80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.24

 

篠原仁志(作詞家)

作詞や訳詞で地味にヒット曲に携わっていた篠原仁志。そもそもはフォーク系バンドがスタートでしたが、解散後作詞家としての活動がメインになっていったというあるあるパターン。Heart Boxの名義で曲を提供しているものもあります。

 

篠原仁志作詞・訳詞曲・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 ヴィーナス 長山洋子 

(10位 16.0万枚 日本語詞 篠原仁志 作詞・作曲 ロビー・レーベン 1986年)

カバー曲になりますので、篠原仁志は訳詞ということになります。長山洋子としては初のオリコントップ10入りのシングル曲となったわけで、いろいろ試行錯誤した末に、この路線でというのが見つかったというところだったのでしょう。元の詩を生かしながらの訳詞ということで、思い切った感じにはなりませんが、手堅い仕事になっています。

 

9位 反逆のヒーロー 長山洋子 

(10位 3.5万枚 日本語詞 篠原仁志 作詞・作曲 クラーク・ダッチェラー 1988年)

こちらもカバー曲なので訳詞です。長山洋子は『ヴィーナス』以降、ダンスナンバーのカバーで安定したセールスを残していて、その多くを篠原仁志が訳詞を務めています。洋楽っぽい雰囲気を残しながら日本語にするという作業をこの曲でも手堅く仕上げているという印象です。

 

8位 あなたとOVER-HEATシタイ 伊藤さやか 

(30位 3.7万枚 作詞 Heart Box 作曲 Keith Brown 1982年)

伊藤さやかのデビュー曲をHeart Box名義で篠原仁志が作詞を担当しています。いきなり《恋するギャルなら誰でも》で始まり、当時のツッパリどもの合言葉《ヨロシク・ヨロシク》がサビ、さらに《欲求不満のイライラ》《シカトしないで》と、曲全体が軽い雰囲気。ちょっとすれた感じの軽い路線を伊藤さやかが狙っていたのでしょうか、今回のラインアップの中でも、伊藤さやかへの作詞は軽薄さが際立っています。

 

7位 春風の誘惑 小泉今日子 

(10位 14.1万枚 作詞 篠原仁志 作曲 緑一二三 1983年)

小泉今日子にとって初めてのオリコントップ10入りした4thシングルですが、次の5thからは戦略をガラっと変えてきたこともあり、やや古風な70年代歌謡曲の路線上の最後のシングルとなっています。伊藤さやかへの歌詞とはまったく対照的で、おとなしくて可憐な少女をイメージしたような歌詞でしたが、この世界は小泉今日子には結果としてあまりフィットしなかったということでしょう。次から路線を変えていくことになります。

 

6位 悲しきロンリーガール 高田みづえ 

(42位 3.8万枚 作詞 篠原仁志 作曲 鈴木キサブロー 1985年)

高田みづえの26枚のシングルのうちの25枚目のシングル。60年代から70年代前半のにおいを感じさせる曲調で、あまり売れなかったですが、好きな人は好きというタイプの作品でしょう。失くした恋をちょっと強がって振り返っているような歌詞がまたよくて、どこかノスタルジーを誘うのですよね。篠原仁志がいい仕事をしています。

 

5位 夏のシルエット スターダスト・レビュー 

(30位 1.8万枚 作詞 篠原仁志 作曲 根本要 1989年)

スタレビには『メビウスの瞳』『6月のジングル・ベル』とこの曲で詩を提供。夏の日の夕暮れ時のけだるさの中、熱い恋が始まりそうな予感に盛り上がっていく気持ちを歌った大人の恋の歌。さすが作詞家だけあって引き出しの広さを認識させられます。

 

4位 ユア・マイ・ラブ 長山洋子 

(8位 9.3万枚 日本語詞 篠原仁志 作詞Candee Hire 作曲 Gerd Rochel 1987年)

こちらもカバー曲なので訳詞ということになりますが、ダンスナンバーということで、当時のディスコを意識したものになっています。感情描写よりも言葉の響き、リズムへののりを重視したような歌詞ですが、聴いたり歌ったりしていて気持ちがよくて、この曲にのせる歌詞としてはうまくいったのではないでしょうか。

 

3位 天使と悪魔・ナンパされたい編 伊藤さやか 

(36位 9.2万枚 作詞 Heart Box 作曲 Keith Brown 1982年)

デビュー曲に続いての伊藤さやかへの作詞となった2ndシングル。前作よりもさらにポップで楽しい曲になっていて、相変わらず軽薄さを維持しながらも、よりあか抜けた歌詞になっています。《YesかNoか》《好きか嫌いか》《○か×か》とこの辺りの対照的な言葉を並べる手段は、よく歌詞で使われる手ではありますが、キャッチーで覚えやすい歌詞になっていて、作詞家らしいものに仕上がっていました。

 

2位 ダンシング・ヒーロー 荻野目洋子 

(5位 32.4万枚 日本語詞 篠原仁志 作詞・作曲 TONY BAKER, ANGELINA KYTE 1985年)

荻野目洋子がブレイクを果たしたこの曲の日本語詞をしていたのが篠原仁志でした。長山洋子のカバー曲同様、ダンスナンバーのカバーでは歌詞の意味や情感よりもとにかくノリと雰囲気第一というのは徹底されていて、この曲も原曲の良さを生かしながらも、日本人に耳なじみが良い言葉に置き換えて、ヒットに結びつけています。

 

1位 夢を信じて 徳永英明

(3位 39.7万枚 作詞 篠原仁志 作曲 徳永英明 1990年)

いい曲です。もちろんメロディーが素晴らしいのですが、それに合わせて出しゃばらない程度の歌詞がまたぐっと胸にささります。小学生でもわかるような簡単な言葉だけを使いながらも、傷ついた君に向けて勇気づけてくれる歌詞は、これもまた篠原仁志のふり幅の広さを認識させられます。徳永英明には『誓い』でも歌詞を提供しています。