80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.86
松本隆(作詞家)
さて、今回はいよいよ80年代のベスト10です。
松本隆作詞曲・ベスト20 80年代限定
20~11位は前編で。
10位 ハイスクールララバイ イモ欽トリオ
(1位 104.3万枚 作詞 松本隆 作曲 細野晴臣 1981年)
ミリオンセラーを達成したテレビから出たヒット曲ですが、当時話題沸騰中のYMOをある意味パロディ的な作品ではあります。ただ音と振り付けはそこを意識しながらも、歌詞自体はコント番組らしく、自虐的なオチをつけながら、うまくいかない高校生の恋路を描いている歌詞はなかなかいいところをついているのですよね。
9位 初戀 斉藤由貴
(4位 16.2万枚 作詞 松本隆 作曲 筒美京平 1985年)
付き合った人はいたけれどこれが初恋という、一見清純っぽくて、実は言い寄られればとりあえず付き合ってしまうのか、その微妙な感じを、旧字体の「戀」ですべてを文学的にしてしまう魔力。まあ、本当に好きになったのはあなたで、だからこそ視線が合うだけで真赤になってしまう…。これ、なかなか面白い歌詞です。
8位 青い靴 芳本美代子
(10位 5.8万枚 作詞 松本隆 作曲 筒美京平 1986年)
彼氏に振られたのでしょうか、傷心の中で一心不乱にただただ踊り続ける心の中を的確に描いた歌詞が可愛らしいです。「ディスコ」で声をかけてくるナンパ男どもに見向きもせず、汗を飛び散らせながら踊る芳本美代子の姿が容易に想像でき、アイドルソングとしては文句なし。
7位 ブルージーンズ・メモリー 近藤真彦
(1位 59.8万枚 作詞 松本隆 作曲 筒美京平 1981年)
上京する彼女を見送る駅のホームで「さよならなんていえないよ バカヤロー」、この一言に表されるマッチの3rdシングルです。二人の最後の時間におしまいを告げる列車の発車ベルが、未練たっぷりの男の胸を掻きむしるようで、これまてそのシーンをしっかりと想像させてくれる歌詞になっています。
6位 スクール・ガール C-C-B
(8位 21.0万枚 作詞 松本隆 作曲 筒美京平 1985年)
C-C-Bからもう一作。図書館でキスしたこともある優しかった昔の彼女が、いつのまにか不良少女風の派手ないでたちとともに人が変わってしまったことを、遠目に眺めているしかできなくなってしまったボクの無力感。メロディーと合わせるとやるせなさせつなさが増幅される歌詞がいいのですよ。
5位 赤いスイートピー 松田聖子
(1位 50.0万枚 作詞 松本隆 作曲 呉田軽穂 1982年)
松本隆の代表曲の1つと言っていいでしょう。発売当時も魅力的な歌詞に、聖子ちゃんの新曲はいいね、なんて思いましたが、まさか今の時代までスタンダードとして残るとは想像しなかったですね。誰もいない駅にいる奥手な二人が醸し出す幸せそうな空気感が良いです。
4位 ルビーの指環 寺尾聰
(1位 134.1万枚 作詞 松本隆 作曲 寺尾聰 1981年)
1980年代を代表する大ヒット曲ですが、起伏の少ないメロディーに松本隆のどこか乾いた空気を感じさせる歌詞がまるで芸術作品のように響いてきます。映画のシーンのように映像が浮かんでくる一つ一つのフレーズは見事としかいいようがありません。
3位 ハートのイヤリング 松田聖子
(1位 37.6万枚 作詞 松本隆 作曲 佐野元春 1984年)
松田聖子のシングル曲の多くを作詞している松本隆ですが、個人的に歌詞で一番気に入っているのがこの曲です。空いたカフェで彼氏の浮気を問い詰めながらも、どこかで大したことはないと信じたい女心を打ち砕くサヨナラの一言。最初はどこかコミカルにさえ感じられたムードが、次第に切なく悲しくなっていく様子が、ちょっとした失恋映画を観ているように場面が進んでいきます。
2位 魔女 小泉今日子
(1位 16.7万枚 作詞 松本隆 作曲 筒美京平 1985年)
魔女になりたい、でもやっぱり魔女にはなれないと気づいて涙する女心。ふられてしまった恋人の行動を、変装して追いかけるのですが、すでに彼の気持ちは自分にまったく向いていないことを確認するだけのせつない時間。男も女も浅はかなのですが、それが憎めないし意地らしいしで、なんとも愛おしくなってしまう素敵な歌詞です。
1位 Tシャツに口紅 ラッツ&スター
(18位 9.8万枚 作詞 松本隆 作曲 大滝詠一 1983年)
松本隆の歌詞の中でも特に色彩の移ろいを感じさせる歌詞が好きです。この曲もまるで恋愛映画のシーンのように、情景が浮かび、そして流れていくのです。夜明けの海に佇む長年付き合ってきた二人の男女、そして小犬とカモメたち。ゆっくりとでも確実に進んでいる時間の中で取り残されている二人、そんな余韻を残していく感じが好きで1位にしました。