第14回 代表曲と売れた曲は一致するのか

 

麻倉未稀

迫力あるダイナマイトボーカルで洋楽カバーを熱唱するイメージが強い歌手でしたが、実際はそこに至るまでは試行錯誤紆余曲折があったようにうかがえます。近年も往年のヒット曲をテレビ塔で披露する機会が比較的多い歌手で、ちょくちょく姿を拝見する機会のある印象です。

 

【ボサノバ風アンニュイ路線】  1981~1983年

「ミスティ・トワイライト」「黒いパンプス」「女嫌い」「SNOWBIRD」

「マジカル サマー」

デビュー曲「ミスティ・トワイライト」が10万枚越えのそこそこヒットとなり、その路線をベースに、どちらの方向へ行くか模索している感じがうかがえます。筒美京平氏に曲を依頼したり、自身が作詞をしたりといろいろ試して観てはいるものの、シングルが発売されるごとにじり貧で、悩みが深そうな時期でした。

 

【迫力ボーカルの洋楽カバー路線】  1983~1985年

「ホワット ア フィーリング 〜フラッシュダンス」「黄昏ダンシング」

「ロマンスは熱いうちに -The City of Romance-」

「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」「RUNAWAY」など

しかし映画も音楽も話題になったフラッシュダンスの日本語カバーを6thシングルとして手掛けると、久しぶりにチャートのトップ100に復活。その後この迫力あるボーカルを生かした路線に活路を見出し、「ヒーロー」「RUNAWAY」と洋楽カバーで実績を残していきます。またそのはざまで、デビュー時の路線に近い「黄昏ダンシング」がヒットと、ボーカリストとしての地位を確立していきます。

 

【チャートでは伸び悩み音楽以外に活動を拡大】  1986年~

「千億の恋人」「愛はウィングス」「Dance with love」など

しかしながら、ヒットを出し続けるのは容易ではなく、次第にヒットチャートからは遠ざかっていくことになります。そしてその後はヌード写真集だったりミュージカルだったりと、別の方面に活動の中心を移していきます。病気を患われたときも話題になりました。

 

 

■売上枚数 ベスト5   

1 黄昏ダンシング 22.2万枚

2 ヒーロー 18.1万枚

3 ミスティ・トワイライト 11.6万枚

4 RUNAWAY 8.8万枚

5 ホワット ア フィーリング 6.0万枚

おなじみの洋楽カバー曲が3曲入っていますが、1番売れたのは実は「黄昏ダンシング」なのですね。

 

■最高順位 

12位 … 黄昏ダンシング  

19位 … ヒーロー

23位 … RUNAWAY

31位 … ミスティ・トワイライト

41位 … ロマンスは熱いうちに 

意外にもトップ10入りはなく、ここでも最高が12位の「黄昏ダンシング」。

 

■代表曲

1  ヒーロー

2  ホワット ア フィーリング 〜フラッシュダンス

麻倉未稀がテレビとかに出てきて歌うと、まずは「ヒーロー」。たまに「ホワット ア フィーリング」といった印象で、とにかく洋楽ヒット曲のカバー専門歌手的なイメージがついてしまっているように思います。一番売れた「黄昏ダンシング」の存在がやや薄い気はします。

 

■好きな曲 ベスト5

1  ロマンスは熱いうちに

カバーですとやっぱりオリジナル曲を差し置いて…というところはありますし、個人的にはアップテンポで彼女のボーカル力も生かされたこの曲が好きなのですよね。

 

一番の代表曲は2番目に売れた「ヒーロー」ということになりそうで、一番売れた「黄昏ダンシング」がわりと忘れ去られている気がいるのですよね。

結論:一番売れた曲と一番の代表曲はイコールではない。