80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.85
松任谷由実(作詞・作曲家)
言わずと知れたビッグアーティストですが、松田聖子をはじめとして、他のアーティストやアイドルへの詩や曲の提供もありまして、ヒットを生んでいます。ペンネーム呉田軽穂の使い分けも有名ですが、ランキングについては松田聖子だらけになってしまっても面白くないので、1アーティスト1曲に限定して10曲を選びました。
松任谷由実作詞作曲作・ベスト10
★=80年代発売
10位 銀河の神話 田原俊彦
(2位 14.8万枚 作詞 吉田美奈子 作曲 呉田軽穂 1985年)★
意外にも田原俊彦にもシングル曲を提供していまして、この曲のサビなんかを聴くと、なるほどユーミンっぽいなとは思います。ミディアムテンポのSFチックなこの曲は、田原俊彦の作品の中では地味な存在で、1位はとれていません。
9位 雨音はショパンの調べ 小林麻美
(1位 52.0万枚 日本語詞 松任谷由実 作詞・作曲 Gazebo, P.L.Giombini 1984年)★
世界的にヒットしたガゼボの作品のカバー曲で、日本語詞を松任谷由実が担当。しばらく鳴りを潜めていた小林麻美が久しぶりに歌手として登場したという意外性も手伝って、日本でも大ヒット。どこか神秘的な雰囲気の楽曲が、小林麻美のイメージともぴったりとはまりました。
8位 Woman “Wの悲劇”より 薬師丸ひろ子
(1位 37.3万枚 作詞 松本隆 作曲 呉田軽穂 1984年)★
映画『Wの悲劇』も話題になりましたが、そのテーマソングだったこの曲を松任谷由実が作曲。けっして派手な曲ではなく、むしろ暗い感じのメロディーなのですが、薬師丸ひろ子の透き通ったボーカルを引き立てるにはこれ以上ない作品ではなかったでしょうか。
7位 卒業写真 ハイ・ファイ・セット
(ランク外 作詞 荒井由実 作曲 荒井由実 1975年)
ハイ・ファイ・セットのデビュー曲で、のちに松任谷自身もカバーしていますが、意外にもチャートの100位には入っていないようで、のちのカバーによってハイ・ファイ・セット盤にもスポットが当たるようになったというところでしょう。卒業ソングとして今も卒業シーズンには流れてきます。
6位 時をかける少女 原田知世
(2位 58.7万枚 作詞 松任谷由実 作曲 松任谷由実 1983年)★
原田知世を一躍人気スターに押し上げたこの曲は、同名タイトルの映画も話題になったということで、角川映画+主題歌+ユーミンの組み合わせは8位曲と同様です。特にこの歌は映画の内容ともリンクするところがあり、SFラブ・ファンタジーっぽい独特のふわっとした空気感が不思議な魅力を醸し出していました。
5位 今年いちばん風の強い午後 観月ありさ
(8位 19.3万枚 作詞 呉田軽穂 作曲 呉田軽穂 1993年)
80年代のユーミンを彷彿させるようなリゾート感にあふれたラブソングを観月ありさに提供したのがこれ。タイトルのとおり、聴いているだけで爽やかで心地よい風に吹かれているような感覚に陥ります。次のシングル『君が好きだから』も提供しています。
4位 さよならと言われて 松本典子
(17位 5.6万枚 作詞 銀色夏生 作曲 呉田軽穂 1985年)★
それまでの明るくアイドルらしい曲から一転してしっとりした失恋ソングを3rdシングルとして選んだ松本典子。曲だけを松任谷由実が担当しているせいか、あまりユーミン色が濃くない正統派の作品ですが、松本典子の良い意味で細いボーカルが切なさを増幅させてくれ、しんみりとさせてくれます。
3位 メロンのためいき 山瀬まみ
(21位 4.0万枚 作詞 松本隆 作曲 呉田軽穂 1986年)★
山瀬まみのデビュー曲は作詞松本隆、作曲松任谷由実ということで、完全に松田聖子路線の王道アイドルを狙っていたのでしょう。タイトルからしてもわかりますが、楽曲もまさにそんな王道アイドルソングで、出来栄えもなかなかのもの。もっと陽の目を見て欲しかった作品です。
2位 赤いスイートピー 松田聖子
(1位 50.0万枚 作詞 松本隆 作曲 呉田軽穂 1982年)★
松田聖子は『渚のバルコニー』『小麦色のマーメイド』『秘密の花園』『Rock‘n Rouge』『瞳はダイヤモンド』『時間の国のアリス』と多くのシングル曲で松任谷由実が関わっていて、その多くが素晴らしい曲なのですが、1曲だけとなると、はずせないのがこの曲かと思いました。今も歌い継がれる名曲になるとは、当時は想像もしなかったです。あとB面にも『制服』『レモネードの夏』『蒼いフォトグラフ』『ボン・ボヤージュ』なんて名曲が多いのですよね。
1位 『いちご白書』をもう一度 バンバン
(1位 31万枚 75.1作詞 荒井由実 作曲 荒井由実 1975年)
やはり1位は1970年代に提供したこの名曲でしょう。学生運動が盛んだった当時の世相だったり、就職を前に理想よりも現実に目を向けざるを得なくなった淋しさ、そんな青春の終りを告げる切なさのようなものがしみじみと伝わってくる歌詞がとにかく秀逸です。