80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.73
大江千里(作詞・作曲家)
80年代の後半から90年代前半にかけては、自らもたくさんのヒットを生み出すアーティストとして活躍。トレードマークの縁の目立つ眼鏡をかけた風貌が、他のイケイケ風アーティストとは一線を画し、優しさと品の良さがにじみ出てくる楽曲の良さもあって、女子大生、OLに絶大な人気を誇りました。他のアーティストへの作品でも、大江千里らしいやさしさに満ちた歌詞、メロディーが表れています。
大江千里作詞・作曲作・ベスト10
★=80年代発売
10位 さくら証書 八神純子
(圏外 作詞 八神純子、大江千里 作曲 八神純子、大江千里 2012年)
八神純子と大江千里という異色のコラボですが、ベテランならではの包容力にあふれた作品になっています。卒業式を迎えた息子に向けて歌った親目線で歌った歌詞になっていて、人生を重ねてきた重みがにじみ出ています。
9位 すき(Apricot Mix) 渡辺美里
(8位 8.0万枚 作詞 渡辺美里 作曲 大江千里 1989年)★
作曲のみを大江千里が担当。アルバム先行でアレンジを変えてのシングルカットということで、セールス的には当時の渡辺美里としてはいまいち。曲も地味目ですが、穏やかな夏の午後を感じさせる一曲になっています。
8位 スケッチブックを持ったまま 牧野由依
(38位 作詞 大江千里 作曲 大江千里 2008年)
蛙が鳴く道、駐輪場の風、とたん屋根をたたく夕立、土手沿いに聴こえる仲間達の声…学生時代を過ごした故郷の風景を思わせる描写が、ノスタルジーを誘います。大江千里らしい心に染み入るような一曲になっています。タイトルもいいですね。
7位 神様のいたずら 中島愛
(22位 作詞 大江千里 作曲 大江千里 2011年)
8位曲同様格子に、窓、竹細工、塩田、高台のポスト、団地裏、神社の鳥居などなど映像の浮かんでくるワードを巧みに使い、暖かく包み込むような優しい作品になっています。大江千里ならではの懐かしさを感じさせるメロディーと調和して心地よいです。
6位 10years 渡辺美里
(4位 15.0万枚 作詞 渡辺美里 作曲 大江千里 1988年)★
『君の弱さ』と両A面扱いの作品でこれも大江千里は作曲のみ。渡辺美里の歌詞と大江千里の曲は親和性が高く、歌詞自体、作詞大江千里といわれてもまったく違和感がないように思います。この曲は懐の深さを感じますね。
5位 ちいさなBreakin’ my heart 渡辺満里奈
(5位 6.8万枚 作詞 大江千里 作曲 大江千里 1987年)★
渡辺満里奈と大江千里ってどこか空気感が似ているような気がして、いい組み合わせだと思うのです。大江千里の繊細な気持ちを綴った歌詞が、渡辺満里奈自身を主人公にしたMVのワンシーンとして目に浮かんでくるようで、歌詞をよく聴いて鑑賞すると、じわじわ染み入ります。
4位 太陽がいっぱい 光GENJI
(1位 69.3万枚 作詞 大江千里 作曲 大江千里 1989年)★
光GENJIのシングルで2番目に売れた曲を大江千里が作っています。そして大江千里が作った自身の歌うものも含めた曲の中で、最も売上の多い作品にもなりました。大江千里夏らしい爽やかなラブソングで、それまでの繊細な少年のイメージから少しだけ大人になった彼らを上手に表現していたのではないでしょうか。
3位 Sonatine 松本伊代
(83位 0.5万枚 作詞 大江千里 作曲 大江千里 1988年)★
クリスマスでにぎわう街の中で偶然に再会した昔の恋人へのせつない気持ちを歌った作品です。派手ではないですけれど、微妙な女心が伝わってくるなかなかいい曲なのですが、セールス的には惨敗。全曲からも大きく順位を落とすなど、なぜこの曲がまったく売れなかったのか、残念でなりません。
2位 Pearl-White Eve 松田聖子
(1位 20.2万枚 作詞 松本隆 作曲 大江千里 1987年)★
こちらもクリスマスソング。クリスマスプレゼントは「わたし」的な内容は、当時の松田聖子の年齢からすると、ちょっと幼過ぎる感はありましたが、メロディーは聖夜に相応しい美しさになっていて、大江千里のメロディーメイカーとしての才を感じさせてくれます。
1位 夏が来た! 渡辺美里
(8位 19.2万枚 作詞 渡辺美里 作曲 大江千里 1991年)
夏シングルは渡辺美里の定番になっていて、名曲も多いのですが、そのラインアップの1曲がこの曲。夏休みに実家に帰って、久しぶりに過ごした二人の関係が深まっていく様子を描いていますが、その二人のいる情景が浮かんできます。同じ渡辺美里への提供曲である8位、6位曲に比べてもテンポがよくキャッチーで、どこか懐かしさをも感じさせてくれます。