80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.33

 

阿久悠(作詞家)

70年代に一世を風靡した作詞家阿久悠。70年代のようにビッグヒット連発というわけではないものの、80年代でもヒット曲を輩出するなど、昭和を代表する作詞家です。今回は80年代限定でのベスト10です。

 

阿久悠作詞曲・ベスト10  80年代限定

★=80年代発売

 

その前に70年代でのベスト10を、1アーティスト1曲限定で。

番外 ワンダー・ブギ 石野真子 

番外 どうにもとまらない 山本リンダ

10位 ロマンス 岩崎宏美  1位 88.7万枚

9位 青春時代 森田公一とトップギャラン 1位 101.8万枚

8位 北の宿から 都はるみ 1位 143.5万枚

7位 恋のダイヤル6700 フィンガー5 1位 83.7万枚 

6位 また逢う日まで 尾崎紀世彦 1位 95.6万枚

5位 津軽海峡・冬景色 石川さゆり 6位 72.7万枚

4位 舟唄 八代亜紀 15位 38.4万枚

3位 ブルースカイブルー 西城秀樹 3位 29.3万枚

2位 勝手にしやがれ 沢田研二 1位 89.3万枚

1位 UFO ピンク・レディー 1位 155.4万枚

恐ろしいほどのビッグヒットの数々。

特に、ピンク・レディー、沢田研二、西城秀樹にはヒット曲を量産しています。

では本題の80年代の10曲。

 

10位 夏ざかりほの字組 Toshi&Naoko 

(5位 20.1万枚 作詞 阿久悠 作曲 筒美京平 1985年)

研ナオコと田原俊彦の異色デュエットに詩を提供。「ほの字」という当時としてもやや古臭い表現を敢えて使ったところがこの作品のみそで、それによりコミカルな感じを演出できています。カラオケが広がる中で、貴重なポップス系のデュエット曲ということでも重宝されました。

 

9位 恋するような友情を シブがき隊 

(13位 5.9万枚 作詞 阿久悠 作曲 都志見隆 1988年)

この曲のリリースのあとで解散を発表したシブがき隊。結果的にファンの心を揺さぶるような歌詞になっています。だいぶ“くさい歌詞ではありますが、シブがき隊が歌うたとあまり違和感なく受け取ることができます。

 

8位 色つきの女でいてくれよ ザ・タイガース 

(4位 42.7万枚 作詞 阿久悠 作曲 森本太郎 1982年)

ザ・タイガースの復活企画の第2弾シングルで、阿久悠が作詞をしています。第1弾に比べて歌詞もメロディーも華やかでキャッチーになったことで、売上もジャンプアップ。かつて好きだったと思われる思い出の中の美少女に送るようなフレーズが、グループサウンズ時代をほうふつさせるような歌詞になっています。

 

7位 いちごがポロリ 本田理沙 

(34位 1.1万枚 作詞 阿久悠 作曲 NOBODY 1988年)

70年代の『ワンダー・ブギ』や『OH!ギャル』と同じ路線の“ポロリソングを80年代でも書いてしまった阿久悠。時々書いてみたくなるのでしょうね。阿久悠のエロじじい的一面が如実に表れた一作です。

 

6位 熱き心に 小林旭 

(12位 37.6万枚 作詞 阿久悠 作曲 大滝詠一 1985年)

大滝詠一の曲に阿久悠が詩をつけたという組み合わせが目を引きます。北国への旅の中で思い出すかつて愛した女性。時間的にも空間的にもスケール感を抱かせる歌詞とメロディーが心に響いてきます。

 

5位 素敵にシンデレラ・コンプレックス 郷ひろみ 

(9位 19.3万枚 作詞 阿久悠 作曲 鈴木康博 1983年)

70年代には『林檎殺人事件』『いつも心に太陽を』で郷ひろみへ詩を提供しましたが、それ以来の提供がこの曲。簡単に言ってしまえば女性賛歌的な歌詞になっていて、意味よりも言葉の感度やインパクトを重視した歌詞になっているように思います。

 

4位 KID 田原俊彦 

(3位 6.5万枚 作詞 阿久悠 作曲 井上ヨシマサ 1987年)

曲調は1960年代チックなのですが、歌詞はかなり風刺の利いたものになっていて、見かけばかりを気にして中性化している若い男たちを茶化し、そして檄を飛ばすような内容になっています。これを田原俊彦が歌うかといった歌詞を敢えて歌わせるところに戦略的なものがあったのかもしれません。

 

3位 居酒屋 木の実ナナ&五木ひろし 

(29位 19.7万枚 作詞 阿久悠 作曲 大野克夫 1982年)

セールス的には目立った感じではないですが、カラオケではデュエットの定番として生き続けている異色デュエットソング。居酒屋でたまたま出会った男女の、一夜限りの大人の会話を歌詞にした、なかなかしゃれた歌詞です。大人になるとこの歌詞の味わいに気づくところはありますね。五木ひろしにはほかに『愛し続けるボレロ』『契り』で作詞しています。

 

 

2位 騎士道 田原俊彦 

(1位 25.8万枚 作詞 阿久悠 作曲 つのだひろ 1984年)

これは中世の騎士にでもなったような気分で高嶺の花の君への熱い思いを歌った歌詞になっています。独特の世界観を作り出すのはいかにも阿久悠的で、歌うと映画の主人公に出なった気持ちにもなります。メロディーもカッコよくて、個人的に好きな曲でもあります。田原俊彦には4位のほか『Hardにやさしく』『あッ』『ベルエポックによろしく』を作詞しています。

 

1位 麗人 沢田研二 

(10位 22.0万枚 作詞 阿久悠 作曲 沢田研二 1982年)

70年代のジュリーのヒット曲の多くに関わっている阿久悠ですが、80年代ではやはりこの曲がいいです。「麗人」といった当時でもちょっと古い感じの単語をタイトルに使い、一方で歌詞にはその言葉を一切使わずに「麗人」を表現するところが心憎いです。またいきなり《結婚という言葉はタブーにしよう》とドキッとさせられる印象的なフレーズで始まるなど、阿久悠らしさも満載。

 

【その他の主な作品】

『No.1』『第二章・くちづけ』『めらんこりい白書』柏原芳恵、『熱風王子』『気絶するほど悩ましい』沖田浩之、『鳥の詩』杉田かおる、『アンサーソングは哀愁』早見優など。