第7回 代表曲と売れた曲は一致するのか
石川秀美
花の82年組の一人としてしのぎを削った一人。健康的で元気なイメージから、やがて大人のお姉さんへと徐々に変化していって、最後は薬丸夫人に。
【海の似合う健康的なイメージでめざせトップ10期】 1982~1983年
「妖精時代」「ゆ・れ・て湘南」「哀しみのブリザード」「涙のペーパームーン」
82年組というアイドル豊作年の中の一人として、多くのライバルたちとしのぎを削りながら、新人サバイバルレースの中に足を踏み入れた石川秀美。デビュー当時のイメージとしては、ホットパンツ姿で太ももをみせて、海の似合う健康的な女の子といったものでした。初期の歌詞には、サーフボードとか、海とかが実によく出てきたのですが、「ゆ・れ・て湘南」「哀しみのブリザード」はその典型でした。まだオリコンのトップ10には届かないものの、少しずつランクを上げながら力を蓄えている、そんな時期でした。
【元気な女の子で人気拡大期】 1983年
「Hey!ミスター・ポリスマン」「恋はサマーフィーリング」
「バイ・バイ・サマー」「スターダスト・トレイン」
5th「Hey!ミスター・ポリスマン」が初めてシングルチャートのトップ10に入り、いよいよトップアイドルを争うところまで上がってきました。するとそこから計算したように、4曲連続してオリコン10位という、スレスレでのトップ10入り。路線としては、デビュー当初の海の似合う元気な女の子を継承しつつも、少しずつ曲調の幅を広げているという感じでして、アイドル石川秀美としては勢いのピークにあった時期といえそうです。
【色んなタイプの曲で人気安定期】 1984年
「めざめ」「夏のフォトグラフ」「熱風」「ミステリーウーマン」
それまでの、元気、可愛い一辺倒から聴かせる要素を濃くした音楽に変化しつつあったのがこの頃。シングルの売上はほぼ同じような売上で安定し、順位でもトップ10の中位あたりまで進出。そろそろ歌手として幅を広げていこうかという時期でした。
【ちょっと刺激的なお姉さんにイメチェン挑戦期】 1985~1986年
「もっと接近しましょ」「あなたとハプニング」「Sae Love You」
「愛の呪文」「サイレンの少年」「春霞恋絵巻」「SHADOW SUMMER」
大人の歌手へと脱皮していかないといけないということで、それまでの恋に憧れる妹的存在から、年下の男の子に恋の手ほどきをするお姉さん感の強い作品が続くようになります。それも結構刺激的な歌詞が次々に使われるようになり、それまでのファンにとっては、ちょっと複雑な気持ちになった人もいるのではないでしょうか。ただセールス的には「もっと接近しましょ」を最後に、10万枚のラインを下回るようになり、人気のピークを過ぎてきたかなというところはありましたね。
【ロック志向強化でアイドルからの脱皮期】 1986年~1988年
「LOVE COMES QUICKLY」「危ないボディ・ビート」「密室のハリケーン」
「素敵な勇気」「デス・トラップ」 「Everynight」
このあたりからは、ロック色の強い作品が多くなっていきます。売上下降を意識したのか、新しいファンを掴もうとしたのでしょうか。ただこの路線は、逆に従来のファンが離れていくリスクもあって、実際にはなかなか売上の回復ということにはならなかったです。
【売上低迷から引退へ】 1988~1990年
「ドレスの下の狂詩曲」「プライヴェート ヌード」「Silence Blue」「もっとje-vous-aime」「Lucy」
このあたりになると、トップ100圏外になることもあったりと、完全に世代交代の中で追いやられてしまうわけですが、そのタイミングで驚きのヤックンとの結婚・引退報道があり、次の展開に進むことなく、きれいに芸能界から去っていったというわけです。
■売上枚数 ベスト5
1 Hey! ミスター・ポリスマン 15.1万枚
2 ミステリーウーマン 13.8万枚
3 涙のペーパームーン 13.2万枚
4 もっと接近しましょ 12.8万枚
5 スターダスト・トレイン 12.4万枚
正直、突出して売れた曲がなく、4thシングルから13thシングルまでの10曲がすべて10万枚~15万枚台という似たような実績。どんな曲を出しても売上に凸凹がないというのが、石川秀美の強みでもあり、弱みでもあったように思います。
■最高順位
4位 … もっと接近しましょ
5位 … ミステリーウーマン
同じような売上ばかりなので、あとは他のヒット曲の強さとの関係と、発売のちょっとしたタイミングで順位は変わってくるという感じで、最高が4位、その次が5位。ただ最高順位を記録したのが「もっと接近しましょ」というのは、ちょっと意外な曲が気がしますね。
■代表曲
1 ゆ・れ・て湘南
2 Hey! ミスター・ポリスマン
絶対という代表曲がないのですが、強いて言えば、石川秀美のイメージにいちばん合致している2nd「ゆ・れ・て湘南」が石川秀美を象徴する曲ではないでしょうか。石川秀美の紹介の時に使われるのはだいたいこの曲。ただこの「ゆ・れ・て湘南」、最高29位と当時はあまり売れておらず、後に突出した曲が生まれなかったことで、新人賞レースでよく歌われたこの曲の印象が強くなったような気はします。次が売上1位の「Hey! ミスター・ポリスマン」になりそうです。
■好きな曲 ベスト5
1 Sea Loves You~キッスで殺して
2 SHADOW SUMMER
3 ゆ・れ・て湘南
4 涙のペーパームーン
5 めざめ
以前のものとちょっと変わっていますが、年下の男の子をちょっとからかうような「Sea Loves You」が1位です。「SHADOW SUMMER」も大人の感じでいい曲です。ランク外になってしまいましたが「素敵な勇気」なんかも好きです。
突出して売れた曲がなく、代表曲もあえて言えば「ゆ・れ・て湘南」という感じで、しかもこの曲は売れていないのですよね。
結論:一致しているとは言い難いし、そもそも突出して売れた曲がない