80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.54

 

鈴木キサブロー(作曲家)

70年代から80年代を中心に、多くのヒット曲を作曲した作曲家です。正統派の日本の歌謡曲といった堂々と正攻法で勝負してくるような作品が多い印象で、鈴木キサブロー作曲ときくと、不思議な安心感がありました。そんな中から、私の好みにセールスの実績を加味した10曲を選びました。

 

鈴木キサブロー作曲作・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 約束 渡辺徹

(2位 54.4万枚 作詞 大津あきら 作曲 鈴木キサブロー 1982年)

渡辺徹最大のヒット曲を鈴木キサブローが手掛けています。ドラマでの人気、印象的なCMとの相乗効果で一躍人気スターへとのし上がった渡辺徹ですが、この曲が果たした力も当然大きかったのです。曲としては、変にかっこをつけないで、ど真ん中の歌謡曲で勝負してきたところに鈴木キサブローらしさを感じさせます。

 

9位 輝きながら… 徳永英明

(4位 万枚 作詞 大津あきら 作曲 鈴木キサブロー 1987年)

徳永英明がブレイクしたシングル楽曲がこれで、ほとんどのシングル作品を自身で作曲していた徳永英明でしたが、この曲は数少ないプロの作家の作品。こちらもCMに使われることで多くの人の耳に届き、大ヒットとなりました。10位と同様に大津あきらが作詞。相性がよいのかもしれません。

 

8位 檸檬 岩崎宏美  

(16位 13.6万枚 作詞 松本隆 作曲 鈴木キサブロー 1982年)

岩崎宏美へのシングル曲の提供はこれのみですが、派手ではないけれども、さらりとした良いメロディーの作品になっていて、個人的に好きな曲です。

 

7位 男は道化師さ 嶋大輔 

(18位 7.3万枚 作詞 嵐ヨシユキ 作曲 鈴木キサブロー 1983年)

それまでは銀蠅の諸先輩の作品を歌っていた嶋大輔ですが、初めてプロの作曲家を起用したのがこの作品。女性の名前を連呼する歌詞が印象に強く残る作品ですが、曲の方もキャッチーでいい感じに仕上がっています。トップ10入りは逃してしまいましたが、嶋大輔らしさは存分に表現できているでしょう。

 

6位 ベストセラー・サマー TUBE

(13位 11.4万枚 作詞 三浦徳子 作曲 鈴木キサブロー 1985年)

デビュー曲からすでに夏バンドだったTUBE。この頃は「THE TUBE」だったのですね。個人的にも思い出のある曲です。どこかせわしなさを感じる歌謡曲風味のメロディーが、不思議と親しみを誘う個性的な楽曲になっています。続く『センチメンタルに首ったけ』も鈴木キサブローが手掛けました。

 

5位 バージンブルー SALLY 

(6位 21.4万枚 作詞 さがらよしゆき 作曲 鈴木キサブロー 1984年)

印象的なCMにも起用され、当時次々に出てきたC-C-Bやチェッカーズなどのアイドルバンドの流れの中で、SALLYのこの曲も大ヒット。ロックバントではありますが、鈴木キサブローらしい歌謡曲テイストがこの曲でも取り入れられて、耳なじみのよい一曲になっています。そのほか『愛しのマリア』『悲しきYoung Love』も鈴木キサブローが作曲。

 

4位 ジプシー 西城秀樹 

(15位 13.6万枚 作詞 森雪之丞 作曲 鈴木キサブロー 1981年)

この曲を最初に聴いた時は、曲のカッコよさにしびれて、これは売れるだろうと思ったのですが、セールス的にはイマイチでした。ただ秀樹本人もこの曲は気に入っていたようで、すぐに紅白でも歌いました。鈴木キサブローとしては前作『センチメンタル・ガール』に続く秀樹への曲の提供となりましたが、この『ジプシー』の方が圧倒的に良い出来だと思います。

 

3位 DESIRE-情熱- 中森明菜 

(1位 51.6万枚 作詞 阿木燿子 作曲 鈴木キサブロー 1986年)

鈴木キサブローの代表曲といえる存在がこれでしょう。同時に中森明菜の代表曲でもあり、今でも中森明菜の紹介では必ずこの曲が流されます。初めて聴いた時からカッコよい曲だとは思いましたが、レコード大賞も受賞するなど、どんどん偉大な曲に成り上がっていき、歌い継がれる名曲になったわけです。

 

2位 想い出がいっぱい H2O  

(6位 43.0万枚 作詞 阿木燿子 作曲 鈴木キサブロー 1983年)

4位や3位のようなカッコいい鈴木キサブローもあれば、この曲のように穏やかにじわじわと心に響いてくるメロディーもまた鈴木キサブローなのですね。こちらも長く歌い継がれる名曲として、今でもときおり耳にする歌です。けっして派手ではないですが、日本人の琴線に触れるようなメロディーをしっかり書き上げてきます。

 

1位 夢絆 近藤真彦

(2位 16.5万枚 作詞 売野雅勇 作曲 鈴木キサブロー 1985年)

近藤真彦には『大将』も作曲していますが、やはりじっくりと歌って聴かせるせつないこのラブソングが大好きです。カラオケもよく歌ったなぁ。♪baby青春てやつは…なんてくさい歌詞なのですけれど、当時のマッチが大人への歌手へといろいろな曲に挑戦していこうという意思が伝わってきて、いい曲なんですよね。1位です。

 

【その他の主な作品】

沢田研二『酒場でDABADA』、清水宏次朗『TOUCH DOWN』、南野陽子『悲しみモニュメント』、三好鉄生『涙をふいて』、高橋真梨子『for you…』、伊藤さやか『天使と悪魔ナンパされたい編』、伊藤麻衣子『見えない翼』、今井美樹『黄昏のモノローグ』、KATSUMI『It‘s my JAL』、真璃子『私星伝説』『不良少女にもなれなくて』などなど多数。