80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.31

 

来生えつこ(作詞家)

売れっ子作詞家として、多くのヒット曲を生み出してきました。実弟来生たかおとのコンビは有名ですが、他の作曲家との仕事も結構あって、80年代を代表する女性作詞家の一人と言っていいでしょう。

 

来生えつこ作曲作・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 マイ・ラグジュアリー・ナイト しばたはつみ 

(17位 20.9万枚 作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお 1977年)

マツダのCMで脚光を浴び、紅白歌合戦でも歌われた作品。おそらく来生姉弟の最初のヒット曲ではないでしょうか。まさに大人の歌という印象で、来生えつこの最も得意とする世界のような気がします。

 

9位 セカンド・ラブ 中森明菜 

(1位 76.6万枚 作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお 1982年)

結局中森明菜のシングルで一番売上が多かったのがこの曲です。初期の中森明菜にとっては、来生姉弟の果たした役割は大きく、ハード系とバラード系を交互に歌う中、バラード系の『スローモーション』『トワイライト-夕暮れ便り-』とこの曲を姉弟が作詞作曲を行っています。その中でもあどけなさの残る中森明菜がせつせつと歌うこの曲の歌詞は、等身大の彼女が描かれていて、感情移入しやすい歌詞になっています。

 

8位 セーラー服と機関銃 薬師丸ひろ子 

(1位 86.5万枚 作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお 1981年)

一世を風靡した作品で、来生たかおも一部の歌詞を変えて『夢の途中』のタイトルでヒットさせています。《恋もコンクリートの籠の中》とか《スーツケースいっぱいにつめこんだ希望という名の重い荷物》などの比喩的なフレーズがいろいろ想像させて、不思議な魅力を放っています。薬師丸ひろ子には他に『語りつぐ愛に』も作詞を手掛けています。 

 

7位 チェック・ポイント 藤井一子 

(14位 9.6万枚 作詞 来生えつこ 作詞 筒美京平 1986年)

同じアイドルへの作詞でも、中森明菜とは全然違う路線できちんと仕上げてくるのはさすがプロの作詞家。どちらかというとツッパリ系のとがったイメージで売り出そうとしている藤井一子に対して、ちょっと強気でませた感じの女の子の目線の歌詞に仕上げています。そして作曲が筒美京平というのも珍しい組み合わせ。

 

6位 シルエット・ロマンス 大橋純子 

(7位 42.8万枚 作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお 1981年)

10位と同じ路線の大人の歌です。大橋純子の歌唱力を際立たせる妖しく艶やかな歌詞は来生えつこの得意とするところではないでしょうか。じわじわと火がついて大ヒットに結びつきました。

 

5位 ピエロ 田原俊彦 

(1位 33.0万枚 作詞 来生えつこ 作曲 網倉一也 1983年)

男性アイドルへの提供は多くないのですが、田原俊彦に一曲作詞をしていました。振られた自分をピエロに例えた自虐的な傷心ソングですが、来生えつこがジャニーズに詩を書くとこんな感じになるのですね。雨模様の天気を自分の心模様と重ねて《からりと晴れろよ》とちょっと強がった感じが、それまでのトシちゃんとは違った一面を表していて、なかなか面白かったです。

 

4位 気分は逆光線 来生たかお

 (19位 14.1万枚 作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお 1982年)

実弟の曲からも一曲。『夢の途中』で一躍話題になった来生たかおの次の曲がこれ。さすが実の姉だけあって、けだるい感じのメロディーに合う言葉をぴったりと見つけてくるのですよね。夏のけだるさと陽の強さの中でよろめく大人の恋…独特の雰囲気が不思議に心地よく、姉弟ならではの世界観を作り出しています。 

 

3位 サザン・ウィンド 中森明菜 

(1位 54.4万枚 作詞 来生えつこ 作曲 玉置浩二 1984年)

中森明菜への提供詞の中では唯一実弟以外の作曲家との組み合わせのシングルです。南国でのアバンチュールを描いたおしゃれな雰囲気の歌詞が、玉置浩二のこれまた南国ムードにあふれたメロディーにピッタリとはまり、中森明菜のシングルの中では異彩を放つ作品に仕上がっています。

 

2位 セクシー・ユー 郷ひろみ 

(11位 20.4万枚 作詞 来生えつこ 作曲 南佳孝 1980年)

元歌の南佳孝『モンロー・ウォーク』も来生えつこですが、歌詞は結構変えています。当時思春期を迎えようとしている年頃の私にとっては、なかなか刺激的な歌詞で、これを書いたのが来生えつこだったのですね。男性がこの詩を書いたら、ちょっと眉をひそめられそうですが、女性が書いたと知れば不思議とカッコよく感じられるのです。

 

1位 はぐれそうな天使 岡村孝子 

(34位 3.8万枚 作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお 1986年)

名曲ですが、ソロ歌手岡村孝子の知名度がまだそれほどでないときだったことで、セールス的に伸びなかったのが残念。自分の中でうごめいている恋心を持て余し、海辺に来ても心の中はあの人のことばかり、そんなどうしようもない恋心が緊張感をもって伝わってくる歌詞が秀逸。もちろんメロディーもよくて、岡村孝子としては珍しい自作ではない曲ですが、だからこそ際立った作品になっています。

 

【その他の主な作品】

上記で触れていない主な曲としては、『ストロー・タッチの恋』『疑問符』河合奈保子、『ORACIÓN -祈り-』斉藤由貴・来生たかお、『夢色のメッセージ』『見えてますか、夢』西村知美、『恋のバイオリズム』松本伊代、『さよならのめまい』『悲しみモニュメント』南野陽子、『噂になってもいい』武田久美子、『さよならを過ぎて』酒井法子、『ときめきのアクシデント』『悲しいくらいほんとの話』原田知世など。