80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.19

 

大瀧詠一(作詞・作曲家)

もちろん自身も歌手として活躍をしていましたが、時折他のアーティストへも曲を提供していて、そのどれもが質の高いものになっているのがすごいところです。大瀧詠一のメロディーは独特の節回しがありますが、業界の中にもファンが多かったのではないでしょうか。自身で作詞をしない場合は、松本隆に作詞をお願いしていることが多いようです。

 

大瀧詠一作詞・作曲作・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 うなずきマーチ うなずきトリオ

 (55位 3.5万枚 作詞 大瀧詠一 作曲 大瀧詠一1982年)

こんなお笑い芸人による企画ものにも携わっていたというのが驚き。所詮冗談で出したようなレコードなので、どこまで大瀧詠一に気持ちが入っていたかどうかという気もあるのですが、こういうしゃれもきくのですね。

 

9位 バチェラー・ガール 稲垣潤一  

(21位 7.1万枚 作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一1985年)

当時リゾートorシティ風BGM的ラブソング目線を邁進していた稲垣潤一ですが、その中の一曲に大瀧詠一が噛んでいたのは意外でした。雨の中に消えた恋を歌った悲しい歌ですが、初期の稲垣潤一はなぜか雨が似合っていました。

 

8位 怪盗ルビイ 小泉今日子 

(2位 13.4万枚 作詞 和田誠 作曲 大瀧詠一1988年) 

同名の映画の主題歌を兼ねた作品ということで、映画の雰囲気に合うようにという縛りはあったのでしょう、ゆったりと優雅な雰囲気で、聴けば聴くほど味わい深くなる作品です。メロディー的にはいかにも大瀧詠一といった独特のくせが出ていて、いわゆる「らしい」曲になっています。

 

7位 夢で逢えたら ラッツ&スター

 (8位 44.0万枚 作詞 大瀧詠一 作曲 大瀧詠一 1996年)

そもそもが1976年に吉田美奈子が歌った曲ですが、一番売れたのがラッツ&スター盤。11年ぶりに発表したシングルがヒットに結びついたわけですが、その後も多くの人にカバーされる定番曲になっていくわけです。それだけどの時代にも支持される、不変の良さがこの楽曲にあるのでしょう。

 

6位 熱き心に 小林旭 

(12位 37.6万枚 作詞 阿久悠 作曲 大瀧詠一 1985年)

演歌系の歌手とのコラボも自然に成立するのが大瀧詠一の凄いところ。この曲も小林旭にとって久しぶりのヒットとなり、小林旭の代表曲になりました。北国の壮大な自然を想像させる優雅なメロディーを作り出す大瀧詠一の作曲能力に感心させられます。

 

5位 さらばシベリア鉄道 太田裕美 

(70位 3.0万枚 作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一 1980年) 

オリコンチャート70位のわりにはよく知られた曲で、自らもカバーしています。シベリア鉄道ということで、ロシア民謡風のメロディーが異国情緒を誘い、松本隆の詩の世界と見事に調和。味わい深い楽曲となっています。

 

4位 冬のリヴィエラ 森進一 

(10位 26.4万枚 作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一 1982年) 

当時森進一の新曲を作ったのが大瀧詠一だということで話題になったシングルですが、森進一としてはそれ以前に吉田拓郎を歌って成功していたので、それを踏まえてのことでしょう。この曲は演歌に拒絶感のあった若い人々にも受けて大ヒット。森進一のまた新しい一面を見せることができたということでも、大瀧詠一は大きく貢献したのではないでしょうか。

 

3位 風立ちぬ 松田聖子 

(1位 51.9万枚 作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一 1981年) 

松田聖子のシングルの作曲者リストで、財津和夫と松任谷由実に挟まれるように、この1曲だけを大瀧詠一が担当しているのです。ちょうどこの曲を歌っている時期に、松田聖子がそれまでの透き通るような声から、ハスキーがかった声へと変わってしまったわけで、彼女の透き通った声を最後に聴けるシングルといえるでしょう。秋の高原の雰囲気がなんとも心地よい一曲です。

 

2位 探偵物語 薬師丸ひろ子 

(1位 84.1万枚 作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一 1983年) 

デビュー曲に続き、薬師丸ひろ子の同名主演映画のテーマソングであります。薬師丸ひろ子の透明感あふれるボーカルを見事に生かした歌詞とメロディーで、けっして派手な曲ではないのですが、聴いていて心地よさを感じさせます。

 

1位 Tシャツに口紅 ラッツ&スター 

(18位 9.8万枚 作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一 1983年)★ 

大ヒットした『め組のひと』の次の曲で、しかもこのクオリティの素晴らしい作品にしては、セールスが伸び悩んだのが不思議なくらい。当時のラッツ&スターについていたファンからすると、ちょっと求めていたものとは違ったのでしょうか。別れを迎えた男女のそれぞれの胸の内が垣間見れ、そんな人間をよそにいつもと変わらない営みを続ける犬やかもめ。その対比が見事な歌詞で、そこに大瀧詠一のメロディーがなんともいえない余韻を残してくれるのです。傑作。