80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.26

 

売野雅勇(作詞家)

言わずと知れた80年代を代表する作詞家です。数多くのヒット曲を生み出してきましたが、同じく80年代を彩った松本隆とは対照的に、刺激的でインパクトのある尖った歌詞でらしさを出していて印象が強いです。近年、80年代の音楽を特集した番組などで、当時の裏話をよく聞かせてくれています。麻生麗二に名前で作詞している曲も。

 

売野雅勇作詞曲・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 2億4千万の瞳 郷ひろみ 

(7位 21.3万枚 作詞 売野雅勇 作曲 井上大輔 1984年)

当時はなんてへんてこな歌なんだ、完全に遊んでいるでしょうと思っていたのですが、それが40年近く経った今でも歌われる曲になるとは思いもしませんでした。それだけ売野雅勇に先を見る目があったということでしょう。もっともこの歌、変なのは歌詞そのものというよりは、コーラスなんですよね。♪オークセンマン オークセンマン のところなのですが、億千万なんて言葉は実際にはないのですよね。2億4千万の数字を省略したらこうなったって感じで。

 

9位 好きと言いなさい 本田美奈子 

(21位 6.2万枚 売野雅勇 作曲 筒美京平 1985年)

まだブレイク前の本田美奈子でしたが、タイトルにもなっているその一言で、もうキュンとしちゃいます。《いじめてあげる A-HA-HA 本気になったら 負けそうだから あなたから先に 好きだと言いなさい》と、好きな相手になんとか相手から好きだと言わせたい乙女心を、印象的な言葉で表現していて、特にファンにはたまらないのでは。結局本田美奈子はこの路線を続けなかったのですが、この路線ももっと見たかったです。

 

8位 ケジメなさい 近藤真彦 

(1位 32.7万枚 売野雅勇 作曲 馬飼野康二 1984年)

近藤真彦には1984~1986年にかけて集中的に歌詞を提供していましたが、その中でもインパクトのある言葉で売野雅勇らしさが存分に出ていたのがこの曲。ちょっとした流行語でも狙ったのかとも思われた「ケジメなさい」というタイトル。歌詞も言葉遊びにあふれていて、かなり楽しんで作っている感じが伝わってきます。そのほか『一番野郎』『夢絆』『大将』『純情物語』の作詞を行っています。

 

7位 Song for USA チェッカーズ 

(1位 32.6万枚 売野雅勇 作曲 芹澤廣明 1986年)

初期のチェッカーズに多く歌詞を提供してきた売野雅勇でしたが、チェッカーズが自作曲を歌うようになる前の最後の作詞曲がこれ。売野雅勇としてはかなり情感に訴えたような歌になっていて、アメリカへ夢を馳せらせた10代の頃を思い返しながら、星の群れに君への思いを重ねて歌い上げた青春ソングの佳曲となっています。このほか『涙のリクエスト』『哀しくてジェラシー』『星屑のステージ』『ジュリアに傷心』『あの娘とスキャンダル』『俺たちのロカビリーナイト』『OH!!POP STAR』を作詞し、チェッカーズの土台を作り上げるのに大いに貢献しました。

 

6位 め組の人 ラッツ&スター 

(1位 62.2万枚 売野雅勇 作曲 井上大輔 1983年)

ラッツ&スターには麻生麗二名義で作詞している売野雅勇ですが、シャネルズからラッツ&スターに改名して最初の曲で大ヒット。化粧品のCMソングということで、インパクトのあるサビのフレーズと、ラッツの振り付けがうまくマッチして、改名が大成功との印象付けに成功しました。夏のビーチにぴったりなキャッチーな歌詞は売野雅勇らしさ全開。

 

5位 コントロール 河合奈保子 

(7位 15.0万枚 売野雅勇 作曲 八神純子 1984年)

河合奈保子には多くの詩を提供している売野雅勇ですが、この曲はあなたを思う気持ちが大きくなりすぎて、自分で制御不可能になっている焦燥感のようなものがビシビシと伝わってくるから私は大好きです。このほか『エスカレーション』『UNバランス』『唇のプライバシー』『北駅のソリチュード』ジェラス・トレイン』『デビュー Fly To Love』『ラヴェンダー・リップス』『THROUGH THE WINDOW』『涙のハリウッド』『刹那の夏』といったヒット曲を作詞しています。

 

4位 最後のHoly Night 杉山清貴 

(2位 25.3万枚 売野雅勇 作曲 杉山清貴 1986年)

ソロになった杉山清貴に詩を提供した最初の曲がこのクリスマスソングです。この年のクリスマスシーズンには、街中のあちらこちらでこの曲が流れていました。恋人との最後のクリスマスを歌ったせつなく悲しい歌なのですが、そこにはいっぱいの愛を感じさせてくれて、とてもムードのあるクリスマスに相応しい歌詞になっています。杉山清貴にはこの次のシングル『水の中のAnswer』の作詞もしています。

 

3位 喝!  シブがき隊

(1位 25.2万枚 売野雅勇 作曲 後藤次利 1984年)

ジブがき隊のチョイ悪青春路線からジャパネスク路線への移行期を支えたのが売野雅勇ですが、その中でも冒頭の《ウ~~喝!》が強烈なインパクトを残したシブがき隊唯一のオリコン1位獲得曲がこれ。『処女的衝撃』以降のチョイ悪路線の集大成的な曲ともいえるでしょう。真心をもてあそんだひと夏で終わらせた恋を今さらながら後悔しているという、俺は変わったんだ的な感じの歌詞。ティーンには刺激的な表現をおり込んだ売野雅勇得意の分野でしょう。シブがき隊にはそのほかチョイ悪路線『挑発』、ジャパネスク路線『アッパレ!フジヤマ』『サムライ・ニッポン』を作詞。

 

2位 少女A 中森明菜

(5位 39.6万枚 売野雅勇 作曲 芹澤廣明 1982年)

中森明菜の初期のツッパリ路線を支えたのが売野雅勇で、来生姉弟の曲と交互に起用していったことで大成功。中でも強烈なインパクトをのこしたこの作品は、売野雅勇の中でも結果として大きな業績となったといえるでしょう。この刺激的な歌詞に味をしめてか、この路線が80年代の売野雅勇のひとつの専売特許的なものになりました。『1/2の神話』『禁区』『十戒1984』も売野雅勇の作詞。 

 

1位 ラ・ヴィアンローズ 吉川晃司

 (4位 19.9万枚 売野雅勇 作曲 大沢誉志幸 1984年)

『サヨナラは八月のララバイ』に続いて吉川晃司のシングル曲の作詞を担当した売野雅勇。この2曲については得意の刺激ワードは控えめに、どこか哀愁を感じさせる正攻法のラブソングになっています。特にこの曲は、プールサイドでカクテルを飲みながら過ごす夏の午後のひと時のけだるい感じがとても心地よく響いてきて、売野雅勇は正攻法でもいけるのだというところを十分に見せつけてくれます。個人的に大好きな曲です。

 

【その他の主な作品】

とにかくたくさんの作詞をしているので、上記以外のアーティストから主要な作品を列挙しておきます。

『恋ほど素敵なショーはない』『ラストダンスには早過ぎる』『プリテンダー』岩崎良美

『微熱かナ』伊藤麻衣子

『夏のクラクション』『思い出のビーチクラブ』稲垣潤一

『六本木純情派』『湾岸太陽族』『フラミンゴinパラダイス』『さよならの果実たち』『北風のキャロル』『ストレンジャーtonight』『スターダスト・ドリーム』『湘南ハートブレイク』 荻野目洋子

『蒼いメモリーズ』 内海和子

『とりあえずボディ・トーク』『おまえにマラリア』 沖田浩之

『SuperChance』『 Miss Lonely Eyes 』『Stay Girl Stay Pure』  1986OMEGA TRIBE

『Down Town Mystery』『アクアマリンのままでいて』 カルロス・トシキ&オメガトライブ

『Say Yes』『アイドルを探せ』『Nile in Blue』『ガラスの草原』 菊池桃子

『プロフィール』 倉沢淳美

『悲しいな』 杉浦幸

『シンデレラたちへの伝言』『約束』 高井麻巳子

『エル・オー・ヴィ・愛・N・G』 田原俊彦

『Woman』『You and I』 中西圭一

『砂の果実』 中谷美紀with 坂本龍一

『青春の忘れ物』『夢千秒』『ジャックナイフの夏』 堀ちえみ

『微妙なとこネ』 松居直美

『ビリーヴ』 松本伊代

『水の星へ愛をこめて』 森口博子

『PURE GOLD』『SOMEBODYS NIGHT』 矢沢永吉

『背番号のないエース』 ラフ&レディ