80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.10

 

戸沢暢美(作詞家)

80年代後半に台頭して、90年代になってさらにその活躍の場を広げた作詞家です。SMAPと嵐という二大ジャニーズ巨頭へも何曲か詩を提供している一方、芳本美代子、南野陽子、伊藤智恵理といった女性アイドル、さらには今井美樹、谷村有美、渡辺美里などの女性ポップシンガーへも作詞を行うなど、幅広いアーティストと組んでいます。残念ながらすでに亡くなられていますが、優しく温かい歌詞が多く、改めてラインアップをみてみると、支持されたわけもわかるような気がします。

 

戸沢暢美作詞曲・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 がんばれブロークン・ハート 谷村有美 

(39位 1.4万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 西脇辰弥 1989年)

失恋した自分への応援歌です。谷村有美は自分で作詞作曲を行うことが多かったのですが、時々作家の作った楽曲を歌うこともままありましたが、世界観はちゃんと谷村有美の世界になっているのですよね。この曲なんかもそう。

 

9位 僕のせいいっぱい CHA-CHA 

(3位 8.7万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 多々納好夫 1989年)

この提供をきっかけに、男性アイドルへの作詞が広がっていった感じでしょうか。この歌も自分への応援歌的な歌ととらえていいでしょう。自分を励ましたり、奮い立たせたり、なぐさめたりと、対自分という形の歌詞が得意な印象はあります。

 

8位 感謝カンゲキ雨嵐 嵐 

(2位 36.2万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 馬飼野康二 2000年)

当然ですが、嵐には嵐的な歌詞をしっかりと書いてきます。これも応援歌的な要素を含んだ歌詞になっていて、その部分では戸沢暢美らしい歌詞だとは思います。嵐に対しては、このあと『ナイスな心意気』でも作詞をおこなっています。

 

7位 雨に消えたあいつ 伊藤智恵理 

(22位 2.0万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 岸正之 1987年)

戸沢暢美は伊藤智恵理に対してはデビュー曲から3曲連続して作詞を担当していますが、3曲目となるこの曲は正統派の失恋ソングです。作曲の岸正之との相性も良く、歌唱力もあるので、楽曲の出来栄えとしては極めて良いものになっているので、もう少し売れてもよかったと思っています。

 

6位 左胸あたり ゆうゆ 

(20位 2.8万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 井上ヨシマサ 1988年)

セールスが落ちてきたころの5thシングルの作詞家として起用された戸沢暢美ですが、それまでのコミカルなゆうゆから一転して大人のイメージへと転換を図ったのがこの曲。失った恋を思い返して一人悲しみに浸っているような失恋ソングは、悲しみがじわじわと伝わる繊細な歌詞でした。

 

5位 ヴァニティ・ナイト 芳本美代子 

(5位 6.5万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 久保田利伸 1987年)

この曲から『東京Sickness』『Heroes』と3曲連続して戸沢暢美が作詞を担当。サヨナラを決めたあなたとの最後のドライブで、悲しみを隠し通そうと心に決めた女性の気持ちと決意を歌った、これまた失恋ソングではありますが、どこか強がる気持ちが見え隠れして、余計に切なさを際立たせます。曲はなんと久保田利伸が担当。

 

4位 KANSHAして SMAP 

(1位 57.8万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 林田健司 1995年)

戸沢暢美が最初にSMAPに詩を提供したシングルがこの歌です。当代の男女の恋愛を風刺っぽくどこか客観的な視点で歌った楽曲です。当時のSMAPは大人へと変身中の過渡期という頃で、売れ線を狙うというよりも、自己を叱咤するような等身大のミディアムテンポの歌が多かったように思いますが、この曲もその一連にある一曲。

 

3位 たいせつ SMAP 

(4位 41.2万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 小森田実 1998年)

『KANSHAして』『胸さわぎを頼むよ』に続いて3曲目となるSMAPとのタッグ。大ヒット曲『夜空ノムコウ』の次の曲にしては力が抜けた感じの作品で、売上的にも落ち着いてきた時期。穏やかな恋愛を歌った優しい曲で、戸沢暢美らしい世界ではないかと思っています。

 

2位 Boogie-Woogie Lonesome High-Heel 今井美樹 

(14位 5.9万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 上田知華 1989年)

この2曲前の『静かにきたソリチュード』に続き2作目となる今井美樹への作詞曲となります。ゆったりとしたメロディーに合わせた、どちらかというと抽象的な歌詞で、大人の恋愛ソングという雰囲気ですね。どこか優雅で余裕のある女性がイメージされます。

 

1位 話しかけたかった 南野陽子 

(1位 23.4万枚 作詞 戸沢暢美 作曲 岸正之 1987年)

それまではどちらかというと悲しげな曲ばかりを歌っていた南野陽子にとっては、待望のアイドルらしく可愛い楽曲。2作連続の1位となり、いよいよトップアイドルとして充実の時期を迎えていくことになります。好きだった彼を偶然街で見かけたけど、そんなときに限って自分の髪がはねている状態。そしてその彼の隣には彼女らしきポニーテールが…。南野陽子の可愛らしさを引き出した戸沢暢美の歌詞がとっても魅力的で、彼女の作詞の曲の中では一番です。