80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.89
森雪之丞(作詞・作曲家)
70年代から80年代にかけて作詞家として多くのヒット曲を送り出した森雪之丞。言葉を巧みに操り、特に遊び心いっぱいの歌詞を生み出すことには長けている作詞家でした。耳に残るインパクトのあるフレーズや、時にはなんだこりゃといった、あまり歌詞に使わないような言葉を歌にしてしまう独特のセンスで楽しませてもらいました。
森雪之丞作詞曲・ベスト10+10
★=80年代発売
(30位 1.4万枚 作詞 森雪之丞 作曲 佐藤健 1988年)★
19位 SLEEPLESS NIGHT~眠れない夜のために~ 氷室京介
(6位 15.2万枚 作詞 森雪之丞 作曲 氷室京介1999年)
18位 ジプシー 西城秀樹
(15位 13.6万枚 作詞 森雪之丞 作曲 鈴木キサブロー 1981年)★
17位 クライマックスご一緒に あんみつ姫
(4位 20.7万枚 作詞 森雪之丞 作曲 井上大輔 1984年)★
16位 僕笑っちゃいます 風見慎吾
(6位 33.0万枚 作詞 欽ちゃんバンド、森雪之丞 作曲 吉田拓郎 1983年)★
15位 白い炎 斉藤由貴
(5位 19.9万枚 作詞 森雪之丞 作曲 玉置浩二 1985年)★
14位 GUANBARE 酒井法子
(7位 8.2万枚 作詞 森雪之丞 作曲 馬飼野康二 1988年)★
13位 ガラスの幻想曲 島田奈美
(19位 4.2万枚 作詞 森雪之丞 作曲 中崎英也 1986年)★
12位 スリル 布袋寅泰
(1位 69.6万枚 作詞 森雪之丞 作曲 布袋寅泰 1995年)
11位 悲しみの向こうがわ 我妻佳代
(31位 0.9万枚 作詞 森雪之丞 作曲 筒美京平 1988年)★
10位 アル・パシーノ+アラン・ドロン<あなた
(22位 11.5万枚 作詞 森雪之丞 作曲 森雪之丞 1977年)
タイトルのインパクトと森雪之丞が作詞だけでなく作曲まで行っているということでピックアップしてしまいましたが、この頃は“パチーノ”ではなくて“パシーノ”だったのですね。たわいもないアイドルソングといってしまえばそこまでなのですが、比べる相手が相手だけに、スケール感は大きいのです。せめて『ジュリーがライバル』と国内にとどめておけば…
9位 あなたに天使が見える時 酒井法子
(12位 3.9万枚 作詞 森雪之丞 作曲 土橋安騎夫 1991年)
傷ついて元気のないあなたのために私が天使の代わりにはなれないかもしれないけれど、そばにいて味方で居続けるわ、というような健気で一途な愛を歌った歌詞で、森雪之丞にしては珍しい(?)素直で奇を衒わないところが逆に新鮮に感じられます。
8位 砂の城 斉藤由貴
(2位 13.6万枚 作詞 森雪之丞 作曲 岡本朗 1987年)★
脆くて壊れやすい愛の形を砂の城に例えて歌った作品ですが、《少し悲しい》といいながらも、どこかクールで悟りきったような視点が斉藤由貴っぽいなと思わせます。
7位 男意ッ気 シブがき隊
(4位 14.3万枚 作詞 森雪之丞 作曲 岡本朗 1985年)★
シブがき隊には特に言葉の音感をふんだんに生かした遊び心にあふれた作品を提供していましたが、こちらは数え歌風の歌詞がとにかくインパクト絶大。♪1姫 2太郎恋すりゃ 3角関係激突 4の5の言わせず抱きしめ~、♪66(ろくろく)眠れぬせつなさ 7転8倒純愛 9地(窮地)に立っても強気で 1010(とうとう)おまえとねんごろ とよくも考えましたね。
6位 とまどいの週末 堀ちえみ
(14位 11.4万枚 作詞 森雪之丞 作曲 森雪之丞 1982年)★
サビ部分の歌詞にインパクトがあって、このあたりは森雪之丞らしさが噴出している印象です。♪あのね 好きよだけど ♪そのね だって こわい ♪じゃあね なんて つらい ♪でもね ちょっと はやい…と、3音の話し言葉を3つ連ねる形でリズムを揃えてきて、その言葉に見え隠れする女心をいろいろと想像させて、面白いのですよね。
5位 CIRCUS 布袋寅泰
(3位 34.6万枚 作詞 森雪之丞 作曲 布袋寅泰 1996年)
人生だったり、情愛だったりをサーカスのシーンに例えた歌詞は凝っていて秀逸。ライオンの火くぐり、空中ブランコ、目隠しでの綱渡りなどなどサーカスの定番の出し物を比喩に使って、サーカスとは人生だと表現、それが布袋寅泰の手にかかってスリリングに響いてくるのです。布袋との相性は良いみたいで、12位の他にも『POISON』『バンビーナ』なんかもインパクトがあります。
4位 Hey! Bep-pin シブがき隊
(4位 23.0万枚 作詞 森雪之丞 作曲 後藤次利 1983年)★
こちらも言葉を使った遊びが満載の作品。キンコンカン、トンチンカン、ダイコンラン、スッポンポン、チンプンカン、スットンキョー…と「●ン●ン●ン」の音に当てはめた言葉(一部違いますが)を歌詞に配して、歌詞を成り立たせてしまうのですから、森雪之丞のまさに本領発揮といったものになっています。
3位 君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね 中原めいこ
(8位 23.7万枚 作詞 中原めいこ、森雪之丞 作曲 中原めいこ 1984年)★
共作の歌詞ということで、どこまで森雪之丞が書いているのかはわかりませんが、とにかくタイトルでもあるサビの部分の歌詞は絶大。キャッチーなコピーでそれだけでひきつける力を持つ言葉になっていますが、で一体どういうこと?と実は言っていることがよくわからないというのもまた不思議な魅力になっているわけです。
2位 ヤッパシ…H! 浅香唯
(圏外 作詞 森雪之丞 作曲 馬飼野康二 1986年)★
1st、2ndと売れなかった浅香唯にもってきたのが、こんなへんてこりんな歌詞の曲ですから、陣営としては随分思い切ったことを最初からしてきたなという印象です。清純派、正統派を狙っているのなら当然こんな曲をいきなりは持ってこないでしょうし、コミカル路線を狙っていたのでしょうか。結果としては売れなかったことで、さらに路線転換を図り、ブレイクしていくわけですが、ただこの歌詞は森雪之丞にしか書けないでしょうし、言葉遊びも含めて、よくできた歌詞だとは思います。のちに『C-Girl』『Melody』と正統派路線でも森雪之丞は歌詞を提供し、結果を残しました。
1位 Zokkon命 シブがき隊
(3位 24.8万枚 作詞 森雪之丞 作曲 水谷龍緒 1983年)★
7位、4位の作品以外にも『NAI・NAI16』『100%…SOかもね』『べらんめぇ!伊達男』『月光淑女!』『トラ!トラ!トラ!』ととにかくインパクトある言葉を使った歌詞をシブがき隊に提唱し続けた森雪之丞ですが、この作品については♪最上級の惚れ方さ ゾッコン! だけですべてを物語れてしまう強さがあります。ちょっと悪っぽい俺だけれどお前を好きな気持ちはだれにも負けないぜ的なカッコよさをにあふれていて、個人的に大好きです。