大江千里でしたが、シングルではセールス的にいまひとつはじけない状態に、ファンにとってははがゆいところもあったのではないかと想像します。しかし1990年発売の「あいたい」が20万枚を初めて突破すると、テレビドラマのテーマ曲に起用された「格好悪いふられ方」がオリコン最高2位のハーフミリオンを達成。ついにセールス面でも完全ブレイクを果たしたのです。一曲挟んで「ありがとう」もドラマのテーマ曲で10万枚超えと、このあたりまでが大江千里にとってのピーク期といえそうです。

 

【売上面では下降期】 1993~1997年

「軍配はどっちにあがる」「雪の別れ」「きみを求め続けるかぎり」「夏の決心」など

しかしながら1993年頃から売上が伸びなくなり、順位も次第に低下していきます。世の中はバブルが崩壊し、1980年代後半のシティボーイ&ガールのイメージが強かった大江千里にとって、時代の雰囲気と固定したイメージとがマッチしなくなってきたのかもしれません。

 

【独自の路線で活動】 1998年~

「野球の夏」「New Republic!」「奇跡」「静寂の場所」など

こうして日本の音楽のメーンシーンからは離れていき、21世紀になってからは、ニューヨークを拠点にジャズ音楽へ転向。まったくそれまでとは違う路線で活動していくことになるのです。

 

■売上枚数 ベスト5   

1 格好悪いふられ方 50.2万枚

2 あいたい 20.6万枚

3 ありがとう 12.3万枚

4 dear 11.2万枚

5 おねがい天国 8.4万枚

「格好悪いふられ方」がダントツの1位で50万枚を超える枚数を売上げました。それを含めて10万枚以上が4作品。アルバムに比べると、シングルのセールスでは苦労していたような印象があります。それでも「格好わるいふられ方」待ちに待った大ヒット曲ということで、広く認知された一曲になりました。
 

 

■最高順位 

2位 … 格好悪いふられ方 

6位 … dear 

9位 … ラジオが呼んでいる、あいたい

トップ10入りは4曲と、印象と比べると、やや少ない感はあります。その中でも「格好悪いふられ方」は12週にわたってオリコントップ10以内をキープするロングセラーとなり、売上・順位ともに大江千里にとっての最大ヒット曲となりました。

 

 

■代表曲

1 格好悪いふられ方

2 十人十色、ありがとう、夏の決心、Rain

売上と認知度が圧倒的なので、1曲はといわれたら「格好悪いふられ方」で動かないでしょうが、その次の代表曲はと聞かれると、かなり迷うように思います。また、濃いめのファンからすると、「格好悪いふられ方」が代表曲一番手ということには、抵抗があるかもしれません。いろいろなサイトなどを多数決的に見てみると、上に示したような曲があがってくることが多いみたいですが、セールス的にはいまいちな曲もありますし、絞るのが難しいですね。

 

 

■好きな曲 ベスト5

1 YOU

2 これから

3 十人十色

4 格好悪いふられ方

5 dear

わりと接戦で迷うのですが、私の好みでいうとこんな感じです。

 

 

代表曲1曲はといわれたら、圧倒的に売上が大きかった「格好悪いふられ方」になるでしょうが、これが大江千里らしさのNo.1かといわれると、うーむ…といった感じなのですよね。2番手以降の代表曲はと問われると、もはやセールスとはまったく関係のないところでの争いになりそうです。

結論:一般的認知度を考えると、一番売れた曲が一番の代表曲といって決して間違いではないでしょうが、それが大江千里を象徴する曲かといわれると、ちょっと考えてしまう感じ