80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.29
吉田拓郎(作曲家)
いうまでもなく大御所ミュージシャンですが、他のアーティストーもちょくちょく曲の提供をしております。男性アイドル、女性アイドルへも曲を提供していて、ヒットにも結び付いています。そんな中から10曲を選んでみました。入江剣名義の作品もあります。
吉田拓郎作曲作・ベスト10
★=80年代発売
10位 いつか街で会ったなら 中村雅俊
(6位 42.3万枚 作詞 喜多条忠 作曲 吉田拓郎 1975年)
青春スター中村雅俊の3rdシングルを吉田拓郎が作曲。ドラマの挿入歌にも使われたこともあって多くの売上枚数を残しました。当時の中村雅俊のイメージと吉田拓郎の作る歌の雰囲気はマッチしていて、まったく違和感のない、中村雅俊らしい一曲になっています。
9位 幸福なんてほしくないわ 酒井法子
(10位 6.4万枚 作詞 松本隆 作曲 入江剣 1990年)
吉田拓郎作曲だと言われなければ気づかない曲で、なぜかペンネームで提供しています。とにかく吉田拓郎と酒井法子のイメージが重ならないですし、曲からも拓郎節のようなものがあまり感じられません。大人の歌手へと転換を図っている頃の酒井法子ですが、この曲については可愛いアイドルアイドルした感じに原点回帰しているようなところも見受けられ、敢えて拓郎っぽさを消すためのペンネームだったのかもしれません。
8位 全部抱きしめて KinKi Kids
(1位 115.9万枚 作詞 康珍化 作曲 吉田拓郎 1997年)
テレビ番組きっかけでKinKi Kidsへの曲の提供となったわけで、この歌は吉田拓郎の他のアーティストへの提供曲としては、最も知られた存在でしょう。この曲も、聴くとやっぱり拓郎だなと思わせるようなメロディーで、90年代後半においては懐かしささえ感じさせましたが、きちんとミリオンセラーを達成。
7位 あぁ、グッと 近藤真彦
(4位 10.2万枚 作詞 康珍化 作曲 吉田拓郎 1988年)★
1987年から1988年の近藤真彦は、昭和30年代から40年代にかけての歌謡曲っぽい歌を中心にシングル曲を選んでいたような印象で、その中のひとつがこの曲ではないでしょうか。この曲も拓郎節炸裂。いかにもっていん感じです。
6位 僕笑っちゃいます 風見慎吾
(6位 33.0万枚 作詞 欽ちゃんバンド、森雪之丞 作曲 吉田拓郎 1983年)★
このコミカルな曲を吉田拓郎が作曲していたのは意外でしたが、このランキングの中の他の曲とはちょっとイメージが違う印象です。拓郎は作曲だけなので、どちらが先かは知りませんが、風見慎吾がブレイクするきっかけとなった曲なので、そういう意味ではきっちり結果を残しています。
5位 襟裳岬 森進一
(6位 46.2万枚 作詞 岡本おさみ 作曲 吉田拓郎 1974年)
演歌の森進一が吉田拓郎の歌を歌ったということだけでも話題になったのですが、曲もよくてレコード大賞を受賞。演歌に抵抗感のあるひとにとっても、この曲はとっつきやすかったのではないでしょうか。森進一にとって大きな挑戦だったことでしょうが、見事に成功。これがのちに『冬のリヴィエラ』にも繋がったのではないでしょうか。
4位 やさしい悪魔 キャンディーズ
(4位 39.0万枚 作詞 喜多条忠 作曲 吉田拓郎 1977年)
キャンディーズには2曲提供しているうちの一曲ですが、この曲にはあまり吉田拓郎っぽさが感じられず、完全に職業作曲家に徹しているような印象です。キャンディーズからすると大人の曲に挑戦している最中というところで、派手ではないけれど味のある良い曲に仕上がっています。当時聴くよりも今になって改めて聴いたほうが、この曲の良さを認識できるということは、やっぱり大人の曲だったのでしょう。
3位 我が良き友よ かまやつひろし
(1位 70.1万枚 作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎 1975年)
名曲です。作品としては吉田拓郎らしさがあふれていて、70年代のテイストにあふれた作品。そしてこれがかまやつひろしのキャラクターとも見事にマッチして、かまやつひろしといえばこの曲といったものになっていますね。
2位 聖・少女 西城秀樹
(9位 17.4万枚 作詞 松本隆 作曲 吉田拓郎 1982年)★
広島出身の縁で、アイドルとしての西城秀樹の晩期の作品に吉田拓郎が咬んでいます。西城秀樹にとってはオリコントップ10入りした最後のシングルでもありますが、夏らしいポップでさわやかなラブソングになっています。ちらちらと拓郎らしさはところどころに見え隠れしていますが、ポップなアレンジと秀樹のアイドル性で、ちゃんと秀樹の歌になりました。
1位 アン・ドウ・トロワ キャンディーズ
(7位 28.1万枚 作詞 喜多条忠 作曲 吉田拓郎 1977年)
ミディアムテンポでパッと聴いたところでは派手な印象はないのですが、愁いを帯びたメロディーが秀逸で、吉田拓郎の提供曲の中では一番好きです。『やさしい悪魔』同様に、吉田拓郎らしさを前面に押し出さず、キャンディーズに向けて書かれたという印象を受けます。フランス語の1.2.3をこの曲で覚えたという、子供の勉強にもいい(?)歌でした。
【その他の主な作品】
ランキングもれの主な曲としては、『メランコリー』梓みちよ、『狼なんか怖くない』『わたしの首領』石野真子、『失恋魔術師』太田裕美、『恋のバイオリズム』松本伊代、『ハート通信』石川ひとみ などがあります。