80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.13

 

有川正沙子(作詞家)

あまり情報がなくて、プロフィールがよくわからない作詞家なのですよね。仕事では、なんといっても寺尾聰への作詞の提供というイメージが強くて、名盤『Reflections』の10曲中7曲を有川正沙子が作詞を担当しています。

 

有川正沙子作詞曲・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 TOMORROW 佐野量子 

(45位 1.0万枚 作詞 有川正沙子 作曲 牧野信博 1988年)

佐野量子にはこの曲と次のシングル『哀愁エクスプレス』で作詞をしています。哀しみに負けず、明日へ向かって進んでいこうといった、自分を励ますような歌ですね。

 

9位 MOONLIGHT WHISPER 島田奈美 

(15位 2.1万枚 作詞 有川正沙子 作曲 井上ヨシマサ 1988年)

島田奈美にはシングルで4作の作詞に携わっていますが、アイドルとしてはセールスが下降期にはいってからだったので、セールス的にはあまり結びついていません。いろいろなタイプの歌でなんとか打開したいといった苦しい時期だったのでしょう。この歌は幻想的で抽象的な歌詞で、大人の歌への挑戦といったところでしょうか。

 

8位 SHADOW CITY 寺尾聰 

(3位 54.2万枚 作詞 有川正沙子 作曲 寺尾聰 1980年)

♪トゥットゥットゥトゥーというハミング的な部分の方が印象に強く残っているという不思議な曲ですが、少ない言葉数の中にも、都会の雨の夜のけだるさが伝わってきて、寺尾聰との相性の良さを感じる一曲になっています。冒頭で記した『Reflections』の中の一曲。あとから発売された『ルビーの指輪』に引っ張られる形で売上を増やし、ハーフミリオンの大ヒットに。

 

7位 ウェラム・ボートクラブ レベッカ 

(ランク外 作詞 有川正沙子 作曲 木暮武彦1984年)

木暮武彦との共作詞。レベッカのデビュー曲ですが、文学的といいますか、結構堅めの熟語が歌詞に使われていて、まだレベッカの方向性が定まっていない感はあります。ブレイク以後のNOKKOが作詞をほぼ務めるようになってからのレベッカの歌詞とはちょっと違うなぁという印象ですね。

 

6位 STAR 浅香唯 

(9位 8.2万枚 作詞 有川正沙子 作詞 タケカワユキヒデ 1987年)

浅香唯にとって初めてオリコンのトップ10入りしたシングルで、以降トップアイドルへと昇り詰めていく土台になった曲といえるかもしれません。ただ楽曲的にはわりと地味ですが、夢すなわちスターの座に向かって駆けていくわという、同時の浅香唯には相応しい歌詞ともいえるでしょう。歌詞の世界としては、このあとも浅香唯の楽曲に通じるところがあるように思います。

 

5位 ハートブレイカーは踊れない 池田政典 

(18位 4.2万枚 作詞 有川正沙子 作曲 林哲司 1986年)

当時アイドル俳優兼シンガー的な路線で売り出しをかけられていた池田政典のデビューシングルの作詞を手掛けたのが有川正沙子。初期の池田政典の歌にはドライブシーンが描かれることが多かったのですが、このデビュー曲でその路線が決定づけられたのかもしれません。都会的な恋愛のワンシーンを描いたいかにも80年代チックな歌詞です。

 

4位 夏色片想い 菊池桃子 

(1位 24.7万枚 作詞 有川正沙子 作曲 林哲司 1986年)

菊池桃子の初期5曲は秋元康が、後期4曲は売野雅勇が作詞を担当し、それに挟まれた中期を康珍化が1曲と有川正沙子が2曲受け持つ感じになっています。作曲は全シングル林哲司ということですが、有川正沙子その林哲司の楽曲との相性は良かったのではないでしょうか。いい意味でぼんやりとした片想いソングです。

 

3位 出航 SASURAI 寺尾聰 

(11位 30.7万枚 作詞 有川正沙子 作曲 寺尾聰 1980年)

この曲もつられてヒット。テレビのランキング番組では3曲同時にランキング入りとして話題になりましたが、オリコンでは11位どまりだったのですね。自由気ままに流れに任せて生きる男の生きざまのようなものが表現されていて、なかなか味わいのある詩になっていると思います。有川正沙子の作詞家としての引き出しの広さを認識させられました。

 

2位 君は1000% 1986オメガトライブ 

(6位 作詞 有川正沙子 29.3万枚 作曲 和泉常寛 1986年)

杉山清貴とオメガトライブ、それぞれが二手に分かれてソロもしくは新バンドとして最初に出した曲がそれぞれヒットと稀有な例ではないでしょうか。それもともにリゾート感あふれるラブソングという土俵も同じ。そんな『君は1000%』ですが、どこかおぼつかない日本語でたどたどしく歌うカルメス・トシキの舌足らずな感じが♪君はシェンパーシェンというサビのフレーズと不思議にマッチしていましたね。

 

1位 Broken Sunset 菊池桃子 

(1位 24.7万枚 作詞 有川正沙子 作曲 林哲司 1986年)

突然別れを告げられた海沿いのドライブを描いた失恋ソングです。夕陽が照らす海、カーラジオやサイドシートといった車の中、そして浮かんでくる想い出の季節、それぞれを交錯させながら、最後の時間の静けさに胸が締めつけられるような気持ちになってきます。区代的な描写が多く、可愛いから抜け出して、ちょっと大人の雰囲気に挑戦していこうという当時の菊池桃子にもちょうどいい感じで、この曲をナンバー1にしてみました。