80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.78
湯川れい子(作詞家)
80年代にはすでに大御所感があふれていましたが、未だに御健在の作詞家です。幅広い音楽にも通じていて、俳優業、作家業、翻訳業と多才ぶりを発揮。社会的活動にも参加するなど、とにかくスーパーウーマンという感じで、そんな中でもヒット曲を多数作詞。今回は10曲を選ぶのにはみ出してしまう曲が多く、とても悩みました。歌い手や作品によって、独特の世界を創り出す引き出しの広さには感服します。
湯川れい子作詞曲・ベスト10
★=80年代発売
10位 瞳にSTORM 浅香唯
(4位 8.7万枚 作詞 湯川れい子 作曲 井上大輔 1987年)★
「瞳に嵐」なんてどういう状況なんだって突っ込みたくなるような、時々ある「そんな無茶な」的なタイトルと歌詞。上昇気流にあった浅香唯に提供したシングル曲は、結構仰々しく重い感じの歌詞になっているのですよね。この次の『虹のDreamer』も湯川れい子が作詞し、浅香唯にとって初の1位を獲得しています。
9位 SOLITUDE 中森明菜
(1位 33.6万枚 作詞 湯川れい子 作曲 武川行秀 1985年)★
アンニュイでおしゃれな雰囲気の作品です。大都会の中で、どこか冷めた感じで佇む女性の感じが、歌い手である中森明菜とも重なって、映画の中のシーンのように情景が浮かんできます。
8位 風のマドリガル 南野陽子
(5位 10.7万枚 作詞 湯川れい子 作曲 井上大輔 1986年)★
ロシア民謡風のメロディーにのっているせいもあって、どこか信仰じみたような、或いは西洋の童話の世界のような、独特の世界を創り出している作品です。
7位 虹色スキャンダル 松本典子
(28位 2.1万枚 作詞 湯川れい子 作曲 久保田利伸 1986年)★
詩の意味よりもリズムと語感を重視した、湯川れい子のイメージとはちょっと離れた軽妙な歌詞になっています。しかも作曲が久保田利伸ということで、この組み合わせも意外に思えます。
6位 恋におちて Fall in love 小林明子
(1位 95.4万枚 作詞 湯川れい子 作曲 小林明子 1985年)★
社会的現象にもなったドラマの主題歌ということで、この年はどれほどこの曲を耳にしたことか。ドラマの内容とリンクさせながら、英語もふんだんに盛り込んで、まさに大人のラブソング。この曲の大ヒットには湯川れい子の作った歌詞も大いに貢献していることは間違いないでしょう。
5位 HEART BREAK 本田美奈子
(3位 7.8万枚 日本語詞 湯川れい子
作詞・作曲:John Wilson、Joe Jackson、Stephen Wilson 1987年)★
この頃の本田美奈子は尖った歌を好んで歌っていましたが、この曲は結構好きなのですよね。とにかくカッコいいし、女王様感がなんともいえない強気の歌詞がたまりません。湯川れい子の作詞家としての幅の広さを認識させられます。
4位 j・e・a・l・o・u・s・y 池田聡
(14位 7.8万枚 作詞 湯川れい子 作曲 タケカワユキヒデ 1987年)★
男の切ない恋心が嫉妬心となってひしひしと伝わってくる繊細な歌詞がタケカワユキヒデのメロディーと調和して、聴けば聴くほど切なさがつのってくる一曲となっています。
3位 六本木心中 アン・ルイス
(12位 29.6万枚 作詞 湯川れい子 作曲 NOBODY 1984年)★
任侠の世界のような雰囲気にあふれる激しいラブソングですが、アン・ルイスのいい意味でのケバケバしさにぴったりはまって、インパクトの強い作品になっています。繊細で静かな雰囲気から、派手で華やかな歌詞まで、とにかくどんな歌手にもその歌手に合った歌詞に仕上げてくる湯川れい子。アン・ルイスにはこのほか『あゝ無情』ほか何曲かで作詞をしています。
2位 センチメンタル・ジャーニー 松本伊代
(9位 34.3万枚 作詞 湯川れい子 作曲 筒美京平 1981年)★
この曲が今でもたびたびテレビなどで取り上げられるということは、もちろん松本伊代が芸能界で活躍を続けているということもありますが、やはり歌にもそれだけのインパクトがあったということ。そしてその中心が♪伊代はまだ16だから になるのでしょう。アイドルが自分の年齢を歌詞に盛り込むという事はある意味定番ではあったのですが、「私は」でなく「伊代は」としたことが、大勝利に繋がったわけです。
1位 街角トワイライト シャネルズ
(1位 71.7万枚 作詞 湯川れい子 作曲 井上忠夫 1981年)★
シャネルズについては『ランナウェイ』『ハリケーン』『トゥナイト』『涙のスウィート・チェリー』と多くのヒット曲を作詞。どれも味があっていい作品ですが、なんとか1曲に絞ってこの曲を選びました。夕暮れの街の中に見つけたかつての恋人らしき女性の影…、愛し合った日々を思い出しながらも、今も未練たらしく彼女を探してしまう男心を巧みに描いています。
【その他の主な作品】
稲垣潤一『ロング・バージョン』『雨のリグレット』、西村知美『初めまして、愛』、風間三姉妹『Remember』、近藤真彦『Just For You』、相楽ハル子『ヴァージン・ハート』、大西結花『シャドウ・ハンター』『チャンスは一度だけ』『哀しみのシャングリラ』『ミモザの奇蹟』、立花理佐『大人はわかってくれない』、西田ひかる『人生変えちゃう夏かもね』 など