80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.92 最終回その1

 

林哲司(作曲家)

 

今回は林哲司トップ10の発表。

そして作詞家・作曲家特集は今回までです。

 

ここまで楽曲、作詞作曲家に焦点を当てた特集をしてきましたので、

次回以降はアーティストとそのセールスとイメージの乖離についてやってみようかと思ってます。

 

10位 サヨナラは私のために 松本伊代 

(18位 6.2万枚 作詞 川村真澄 作曲 林哲司 1986年)

『信じかたを教えて』『思い出をきれいにしないで』の3部作はいずれも大人の歌手松本伊代をアピールするには十分な、完成度の高い作品に仕上がりましたが、その中の真ん中にあるのがこの作品。アイドルとしてのピークを過ぎた後も、こうした高いクオリティの楽曲を歌い続けていて、セールス的にもかなり粘り強い展開をしていた松本伊代。林哲司がここでもいい仕事をしていました。

 

9位 SHADOW SUMMER 石川秀美

(18位 3.0万枚 作詞 売野雅勇 作曲 林哲司 1986年)

『熱風』に続いて石川秀美への2曲目の提供となりましたが、こちらは去年の夏の恋の跡を追って、一人訪れた海岸でつのるせつなさ寂しさが、歌詞だけでなくメロディーでもしっかりと表現された作品となっています。アイドルとしてのパワーが低下してきた時期の曲だけに、セールス的には残念でしたが、もう少し早い時期にこれが歌われていたら、また違った展開もあったのではないでしょうか。

 

 

8位 僕の腕の中で 杉山清貴

(2位 18.7万枚 作詞 秋元康 作曲 林哲司 1988年)

オメガトライブ時代は全曲を林哲司が作曲していましたが、ソロでのシングルはこの曲が最初。夏、海、恋…というオメガトライブ時代から続く杉山清貴のイメージにまさにぴったりの爽やかラブソング。得意の耳心地の良いサウンドで、バブルに浮かれた恋人たちのテンションを盛り上げた一曲になりました。

 

7位 SUMMER EYES 菊池桃子

(7位 19.5万枚 作詞 秋元康 作曲 林哲司 1984年)

菊池桃子からのもう1曲は2ndシングルになったこの曲です。以前記したように、いろいろ想像させる歌詞ですが、夏のコテージを仲間たちと訪れながら一人去っていく主人公の思いが、このメロディーに乗るとさらにいろいろな想像を掻き立てられるのです。この夏、リゾート地でいったい何があったのか…、興味を掻き立てられる作品で気に入っています。そのほか『青春のいじわる』『Broken Sunset』『夏色片想い』『雪にかいたLOVE LETTER』などもランクに入れたかったのですが、今回は押し出されてしまいました。

 

6位 稲妻パラダイス 堀ちえみ

(5位 13.7万枚 作詞 康珍化 作曲 林哲司 1984年)

恋の熱量があふれ出てくるような、一点の曇りもない夏のラブソングは、聴いていてウキウキと楽しい気分になっていきます。林哲司の曲の中でも特にポップで憂いを感じさせない作品で、ある意味あまりらしくない曲なのかもしれません。

 

5位 天国にいちばん近い島 原田知世         

(1位 27.6万枚 作詞 康珍化 作曲 林哲司 1984年)

映画がらみの一曲で、映画の方は大したことはないのですが、そのテーマ曲であるこの曲は、繊細で美しいメロディーが聴いていてとても心地よい作品に仕上がっています。原田知世のどこか守ってあげたくなるようなボーカルに非常にマッチしていて、個人的にも好きな歌です。そのほか選外となりましたが、『愛情物語』も林哲司作曲のなかなかの良い曲になっています。

 

4位 涙のハリウッド 河合奈保子

(7位 6.2万枚 作詞 売野雅勇 作曲 林哲司 1986年)

当時私の周りでわりと評判の高かった曲で、Aメロ、Bメロからサビまでのどこをとっても、林哲司らしく売れ線のメロディーにきちんと仕上げているところがさすがです。人気の下降期にはいっていたため、さほど売上は伸びなかったですが、絶頂期にこれを出していたら、もっと聴いてもらえたような気はします。

 

3位 デビュー~Fly Me To Love~河合奈保子 

(1位 16.1万枚 作詞 売野雅勇 作曲 林哲司 1985年)

河合奈保子唯一のオリコン1位獲得曲で、夏らしいキャッチーな作品になっています。サビ頭でいきなりガツンとひきつけられ、そこからは気分は南国の海へ。アイドルソングらしい気分がワクワクするような作品になっています。河合奈保子にはこの曲と5位曲のほか、まったくタイプの違う『ラヴェンダーリップス』も林哲司が作曲しています。

 

2位 悲しい色やね 上田正樹 

(5位 34.8万枚 作詞 康珍化 作曲 林哲司 1983年)

林哲司の都会的でスマートなイメージとは正反対にあるコテコテの関西弁の歌詞が、意外にもマッチして大ヒットに繋がりました。何かの番組で、林氏自身もこのメロディーにこの歌詞がのってきたことに驚いたようなことを言っていましたが、上田正樹のボーカルもあって、とても魅力的な作品に仕上がるものなのですね。

 

1位 君のハートはマリンブルー 杉山清貴&オメガトライブ

(12位 24.9万枚 作詞 康珍化 作曲 林哲司 1984年)

林哲司といえばやっぱりオメガトライブということで、上記以外にも『ASPHALT LADY』『RIVERSIDE HOTEL』『サイレンスがいっぱい』『ガラスのPALM TREE』とある中で、しっとりと歌い上げたバラード系のこの作品を1位にしてみました。デビュー曲のヒットのあと、2ndシングルが伸び悩み、そこで勝負をかけたこの曲のヒットにより、オメガトライブの地位を確固たるものにしたわけです。とにかく聴いて歌って気持ちの良い作品で、個人的にもお気に入りの一曲でした。

 

 

【主なその他のアーティストへの作品】

池田政典『SHADOW DANCER』『FORMULA WIND』

稲垣潤一『1ダースの言い訳』『思い出のビーチクラブ』『サザンクロス』『君は知らない』

田原俊彦『Hardにやさしく』

とんねるず『寝た子も起きる子守唄』

中村由真『水に落ちたヴァイオレット』

早見優『Me☆セーラーマン』