80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.28
山川啓介(作詞家)
1970年代から80年代前半にかけて活躍した作詞家です。作品をみるとわりと正攻法で、あまり気を衒ったような感じではありません。誰にも伝わるような堅実で心に響く作詞でヒット曲を数々生み出してきました。
山川啓介作詞曲・ベスト10
★=80年代発売
10位 戦士の休息 町田義人
(6位 29.5万枚 作詞 山川啓介 作曲 大野雄二 1978年)
映画『野性の証明』の主題歌になりヒットした作品。短く端的な歌詞ではありますが、映画のストーリーとも重ねがら、人生を生きる男を戦士に例えた、この時代らしい作品になっています。町田義人にとっても唯一のヒット曲となりました。
9位 サマー・イン・サマー 八神純子
(28位 10.6万枚 作詞 山川啓介 作曲 八神純子 1982年)★
八神純子に山川啓介が提供した作品で最も売れたのは『Mr.ブルー~私の地球』ですが、作品として好きなのはこの作品。夏のけだるいムードの中で、その暑さのなかに溶けていきそうな大人の恋心を、少ない言葉の中でも見事に表現しています。
8位 グッド・ラック 野口五郎
(4位 22.5万枚 作詞 山川啓介 作曲 筒美京平 1978年)
野口五郎のシングル曲への詩の提供はこの作品のみですが、しっかりとヒットしています。当時の賞レースでもよく歌われていたのを覚えています。男が別れを決めて部屋を出ていくときの気持ちを歌った曲で、野口五郎が大人の歌手へと階段を一歩上がっていくのに大いに貢献しました。筒美京平の作曲したメロディーもあっていい曲です。
7位 南回帰線 堀内孝雄・滝ともはる
(4位 37.6万枚 作詞 山川啓介 作曲 堀内孝雄 1980年)★
男同士の友情を描いた、なかなか“くさい”歌詞であります。当時母体とは別に、ソロで歌ったり、デュオで歌ったりいろいろな形で活動を広げていた堀内孝雄に山川啓介が歌詞を提供。《若さとは幸せを 疑いながら生きること》なんて照れずに言えてしまうところが山川啓介らしくもあります。
6位 哀愁のカサブランカ 郷ひろみ
(2位 50.1万枚 日本語詞 山川啓介 作曲 B. Higgins, S. Limbo, J. Healy1982年)★
カバー曲の日本語詞を山川啓介が担当。当時カバー曲に挑むことが多かった郷ひろみには、このほか『ロマンス』でも日本語詞を山川啓介が担当しています。テレビの出演も控えていて、少々とんがっていたこの時代の郷ひろみに対し、大人の歌手として変貌していく時期に相応しい愛の歌になっています。
5位 時間よ止まれ 矢沢永吉
(1位 63.9万枚 作詞 山川啓介 作曲 矢沢永吉 1978年)
矢沢永吉は作詞についてはプロの作詞家に依頼することが圧倒的に多く、その時代の売れっ子作詞家が代わる代わる担当している感じですが、この大ヒット曲を作詞しているのが山川啓介なのですね。夏のけだるさの中での人生を賭けたくなるような熱い恋を綴った歌詞で、雰囲気抜群。
4位 ふれあい 中村雅俊
(1位 126.5万枚 作詞 山川啓介 作曲 いずみたく 1974年)
そのアーティストにとっての代表曲となる作品を作詞していることが多い山川啓介ですが、この曲もそんな1つ。俳優としても歌手としても多くのヒットを生み出した中村雅俊ですが、ミリオンセラーとなったこの曲の存在はやはり欠かすことができないでしょう。言葉数は少なくても、じわじわと心に染み入るような歌詞はまさに山川啓介の得意とするところ。他に『時代おくれの恋人たち』でも作詞しています。
3位 聖母たちのララバイ 岩崎宏美
(1位 80.4万枚 作詞 山川啓介 作曲 木森敏之 Jhon Scot 1982年)★
こちらも岩崎宏美の代表曲。社会という線上の中で傷つき疲れ切った男たちを優しく包み込むような歌詞を岩崎宏美の抜群の歌唱力で聴くと、まるで母親の腕に包まれて眠る赤ちゃんのような気持ちになってくるから不思議です。このあと『家路』『橋』『決心』でも詩を提供することとなります。
2位 太陽がくれた季節 青い三角定規
(1位 50.2万枚 作詞 山川啓介 作曲 いずみたく 1972年)
これほどど真ん中直球の青春ソングってあるのかというほどにストレートな青春ソングです。青春ドラマが人気を博した1970年代前半らしさ全開といった感じですが、これも青い三角定規の代名詞となるようなヒットとなりました。
1位 悲しき友情 西城秀樹
(6位 27.4万枚 作詞 山川啓介 作曲 筒美京平 1980年)★
この時期『勇気があれば』『愛の園』と続けて山川啓介が西城秀樹に詩を提供していましたが、中でもこの曲は、男同士の友情が一人の女性を巡って崩れていく様を描いたドラマティックな展開になっています。筒美京平の曲もまた秀逸で、先の読めないメロディーの展開が、よりドラマティック性を盛り立てていて、山川啓介のナンバー1とさせていただきました。